特許方針の承認について

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ロイヤリティフリーに基づく Web 標準の促進を目指す方針について W3C 会員及び W3C 技術統括責任者による合意を確立

 

http://www.w3.org/ -- 2003年5月21日 -- World Wide Web Consortium (W3C) は本日、W3C 会員による広範な賛同と、W3C 特許方針ワーキンググループ内での合意、及び本件に関心を持つ一般の関係者からの支持に基づき、W3C 特許方針の承認について発表いたします。本特許方針は Web 基盤において鍵となる要素技術に対し、抑止特許の可能性を抑えるといった特定の問題の解決を目的としています。

W3C 技術統括責任者である Tim Berners-Lee は次のように説明しています。「Web の誕生後、最初の10年間に Web の構築に携わった W3C 会員は、特許料の請求されない、ユビキタスに実装可能な標準策定に貢献すれば、彼ら、そして世界全体が最も恩恵を得るだろう、という経営判断を下しました。本特許方針の採用によって、W3C の会員は広範な採用が最大限に見込める Web 向けの最善の技術標準の策定作業に継続的に専念できるようになります。W3C は今や、 現在の特許環境下でロイヤリティフリーに基づく Web 標準を成功裏に策定する実践的な方法に対する判断基準を定めました。」また Tim Berners-Lee による見解全文も Web 上に公開されています。

Web における次の10年に向け、ロイヤリティフリーに基づく Web 標準の支持に対し、模範を示した W3C 会員

W3C 会員による圧倒的な支持と、W3C 特許方針ワーキンググループ内での合意、及び本件に関心を持つ一般の関係者からの支持に基づき、W3C 特許方針は W3C 技術統括責任者によって承認されました。本方針により、Web の誕生以来、その革新の推進力の一端を担ってきた基本的な知的所有権に基づくビジネスモデルに対しても対応できるようになります。企業や研究者、あるいは独立した開発者らは、世界規模の情報基盤の構築も可能で相互運用可能な技術標準の開発のために、設計に対する見識や貴重な工学技術資源の提供、あるいは実際の策定作業への尽力を通じて貢献することができます。ロイヤリティフリーに基づく標準策定を奨励する本方針の承認を受け、 W3C は本方針に基づき、安定した実用的な特許方針、明確なライセンスフレームワーク、一貫した公開義務、妥当な紛争解決手続きを提供します。本方針により、W3C 本来の活動である Web 向けの最善の技術標準の策定作業に専念します。

Tim Berners-Lee は次のようにも述べています。「本特許方針は、技術標準に関する基本特許方針の策定にあたり、これまでで最も徹底的な議論が行われたことを象徴しています。戦略上必然的に意見対立も生じ得る分野において、精力的で思慮深い作業を成し遂げた特許方針ワーキンググループ参加者に感謝しています。本方針の確立に際し、時間、専門知識、忍耐、そして協調スピリットを惜しみなく提供して頂いた全ての人に心より感謝とお祝いの気持ちを伝えたいと思います。」

本特許方針ワーキンググループには、AOL Time Warner、Apple、AT&T、Avaya、Daisy Consortium、Hewlett-Packard Company、IBM、ILOG.、Intel、Lexmark、Microsoft Corporation、MITRE、Motorola、Nokia、Nortel Networks、The Open Group、Oracle Corporation、Reuters, Ltd.、Sun Microsystems、Xerox Corporation の各組織が参加しています。また Free Software Foundation、Software in the Public Interest、及び、Open Source Initiative からの専門家も参加しています。

W3C 活動のオープン性を維持しつつ、特許保持の存在も認める特許方針

W3C 特許方針の第一目標は、ロイヤリティフリーに基づき、W3C 勧告の実装を可能にすることです。本方針はまた、W3C 勧告の実装に必要不可欠となり得る特許の存在に気付いた場合には、該当する W3C 会員に対し、その特許の開示を要求します。

簡潔にまとめると、本特許方針は次のようになります。

  • W3C 勧告仕様の策定に参加する全ての人は基本特許、すなわち、相互運用性を阻害する特許をロイヤリティフリー (RF) に基づきライセンスすることに同意しなければなりません。
  • 特定の条件下において、ワーキンググループ参加者はロイヤリティフリー合意に基づき、明確に特定された特許を除外できます。このような特許の除外は、ワーキンググループにおける協同作業を阻害し得る不意の特許請求の可能性を抑えるため、最初の公開草案の発行後に要求されます。
  • W3C 会員、及び、技術草案に目を通し、かつ、必要不可欠となり得る具体的な特許を知り得ている人には、特許開示が要求されます。
  • W3C 特許方針と矛盾しない条件では解決できない特許請求については、例外取り扱い手続きに則った解決が求められます。

W3C 特許ライセンス要件と矛盾する技術の取り扱い方法について

W3C が提案した Web 標準仕様に、本特許方針で定義された条件では利用できない技術が含まれてしまう可能性もあり得ます。 このような事態は、特許保持者が特許料を請求した場合や、他の9項の特許方針ライセンス要件の何れかに矛盾する場合に起こり得ます。このような場合、W3C では問題調査を目的とした特許諮問委員会 (PAG) が召集されます。各 PAG は、該当するワーキンググループに参加している W3C 会員の代表者らによって構成されます。PAG は、特許の法的分析を勧めたり、当該ワーキンググループに対し、特許に抵触しない技術設計を試みることや、特許に抵触する機能の削除を試みることを促したり、あるいは場合によっては、当該分野における全ての仕様策定活動の中止を提案する可能性もあります。

もし W3C ライセンス要件に矛盾しない結果が得られる全ての方法が検討され尽くしてしまったにも関わらず解決方法が見出せない場合、どのような方法を採用するにせよ、 PAG はその技術を含めるか否かについての判断を W3C 会員全体に委ねることになります。 そのような勧告では明確なライセンス条項が一般公開され、なおかつ、一般、W3C 会員、及び W3C 技術統括責任者によるレビューを条件とすることが求められます。

W3C 特許方針ワーキンググループは、予測不可能な事態に対するある程度の柔軟性を確保しておきたいという要望に対し、非ロイヤリティフリーライセンス条項についてはほとんど考慮しないことに結論付けました。それでもなお、本方針は Web におけるロイヤリティフリー標準仕様に対する基本合意を堅持しています。 W3C Technology and Society ドメインリーダで、特許方針ワーキンググループの議長でもある Daniel J. Weitzner は次のように説明しています。「我々は、このような例外の取り扱い方法について入念に検討し、コメントの受付と承認を必要とする段階的な手続きを提案しています。結果として、そのような例外を採択するには、ほぼ満場一致の支持が要求されます。このような例外の取り扱いは非常に稀なケースとして利用されるべきであり、他の全ての代替案が検討されてもなお結論が見出せない場合に限り、唯一利用可能となる手続きです。」

W3C 特許ライセンス要件の適用範囲と、特許保持者に対する影響について

本方針は、特許保持者とそれ以外の全ての人双方を含む、Web の構築や利用に関わる全ての関係者の間で、ロイヤリティフリーに基づく Web 標準仕様の実装を可能にすることを前提としています。しかし、本方針は保持している特許一式全ての放棄を要求しているわけではありません。本方針は特定の W3C 標準仕様の実装に必要不可欠な技術に対し、W3C のワーキンググループ参加者が特許を保持している場合のみを対象としています。

W3C 特許ライセンス要件と、オープンソース及びフリーソフトウェア条項との一貫性について

W3C ロイヤリティフリーライセンス要件は、一般的に認められているオープンソースライセンス条項と一貫性が取れています。このロイヤリティフリー方針の明確化により、W3C 勧告の全ての利用者及び実装者に対し、W3C 勧告そのものがロイヤリティフリーに基づき入手可能であることが保証されます。

World Wide Web Consortium [W3C] について

W3C は、Web の発展と相互運用性を確保するための共通のプロトコルを開発することにより、Web の可能性を最大限に引き出すべく設立されました。W3C は、アメリカ合衆国マサチューセッツ工科大学計算機科学研究所 (MIT/LCS)、フランスに本部を置く欧州情報処理数学研究コンソーシアム (ERCIM)、及び日本の慶應義塾大学がホスト機関として共同運営にあたっている国際産業コンソーシアムです。 コンソーシアムにより提供されるサービスには、開発者及び利用者のための World Wide Web に関する豊富な情報、新技術を応用した様々なプロトタイプやサンプルアプリケーションの開発などが挙げられます。現在までに、400を超える組織がコンソーシアムの会員となっています。詳しくは http://www.w3.org/ をご参照下さい。

 

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