XML 1.0 の公開について (W3C 勧告)

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Web 向けの新しいデータ記述言語を開発

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World Wide Web Consortium (W3C) は 10日、 XML 1.0 の仕様を W3C 勧告として公開いたしました。

XML 1.0 は、 Web で用いるデータの構造をユーザが自由に定義して使用することを可能にする、 XML (eXtensible Markup Language; 拡張可能なマーク付け言語) というデータ記述言語の仕様です。

XML 1.0 の主な特長は以下の通りです。

  1. ユーザが自由にデータ構造を定義することができる

    HTML (HyperText Markup Language) では不可能であった、 タグの追加・拡張をすることができます。

  2. SGML と互換性がある

    ISO 標準である SGML (Standard Generalized Markup Language [ISO8879]; 標準一般化マーク付け言語) を基に開発され、SGML と互換性があります。

  3. SGML と比較して処理系の実装が簡単

    SGML に存在していた、複雑で実装が困難なオプションを廃することで、 処理系の実装は SGML と比較して容易になっています。

  4. 国際化を配慮

    国際文字集合規格である ISO 10646 を採用することで、 国際化に対する配慮を行なっています。

XML 1.0 は W3C XML Activity の一環として、 W3C XML ワーキンググループにおいて開発されました。 同グループには、業界の主要企業・団体、および構造化文書・電子出版分野の専門家らが参加しております。 参加メンバーとしては、アドビ システムズ社、アーバーテキスト、 DataChannel Inc.、インソ (株)、 ヒューレット・パッカード、Isogen International Corp.、 マイクロソフト・コーポレーション、 イリノイ大学 The National Center for Supercomputing Applications (NCSA)、 ネットスケープ コミュニケーションズ、 SoftQuad Inc.、米国 Sun Microsystems, Inc.、 富士ゼロックスらが挙げられます。

W3C XML ワーキンググループで開発された仕様は、 W3C の会員組織により勧告内容の検討がなされ、 W3C 勧告プロセスを経て、 W3C 勧告として業界での採用が支持されたものです。

XML に関する情報は、 <URL:http://www.w3.org/XML/> を、 XML 1.0 の仕様については、 <URL:http://www.w3.org/TR/REC-xml>をご覧ください。


World Wide Web Consortium (W3C) について

World Wide Web Consortium (W3C) は、 マサチューセッツ工科大学計算機科学研究所 (MIT/LCS)、 フランス国立情報処理自動化研究所 (INRIA)、 慶應義塾大学 SFC 研究所 (Keio-SFC) の日米欧三機関がホスト機関として共同運営に当たっている World Wide Web (WWW) 技術の標準化と推進を目的とする国際学術研究開発組織です。 W3C はインターネットの情報提供手段として不可欠な WWW 技術を推進する非営利組織として、 産業界に支えられつつも、常にベンダーに対し中立的立場に立ち、 国際的に共通な技術のデファクト標準化推進やプロトタイプの実装・提供に努めています。 現在、240を超える組織が W3C のメンバーとして研究開発活動に参加・協力し、 研究者およびユーザに向けての WWW に関する多様な情報の提供をはじめ、 共通のプロトコルに関する標準的コードの開発促進、 それら新技術を応用したさまざまなプロトタイプやサンプルアプリケーションの実社会への適用・開発などに取り組んでいます。 W3C は、 より高いインターオペラビリティを保ちながら WWW システムを地球規模 (World Wide) に発展させていくことを使命としています。

World Wide Web Consortium に関するより詳しい情報は、 <URL:http://www.w3.org/> をご覧ください。

W3C ホスト


参考: W3C 勧告プロセス

W3C のワーキンググループで研究・開発された仕様は、 W3C 会員により正式に承認されなければなりません。 仕様はワーキングドラフト・勧告案というレビュー段階を経て W3C 勧告となります。

レビューを重ねて仕様として安定してきたワーキングドラフトは、 W3C Director の検討・承認を受けて勧告案となります。 勧告案に対してもレビューが重ねられた後、 W3C 勧告とするかどうかの投票が行なわれます。 投票は W3C 会員企業からの各一名の代表により構成される W3C Advisory Committee により、 勧告案を W3C 勧告とすることに対して、1) 賛成 2) 条件付き賛成 3) 指摘する欠陥が修正されなければ反対 4) 反対 のいずれかの票を投じることで行なわれます。

会員による検討と投票の期間 (約6週間) 中、 ワーキンググループでは、細かな技術的問題があればそれを解決し、 その結果を W3C Director に報告します。 この後、W3C Director は当該案に対し、

  • W3C 勧告として承認する (細部の修正はあり得ます)
  • ワーキングドラフトに戻す
  • W3C の活動項目から外す

のいずれかの決定を行ないます。

 

Contact America -- Eric Snow <esnow@webergroup.com>
+1 617 661-7900
Contact Europe -- Ned Mitchell <ned@ala.com>
+33 1 43 22 79 56
Andrew Lloyd <allo@ala.com>
+44 127 367 5100
Contact Asia -- 松原 祐三子 (Yumiko Matsubara) <matsubara@w3.org>
+81.466.47.5111 ext. 3257

はじめに

1996年初めには、 Web 上で広く使われている HTML の様々な問題点が明らかになってきました。 もっとはっきり言うと、 Web の利用者が HTML の将来の方向性として求めるものが異なってきたということです。 これらのニーズに応えつつ、 かつ、HTML の成功の基となった、シンプルさや、表現力とハイパーテキスト、 そして GUI との統合性を保ちつづける方法を見出すことは困難に思われました。

このような状況下で、 1996年6月に W3C では現在の W3C XML Activity の基となるプロジェクトを開始し、 今日の W3C 勧告へと至りました。 XML の開発は出版業界の専門家や Web パイオニアなどからなるユニークな構成のワーキンググループによって行なわれました。

主な特長

インターネットでの使用に最適

XML は、インターネットでの使用を前提として開発されており、 例えば複数の文書コンポーネントを配信する際の制約を取り除くよう注意深く設計されています。 また、XML を共有している外部リソース指定は、 Web で標準的に用いられている URI により行なうことができます。

SGML の経験を踏まえたものである

SGML (標準一般化マーク付け言語) が ISO 標準になり 10年がたち、 公共・民間機関における大規模な出版で有効に活用できることが証明されました。 XML は、SGML に 比べてかなりシンプルでありながら、 SGML と完全に互換性があるため、 既に使われている SGML のツールとその操作法を活用することができます。

処理が簡単

XML を処理するためのプログラムは簡単に作成することができます。 仕様のドラフトが最初に公開されてから数日で、 開発者のサポートなしにプログラムを書くユーザが現れ、 XML を実装したアプリケーションは現在二桁に上っており、 その数はなお急増しています。

国際化への配慮

XML は国際化に関するこれまでの経験に基づいた配慮が払われ、かつ、 一般化しすぎることで互換性を損なうという危険を回避しています。 これは、国際化された文字集合である Unicode/ISO 10646 を採用することで実現されました。

汎用性

XML は、 オーサリングやインデクシングなどのアプリケーションをサポートするための多くの機能を備えています。 XML ワーキンググループでは、 当初文書主体のフォーマットを開発していると考えていましたが、 登場し始めた頃の XML アプリケーションは、当初の予想を超えて、 構造化データの交換、特に一般化されたメタデータの分野に集中しています。 このことからも、XML の一般性は明らかです。

自動処理をサポートする設計

インターネット上で用いられている他のデータ形式とは違い、 XML はエラーや例外処理に関して厳密な規定を設けています。 これにより、 データは適正形式 (well-formed) に通常なっており、 エラー発生時に、よく知られた方法で復旧処理が行なえるものとすることで、 アプリケーション開発者は、 比較的軽量で簡単なデータ操作モジュールを使用して、 XML 対応ソフトウェアを作成することができます。

ワーキンググループのプロセス

XML は、W3C のプロセスに従い、 Special Interest Group (SIG) から技術面の意見や情報の提供を受けながら、 より小人数で構成されるグループ (XML ワーキンググループ) で開発され、 監修を経てその仕様が作られました。 W3C スタッフはこの過程を円滑に進めるために指導的な役割を果たしました。

XML は、いくつかの設計目標を掲げ、 一連のドラフト仕様を作成することで開発が進められ、 XML 1.0 勧告として完成しました。 開発にあたっての重要な技術的討論や決定は、 実際に顔を合わせた場で行なわれることは非常にまれで、 ほとんど電話会議・ 電子メール・Web ページ作成を通じて行なわれました。 これにより世界中に分散しているワーキンググループの構成員が、 XML の開発に貢献する機会を得ることができ、かつ、 開発のスピードを飛躍的に加速することができました。

XML 1.0 の誕生は、W3C の存在理由である、 合意に基づいた標準構築プロセスの成功を示すものです。

XML 開発の経緯

1994年

10月:
World Wide Web Consortium (W3C) 創立

1995年

3月:
SGML on the Web" Activity 開始

1996年

6月:
SGML Activity が公式に始動
8月:
SGML Editorial Review Board (ERB) および SGML ワーキンググループ (WG) の設立が正式に認可
9月:
サンフランシスコで行なわれた "Seybold" にて、 SGML Activity の報告
SGML ERB 始動
11月:
ボストンにて行なわれた "SGML '96" にて、 最初の XML ワーキングドラフトが発表

1997年

4月:
WWW6 (6th International World Wide Web Conference) にて最初の XML-link ワーキングドラフト発表および XML-lang ワーキングドラフト更新
6月:
XML-lang ワーキングドラフト更新
7月:
XML-lang を XML に、XML-link を XLL に改称
XLL ワーキングドラフト更新
SGML ERBSGML ワーキンググループを解散し、 新たな W3C プロセスに基づき、XML ワーキンググループと XML SIG に改組
8月:
XML ワーキングドラフト更新
11月:
XML ワーキングドラフト更新
12月:
XML 1.0 勧告案を "SGML/XML '97 会議" にて公開

1998年

2月:
XML 1.0 を W3C 勧告として公開

XML の詳細については <URL:http://www.w3.org/XML/> をご覧ください。

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