World Wide Web Consortium (W3C)が2016年の テクノロジー&エンジニアリング・エミー賞を受賞

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2016年1月8日にアメリカ・ラスベガスで開催されているコンシューマ・エレクトロニクス・ショー(CES)会期中の同賞授賞式に出席

 

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2016年1月5日アメリカ東部時間 − W3C (World Wide Web Consortium)はウェブの根幹をなす技術の標準化をグローバルに展開する標準化組織です。この度W3Cは、エミー賞授与式でテクノロジー&エンジニアリング・エミー賞を受賞することとなりました。本授賞式は世界の約500の放送機関が加盟しアメリカに本部を置く国際テレビ芸術科学アカデミー (NATAS - The National Academy of Television Arts & Sciences)が主催するものです。

 

Picture of the Emmy award statue

 

同賞は1948年にアメリカで設立された放送業界における技術開発及びイノベーションを評価するもので、放送技術の発展に著しい貢献をした企業や団体に対して授与されます。第67回目にW3Cが受賞する正式名は「Standardization and Pioneering Development of Non-Live Broadband Captioning」であり、視覚情報や聴覚情報を充実するW3C TTML (Timed Text Mark-up Language)技術を用い、映像コンテンツに字幕やキャプションをオーサリングすることでよりアクセシブルにする技術が評価されました。同カテゴリーでは、TTMLを採用しているホームボックスオフィス社、ネットフリックス社、テレストリーム社、米国映画テレビ技術者協会(SMTPE-Society of Motion Picture and Television Engineers)の同時受賞も発表されています。

 

Philippe Le Hegaret, W3C and TTML WG Representatives accept the Emmy

 

W3C CEO ジェフリー・ジャフェはこのように述べています。「W3Cが2016年テクノロジー&エンジニアリング・エミー賞を受賞することを光栄に思います。この受賞は、文化や言語の違い、デバイスやネットワーク環境を超えたウェブの可能性を全ての人に届けるというW3Cの使命が全面的に支持されていることを表しています。本賞を決断されたNATASに感謝の意を表し、W3C TTML WGとW3C Web Accessibility Initiativeの際立つ功績を称賛します。」

 

1994年にティム・バーナーズ・リーがウェブを発明して以来、W3Cはすべての人があらゆるデバイスから、オープンで相互運用性を持ってアクセスできるウェブを提唱してきました。世界中の映像制作現場ではW3CのTTML技術を使用して字幕やキャプションを表示し、何百万人もの人々が既に日常のようにビデオコンテンツにアクセスしています。キャプションは特に視覚・聴覚障害を持つ人々に対しコンテンツ理解を深め、翻訳字幕は全世界で映像コンテンツを楽しむことを可能にしています。

「ウェブは、その誕生からほどない時よりほぼ20年間、Web アクセシビリティ・イニシアティブの活動と共に視聴覚障害者への尽力を続けてきました。世界中の何百万者ものウェブユーザに対し、エミー賞がTTMLをキャプションやビデオコンテンツの字幕の標準であると公認されたことを誇りに思います。」とW3C ウェブ・アクセシビリティ・イニシアティブのドメイン長であるジュディ・ブレワーは語ります。

TTML (Timed Text Markup Language)について

現在、従来のテレビ放送とウェブは融合が進んでおり、多くのテレビのコンテンツがウェブ上で展開され、ウェブはテレビ上で繰り広げられています。TTMLはテレビとウェブをつなぐ技術であり、その仕様は特にテレビのプラットフォームに注力されています。Timed Textとは、オンライン映像の配信サービスや次世代放送の字幕・キャプションなどに広く採用されており、アクセシブルなメディアを実現するためのグローバル標準となっている映像・音声コンテンツに文字情報を時間軸に沿って付加するためのマークアップ言語です。

 

TTMLはTimed Text情報のオーサリングやトランスコーディング、或いは変換をするためにテレビ業界で幅広く使用されており、テレビのコンテンツをウェブやインターネットで再利用する際のキャプションや字幕、そしてその他のメタデータでも活用されています。また複数のブラウザや数多くの字幕オーサリングツールでもTTMLをサポートしています。

W3C インタラクション・ドメイン長でありW3C Timed Text WGのスタッフコンタクトでもあるフィリップ・レ・エガレは、「TTMLはキャプショニングを網羅するフルセットです。ウェブ技術とXMLに基づいたメタデータを追加することで、ほとんどの場合においてクローズドキャプションファイルのセマンティクスをサポートします。」と説明します。

 

TTML1.0技術がW3C勧告として正式発表されたのは2010年11月でした。翌年には、W3Cのウェブアクセシビリティ部門とテレビ業界の各代表者が早々に協働しています。TTML1.0は、マイクロソフト社のショーン・ヘイズ氏、当時サムスン電子に在籍、現在はスカイナブ社のグレン・アダムズ氏、SMPTEの招聘専門家であるマイク・ドラン氏、当時WGBH National Center for Accessible Mediaのジェフ・フリード氏、当時リアルネットワーク社に在籍、現在はアサイニオ社のエリック・ホッジ氏、当時英国放送協会勤務のデイビッド・カービー氏(故人)、W3Cのティエリー・ミシェル、そしてアップル社のデイビッド・シンガー氏らのご貢献に基づいてその仕様をW3C勧告としました。

TTMLに追加された新しい仕様

TTML 1.0を勧告したのちも、W3C Timed Text WGではBBCのナイジェル・メジット氏とアップル社のデイビッド・シンガー氏が共同議長として活動を率い、世界中全てのスクリプトや、テキストのみ、或いは画像のみのプロファイルのためのスクリプトやテキストレイアウトのサポートなど、オーサリングやビデオキャプションの配信機能追加や性能の向上の議論を重ねています。

Internet Media Subtitles and Captions 1.0 (IMSC1)におけるTTMLプロファイルは現在勧告候補まで進んでいます。EBU-TT-Dを含み、一般的に業界で使用されているTTMLのプロファイルと共にTTMLの実装とオーサリングを簡素化することを目指しています。IMSC1はテキストへ表示要素の内側に設ける余白であるパディングの拡張、画像字幕、強制字幕への対応も付与しています。特に強制字幕への対応は、聴覚に障害を持つ人が翻訳のみの字幕や翻訳とキャプションを同時に選択できるようにするユースケースを実現させます。これはムービーラボ社のピエール-アンソニー・レミュクス氏がエディターとして構成をまとⰀ?????????ています。

 

TTMLの後継であるTTML2初版ワーキングドラフトは2015年2月に公開されました。それはIMSC1とTTML1の機能に東アジア言語に対応した3D映像を実現し、HTMLとCSSのマッピングを追加しています。TTML2のエディターはスカイナブ社のグレン・アダムズ氏です。

TTMLは世界中に

TTMLは徐々に世界中での使用が浸透しています。欧州放送連合(EBU-The European Broadcasting Union)はTTMLをベースにしたEBU-TTを、日本では一般社団法人 電波産業界 (ARIB-Association of Radio Industries and Businesses)がARIM-TTMLを採用しています。SMPTEはTTMLをSMPTE-TT (ST-2052-1)のベースとして使用し、IMSC1をIMT (Interoperable Master Format、ST2067-2)に適用することを検討しています。

2010年10月に、米国連邦通信委員会(FCC)はCAVV 21st Century Communications and Video Accessibility Act (CAVV-21世紀の通信と映像アクセシビリティ法)においてSMPTE-TTをオンラインキャプション上での交換とデリバリーのセーフハーバー条項に指定しました。W3Cウェブ・アクセシビリティ・イニシアティブ・ドメイン長のジュディ・ブレワーとW3Cインタラクション・ドメイン長のフィリップ・レ・エガレは、オンライン及びウェブ対応コンテンツのVideo Programming Accessibility Advisory Committee (VPAAC)に任命されその制定に寄与しました。

CESでお待ちしています

W3Cの技術・各分野の専門家が、CESの会期中にウェストゲートホテルのスイートルーム310号室でW3Cの技術や最新状況にご関心のある方々とお話をしています。今回の注力分野は、車、デジタルマーケティング、デジタルパブリッシング、エンターテイメント、ウェブペイメント、ウェブセキュリティ、そしてWeb of Thingsです。CES期間中に訪問をご希望される方はteam-contact@w3.orgへ、1月9日以降はW3C グローバル・ビジネス・デベロップメント・リーダーのアラン・バード abird@w3.orgへご連絡下さい。

W3C (ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム)について

W3C(ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム)は、ウェブ標準化の開発を目的とし、会員組織、フルタイムスタッフ、および公的団体が連携する国際的なコンソーシアムです。W3Cはウェブの長期的な成長の確保を目的としたウェブ標準およびガイドラインの作成を通じ使命に尽力し、現在、400を超える組織が本コンソーシアムの会員として参加しています。

 

W3Cは、米国MIT Computer Science and Artificial Intelligence Laboratory(MIT CSAIL:マサチューセッツ工科大学計算機科学人工知能研究所)、フランスEuropean Research Consortium for Informatics and Mathematics(ERCIM: 欧州情報処理数学研究コンソーシアム)、北京航空航天大学 (Beihang University)および日本の慶應義塾大学により共同運営されており、各国のW3Cオフィス各国にW3Cオフィスを設置しています。詳細については、http://www.w3.org/をご覧下さい。

 

Media Contact

Karen Myers, W3C <w3t-pr@w3.org>
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