アクセシブルかつリッチなインターネットアプリケーションの実現に向けたロードマップを公開

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アクセシブルかつ動的な Web サイトの構築を可能にする Accessible Rich Internet Application (WAI-ARIA)

 

http://www.w3.org/ — 2006年9月26日 — World Wide Web Consortium (W3C) の Web Accessibility Initiative (WAI) は本日、Web サイト開発者が障害者にとっても利用しやすい動的な Web コンテンツを容易に製作できるよう、Accessible Rich Internet Application (WAI-ARIA) 仕様群を公開いたしました。公開草案初版となる本仕様群は、WAI-ARIA RoadmapWAI-ARIA RolesWAI-ARIA States and Properties の3つの仕様書から構成されます。

IBM 技術理事 (Distinguished Engineer) を務め、WAI-ARIA Roadmap の執筆者でもある Rich Schwerdtfeger 氏は次のように説明しています。「より多くの情報、より軽快なアプリケーション、より豊かな利用体験など、利用者は Web に対してより多くを求めています。しかしその一方で、多くの人々が利用する可能性を考慮せず、一部の人しか利用できないような技術がますます急増し続けています。本日公開される新仕様群には、障害者による Web 利用を支援するツールへの対応方法が開発者向けにまとめられており、非常に重要なものと位置づけられます。ARIA は、より適切かつアクセシブルな実装に関する事例や改良方法を通じ、全ての Web 利用者が、よりリッチで動的な Web コンテンツを享受するための第一歩となります。」

多くの人々が利用したくても利用できない動的な Web コンテンツの現状

画面上の文字を読み上げるスクリーンリーダ、発話内容を文字に変換する音声認識ソフトウェア、画面上での文字入力を可能にするソフトウェアキーボードなどの支援技術は、障害者に対してアクセシブルな Web を実現する際にも有効です。しかし実際に利用するためには、それら支援技術に基づくツール側で、文書内のそれぞれの箇所における現在の状態をアクセシブルな方法で利用者に対して通知できるよう、文書内の特定箇所がそれぞれ持つ意味を把握できなければなりません。具体的には、あるオンラインフォーム項目を確実に利用できるようにするためには、ツール側では、その項目が選択されているのか、無効化されているのか、そもそも選択対象になっているか、あるいは展開されたり、隠されたりしていないかなど、その項目の状態も把握できなければなりません。

コンピュータに直接インストールされているソフトウェアと何ら遜色ない機能を備えた Web アプリケーションを提供する Web サイトも増加傾向にあります。これらのリッチなインターネットアプリケーションでは、スクリプト記述が多用されており、開発者らはしばしば、AJAXDHTML、JavaScript、SVG といった既存の技術を混在させた、その場限りの実装を行ってしまっています。これらのアプリケーションでは、先のような支援技術を利用する際に必要とされる意味が必ずしも提供されるとは限りません。障害者らはそれ故、この新たな情報技術革新という蚊帳の外に置き去りにされる危機に瀕しています。

アクセシブルで動的な Web コンテンツのための枠組みを提供する WAI-ARIA 仕様群

Roadmap for Accessible Rich Internet Applications (WAI-ARIA Roadmap) では、リッチなインターネットアプリケーションと障害者らが利用する支援技術との相互運用性を確保するための包括的な手法が詳述されています。この手法は、XHTML Role Attribute Module など、W3C において既に策定が完了ないし策定段階にある技術に基づいています。本仕様書はまた、アクセシブルかつリッチなインターネットアプリケーションの実現になお求められる技術が、どの程度現実と乖離しているかを把握するためのギャップ分析報告書としても活用できます。Roles for Accessible Rich Internet Applications (WAI-ARIA Roles) 及び States and Properties Module for Accessible Rich Internet Applications (WAI-ARIA States) の2つの仕様書では、これらのギャップを埋める方法が解説されています。

WAI-ARIA Roles 及び WAI-ARIA States の編集者である UB Access の Lisa Seeman 氏は次のように説明しています。「ARIA は Web 開発者にとって絶好の機会となります。コンテンツ開発者に対し、より広範な利用者における Web 体験の改善に必要となる、動的な Web コンテンツをよりアクセシブルにする技術や処理系が提供されることになります。」

策定開始段階からのレビューやご意見に期待を寄せる WAI PF ワーキンググループ

WAI-ARIA Roadmap は、Adobe Systems、America Online, Inc.IBM、Opera Software、Oracle Corporation、英国王立盲人援護協会 (RNIB)、SAP AG を始めとする業界大手、研究組織、障害者団体などで構成される W3C の Protocols and Formats ワーキンググループ (PFWG) において策定されています。本ワーキンググループの議長は Al Gilman 氏が務めています。

PFWG は、全ての人に Web アクセシビリティを、の実現に向け、W3CWeb Accessibility Initiative (WAI) における技術基盤を提供すべく活動しています。 PFWG は現在、早期実装を念頭に、WAI-ARIA 仕様群の改良に取り組んでいます。W3C では、本日公開された公開草案初版、及び、今後公開される更新版に対し、Web 開発者コミュニティの皆様からのレビューやご意見を public-pfwg-comments@w3.org メーリングリストにてお待ちしております。

World Wide Web Consortium [W3C] について

World Wide Web Consortium (W3C) は、会員組織、専任スタッフ、そして一般の皆様が一丸となって Web 標準の策定に取組む国際的なコンソーシアムです。W3C は、Web の長期的な発展を保証すべく設計された Web 標準や指針の策定を通じ、その使命の遂行に努めます。現在までに 400 を超える組織がコンソーシアムの会員となっています。W3C は、日本の慶應義塾大学、フランスに本部を置く欧州情報処理数学研究コンソーシアム (ERCIM)、及びアメリカ合衆国マサチューセッツ工科大学計算機科学人工知能研究所 (MIT CSAIL) の各ホスト機関により共同運営されています。加えて各国地域における普及推進拠点となる W3C オフィスを世界各地に設置しています。詳しくは W3C の Web サイト http://www.w3.org/ をご参照下さい。

Web Accessibility Initiative [WAI] について

W3CWeb Accessibility Initiative (WAI) は、世界各国の組織と協調し、アクセシビリティを保証する Web 中核技術の実現、Web コンテンツ、ユーザエージェント、オーサリングツールに対する指針の策定、アクセシビリティ向上のための評価、修正ツールの開発支援、Web アクセシビリティに関する普及、教育、啓蒙活動の推進、将来的に Web のアクセシビリティに影響を及ぼし得る研究開発との調整などを通じ、Web アクセシビリティの向上に努めています。WAI は、米国 教育省、欧州委員会 IST 計画、() スペイン国立視覚障害者協会 (Fundación ONCE)、IBM、Microsoft Corporation、SAP AG、Verizon Foundation、Wells Fargo から一部資金援助を受けて活動しています。

 

お問合せ先 (日本、アジア)
平川 泰之, <chibao@w3.org>, +81-466-49-1170
お問合せ先 (ヨーロッパ、アフリカ、中東)
Marie-Claire Forgue, <mcf@w3.org>, +33 4 92 38 75 94 または +33 6 76 86 33 41
お問合せ先 (アメリカ、オーストラリア、その他)
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