W3C – Encrypted Media Extensions (EME)を勧告

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EMEは、相互運用性、優れたプライバシー、セキュリティ、アクセシビリティ、およびウェブ上の映画を見る際のユーザ体験を可能にします

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https://www.w3.org/ — 2017年9月18日 – ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム (W3C) は、ウェブのメディア やエンターテイメントをファーストクラスのプラットフォームとするため に、EME をW3C勧告・標準とします。EMEは、すべての主要なプラットフォーム でシームレスに動作する、ウェブブラウザで保護 (暗号化) されたコンテ ンツをプラグインせずに再生可能にするアプリケーション・プログラミン グ・インターフェース (API) です。W3C Media Source Extensions (MSE) はストリーミングビデオ用のAPIを提供し、EMEは暗号化されたコンテンツ を処理するためのAPIを提供します。MSEとEMEの組み合わせは、ウェブデベ ロッパがウェブ上で商用品質のビデオを配信するためのプラグイン使用を 不必要とする、最も一般的な方法です。

 

illustration of movies on the Web showing a ticket

 

W3C プロジェクト・リードのPhilippe Le Hegaretは「EMEは既に、Google、Microsoft、Netflix、Mozilla、Apple、 CabeLabs、Adobe社など主要組織の間でW3Cの幅広い共同作業の結果として ウェブブラウザを通して広く採用されています。」と語ります。

ウェブ上での映画やテレビ番組の視聴は、煩雑で不安定な設定からオー プンウェブプラットフォームのセキュリティに移行しました。EME APIをオー プンウェブと統合することにより、ウェブブラウザは保護されたコンテン ツを再生できるソフトウェアとのやりとりができます。

EMEのユーザーメリット

EMEは、相互運用性、優れたプライバシー、セキュリティ、 アクセシビリティ、およびウェブ上の映画を見る際のユーザ体験を可能に します。

Hegaretは、「EMEの仕様は、ユーザのセキュリティ とプライバシーを重視して開発されました。ウェブ上で暗号化されたビデ オを視聴する以前の方式と比べ、EMEはすべてのやりとりがブラウザ内で完 結するという利点を持ちます。EMEは、暗号化されたビデオとの対話の責任 をプラグインからブラウザに移行します。これは本当のユーザエージェン トとして機能しています。」と続けます。

ブラウザのコントロール内でセキュリティのやりとりを 保持するのは、EMEの重要な特徴です。EMEの勧告は、ネットワーク攻撃、 不正なトラッキング、デバイス側のユーザ情報の侵害などのセキュリティ およびプライバシー侵害の脅威を軽減することを重要視しています。EME開 発中の幅広いレビューのおかげで、すべてのセキュリティとプライバシー 案件は現在、個別のセクションに記載されています。またEME仕様では、実 装時にウェブのセキュリティとプライバシーを強化するために、すべきこ との明確なロードマップを記述しています。

歴史的にもプラグインはウェブで機能が利用できな い時に使用されてきました。オープンウェブプラットフォームの実装は、 これらのプラグインを一つ一つ削除してきました。いくつかのサイトは既 にプラグインからEMEに移行しており、この標準はサイトの移行にプラスの 効果をもたらしています。ウェブは、ビデオを再生するためのプラグイン のインストール方法が過去の方法であるもの、として改善されました。す べてのインタラクションをブラウザに移動することで、プラグインのセキュ リティの脆弱性が保護されます。同様に、ウェブデベロッパは、もはやプ ログラミング環境を外部のプラグインで必要とする独自のツールを使用す る必要がありません。ウェブデベロッパは彼らのウェブアプリケーション を開発し、ウェブに実装します。

EMEは、ユーザが保護されたコンテンツとのやりとり をより詳細にコントロールできますが、Digital Rights Management (DRM)の作成や強制をしません。これは特定のContent Decryption Module (CDM) の実装を矯正するものではなく、Clear Key共通鍵システムがサポー トされているだけで、ブラウザには共通の基本レベルの機能が提供されて います。EMEの利点は、オープンソースとフリーソフトウェアのブラウザで 実装できることです。またすべてのW3C勧告と同様、EMEの実装は任意です。 オープンウェブプラットフォームの拡張機能としてEMEはHTML準拠を要せず、 ブラウザは実装するか否かの選択肢を持ちます。こういった場合では、ブ ラウザは非暗号化されたコンテンツをサポートする完全な機能を備えてい ます。

EMEは、アクセシビリティ情報の送信や制御を妨げ ないレベルの操作により、既存のメカニズムとは対照的に、暗号化された オンラインビデオのアクセシビリティを向上させます。これは保護された コンテンツを再生する機能を分離し、オープンウェブプラットフォームに 統合することで実現されました。W3C標準の開発では、アクセシビリティに 対する潜在的な障壁とアクセシビリティサポートに対する新たな機会を特 定するために、アクセシビリティのレビューが含まれます。W3Cの分析とテ ストには、キャプションへのアクセス、トランスクリプト(代替コンテン ツ)やビデオのオーディオ情報になんの障壁も示しませんでした。EMEに準 拠したアプリケーションは、アクセシビリティ情報が明確に伝わるように なっています。暗号化されている場合は、プライマリビデオファイルとと もに復号化されます。含まれているすべての機能がHTML仕様、あるいはそ の拡張機能の一部によって提供され、オープンウェブプラットフォームの 現在および将来のアクセシビリティ拡張機能を使用することができます (詳しく はEME and Accessibilityを参照)。

ブラウザ間のEMEの実質的な相互運用性は、本仕様開発の 一環として実証されています。EMEは、多くのブラウザ間でビデオコンテン ツのシームレスな再生を保証するだけでなく、最新のウェブスタック全体 の優れた最先端モデルから利益を得ています。

さらに詳しい技術的仕様は、  Director's disposition of comments and decision on EME と  EME Backgrounder () をご覧ください。

EME W3C勧告化への討論

EMEをW3C勧告とするため、6年に渡るマルチステークホルダーの取り組 みとウェブコミュニティでの幅広い技術的作業、そしてオープンな議論の 元、W3CディレクタのTim Berners=Lee卿が決定を下しました。

Berners=Leeはこう述べます。「暗号化されたコンテン ツを見るならば、アプリケーションをダウンロードするより、セキュリティ とプライバシーが提供されるブラウザ内が安全です。ユニバーサルなウェ ブは、オーディオ、ビデオ、テキスト、インタラクティブ、地図、グラ フィックスなど全種類のコンテンツを持たねばなりません。何点かは無料 であったり、何点かは有償であったりします。コンテンツを製作するため に膨大なコストを要する制作者が、保護なしで制作物を展開する準備が整っ てないないことはもっともでしょう。非暗号化を使用する場合のEMEの利点 は、典型的なDRMとは異なり、ユーザはアタックから保護されているという ことです。」

EMEをW3C勧告とすることに反対意見もありますが、 W3Cはウェブ上でビデオを見たい何億人ものユーザ – クリエイターからの 著作権保護要件がある – が、安全でなおかつウェブフレンドリーな方法で 視聴することができると判断しました。7月中旬に発せられた抗議に対し、 W3Cの 抗議に対 するプロセスを通して9月中旬に締め切られたW3C会員の投票では、 W3C会員の108組織がディレクターが決定したEMEのW3C勧告の存続を支持、 57組織が反対、20組織が白票投じました。W3C CEO の ブログを参照下さい。

ストリーミングサービスの利用は、世界中で飛躍的に増加しており、 現在何百万者ものユーザが、加入者ベースのサービスを展開している Netflixや暗号化されたビデオコンテンツの視聴をすることの恩恵を受け ています。

W3C (ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム)について

W3Cは、地球上あらゆる場所で誰もがオープンにアクセシブルに、そして相 互運用ができるウェブの技術標準とガイドラインを策定するため、ウェブの可 能性を最大限に引き出すことを使命に掲げており、HTML5やCSSなど、全てのウェ ブサイトを構築する基盤技術を標準化しています。 キャプションと字幕付きオ ンラインビデオをよりアクセシブルにするW3Cの技術は、2016年のテクノロジー &エンジニアリングエミー賞を受賞しました。

400を超える 会員と各産業の数千もの技術者が、W3Cのビジョンである「One Web」 を創り上げています。W3Cは、米 国MIT Computer Science and Artificial Intelligence Laboratory(MIT CSAIL:マサチューセッツ 工科大学計算機科学人工知能研究所)、フラン スEuropean Research Consortium for Informatics and Mathematics(ERCIM: 欧州情報処理数学研究コンソー シアム)、日本の慶應義塾大 学、及び中国の北京航空航天大 学 (Beihang University)により共同運営されており、各国にW3Cオフィスを設置してい ます。詳細についてはこち らをご覧ください。

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Media Contact

Amy van der Hiel, W3C Media Relations Officer <w3t-pr@w3.org>
+1.617.253.5628 (US, Eastern Time)

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