HTML 標準の更新に着手
HTML の今後を方向付ける Web ブラウザ事業者や開発者ら
http://www.w3.org/ — 2007年3月7日 — World Wide Web Consortium (W3C) は本日、市場を席巻する卓越した Web コンテンツ技術の開発を目的としたオープンな議論の場の重要性を認識し、Web ブラウザ事業者、アプリケーション開発者、コンテンツ制作者の皆様に対し、新たな HTML 標準の策定に向けて設置される W3C の HTML 作業部会 (WG) への参加を広く呼び掛けます。W3C では、設計や開発に携わる W3C 内外の関係者らから寄せられた多数のご意見に基づき、W3C 会員組織か否かを問わず、同様かつ広範に標準化活動にご参加いただけるよう、公開作業部会を設置いたします。
HTML の発明者であり、W3C の技術統括責任者を務める Tim Berners-Lee は次のように説明しています。「HTML は、如何なる対象にもリンクを張ることができる、使用許諾不要の簡潔な構造化記述言語として世に送り出されました。何よりも、この簡潔さとオープン性こそが、その後の想像を遥かに超える広範かつ継続的な普及へとつながりました。今こそ、HTML 標準を再検証し、Web に携わる現在の関係者らからの要望に応えるべく、W3C として取るべき方策を把握するとともに、Web ブラウザ開発組織からの参加協力を受けて、誰もが把握可能、かつ、オープンな方法で、実際にそれらを効果的に遂行すべき時に来ています。」
HTML 進展の経緯
HTML 4 の標準化作業を完了した後、W3C では1998年に開催された W3C 公開研究会 (W3C ワークショップ) の成果報告を受け、XML 形式の利点を応用すべく、HTML を XML に基づく形式である XHTML へと変換することを決定しました。2000年始めには早くも、最初の完全な XHTML 勧告が策定、公開されています。しかし、当時は一部独自形式を含む HTML で記述された旧来からの Web コンテンツ遺産が数多く存在していたため、当時の Web ブラウザ事業者らは XHTML の採用には消極的で、その普及は遅々として進みませんでした。これはまた、旧来からのパソコン上での閲覧を前提とした Web コンテンツに対し、コンテンツ制作者らが XHTML を積極的に採用するに至らなかった要因でもありました。このような状況を踏まえ、Web の開発や設計に携わる関係者らは W3C に対し、HTML に対する見解を改め、HTML 4 標準を基準に、後方互換性を確保するとともに、実際の利用実態に即して新たな機能を追加するよう要請しました。W3C では今後も将来にわたり、Web に関わる全ての皆様に対し、堅牢な検証事例集や検証サービスの提供を通じ、相互運用性の確保に務めてまいります。
W3C では、W3C 会員組織からの強固な支持に基づき、より多くの技術スタッフや機材を割り当てた上で、HTML に対する取組みが再開できることを嬉しく思います。また今回 W3C では、今後の HTML 成功の鍵を握る、Web ブラウザ事業者、アプリケーション設計者、コンテンツ開発者らの積極的な参加連携を可能にする特別な HTML 作業部会 設置趣意書を用意しています。
XHTML に対する評価
一方、これ以外の業界や市場においては XHTML の価値は十分に認識されており、携帯機器向けや業務アプリケーション、サーバ側での運用、あるいはブログ用ソフトウェアといった、増加の一途をたどる Web アプリケーションなどにおいて、XHTML の広範な普及が進んでいます。実際、モバイル Web 利用事例 作業部会では、より少ない限られた記憶領域でも動作するソフトウェア上でも利用可能であることから、モバイル Web 利用事例における基盤技術として XHTML Basic を採用しています。XML に準拠したコンテンツ市場は今後も成長の一途をたどり、重要度も増すと考えられるため、W3C では、新たに策定される HTML に対しても、旧来からの HTML 構文だけでなく、XML 形式での構文も定義することにしています。
XHTML 2.0 の設計目標の1つは、HTML において提供されている同様の機能の代わりに、XForms、XML Base、XML Events を始めとする、再利用可能な XML 標準仕様群を活用し、可能な限り高い汎用性を確保することです。このような設計方針を採用したことにより、XHTML 2.0 は HTML とは異なる特質を持つに至っています。W3C では、XHTML 2 作業部会の設置に際し、既に取組みを進めている活動については継続する一方で、市場における価値や独立性を明確化すべく、名称変更も含めた検討を行います。
W3C では、新たな HTML 及び XHTML 2 作業部会の設置にあわせ、Hypertext 調整部会 (CG) の更新と、Forms 作業部会の設置もそれぞれ行います。Forms 作業部会では、様々なシステム上での広範な採用が進む XForms の構成設計に対する取組みを継続します。
World Wide Web Consortium [W3C] について
World Wide Web Consortium (W3C) は、会員組織、専任スタッフ、そして一般の皆様が一丸となって Web 標準の策定に取組む国際的なコンソーシアムです。W3C は、Web の長期的な発展を保証すべく設計された Web 標準や指針の策定を通じ、その使命の遂行に努めます。現在までに 400 を超える組織がコンソーシアムの会員となっています。W3C は、日本の慶應義塾大学、フランスに本部を置く欧州情報処理数学研究コンソーシアム (ERCIM)、及びアメリカ合衆国マサチューセッツ工科大学計算機科学人工知能研究所 (MIT CSAIL) の各ホスト機関により共同運営されています。加えて各国地域における普及推進拠点となる W3C 事務局を世界各地に設置しています。詳しくは W3C の Web サイト http://www.w3.org/ をご覧下さい。
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