より多くの人、そしてより多彩な方法による Web アクセスを可能とする、W3Cのマルチモーダル標準

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EMMAにより、キーボード、マウス、音声、対話、接触、身振り等による入出力情報の相互的利用が容易に

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http://www.w3.org/ — 2009年2月10日 — World Wide Web Consortium (W3C) は本日、全ての人に、そしてあらゆる機器からの Web アクセスを可能とするべく、一般によく用いられているキーボードやマウスを越えた、(各種インタフェースモダリティによる入出力情報の) 相互利用を可能とするための新しい標準仕様を W3C勧告として公開いたしました。 "EMMA, Extensible MultiModal Annotation" 仕様 (以下、EMMA) を用いることによりリッチ・ウェブ・アプリケーションの開発が促進され、より多様な入力方法 (手書き入力、自然言語、身振り手振り等) および出力方法 (合成音声等) に、より少ない費用で適合させることが可能となります。

「Eyes-Busy (何かを注視する必要があり、目を離すことができない状況)」、「Hands-Free (手で送受信機を保持する必要がない)」、そしてさらに

近年、より多くの人々が、より多様な状況において Web を利用するようになるにしたがって、マルチモーダル対話処理の機会が増加しています。 初期の携帯機器においてもタッチペンや音声による入力が可能でしたが、タッチスクリーンや、動作や方向を検知する機能を持つ機器が当たり前のように利用される市場も増えてきています。 EMMA を利用することにより、Web アプリケーション開発者は、アプリケーションの「ロジック層」と「対話処理層」を分離することができ、(開発ずみの) アプリケーションを新しい利用形態へと適合させることが容易となります。

また、入力モダリティの中には、他のモダリティよりも「ノイズ」の影響を受けやすいものもあるため (音声言語や手書き入力のばらつき、もしくは単に背景雑音の影響等)、EMMA には、入力情報に含まれる信頼度のばらつきをアプリケーション開発者が管理するのを助ける機能も含まれています。 EMMA を利用することにより、アプリケーション開発者は、アプリケーション利用者から入力された情報に含まれる曖昧性を排除し、(入力受付よりも) 後段の処理において、競合する複数の仮説から (最適な解を) 選択し入力エラーを克服することが可能となります。 また、EMMA の利用により、(Web アプリケーション利用における) 対話的やりとりに関する補足的な情報 (やりとりの行われた日の日付等) を活用することも可能となります。

携帯機器からの Web アクセス、およびアクセシビリティのために役立つマルチモーダル

EMMA 標準は、特に、携帯機器産業にとって重要なものとなります。 EMMA 標準およびマルチモーダル設計思想にしたがうことにより、アプリケーションは、携帯機器の利用環境により適合させやすくなります。 例えば、ほとんどの携帯電話は音声とテキスト入力の双方を受け付けることができますが、EMMA を用いることにより、(状況に応じて) テキスト情報、音声、もしくはその両方を適宜利用することのできるようなアプリケーションをより容易に作成することが可能になります。

また、マルチモーダル対応となるように設計されたアプリケーションは、障害を持つ利用者にとっても有益と考えられます。 マルチモーダルな入力システムは、視覚、聴覚、身体、認知、神経等に障害を持つ人々が Web にアクセスし、対話的に Web を操作するために利用可能な選択肢を提供します。 キーボードを操作することができない人でも、音声認識を当てにすることができますし、タッチ入力によるコマンドを利用する人で、確実な根拠がない場合でも、EMMA の持つ不確実性を解釈するためのメカニズムを当てにすることができます。

EMMA は、 マルチモーダル・インタラクション作業部会 により策定されました。 本作業部会には、 Aspect Communications、 AT&T、 Cisco Systems、 Department of Information and Communication Technology - University of Trento、 Deutsche Telekom AG、 France Telecom、 Genesys Telecommunications Laboratories、 German Research Center for Artificial Intelligence (DFKI) Gmbh、 Hewlett Packard Company、 Institut National de Recherche en Informatique et en Automatique (INRIA)、 International Webmasters Association / HTML Writers Guild (IWA-HWG)、 Korea Association of Information & Telecommunication (KAIT)、 Korea Institute of Science & Technology (KIST)、 京都工芸繊維大学、 Loquendo, S.p.A.、 Microsoft Corporation、 Nuance Communications, Inc.、 Openstream, Inc.、 Siemens AG、 Université catholique de Louvain、 V-Enable, Inc.、 Voxeo Corporation および Waterloo Maple Inc. の各 W3C 会員組織からの参加者、および招聘専門家らが参加しています。

World Wide Web Consortium [W3C] について

World Wide Web Consortium (W3C) は、会員組織、専任スタッフ、そして一般の皆様が一丸となって Web 標準の策定に取組む国際的なコンソーシアムです。W3C は、Web の長期的な発展を保証すべく設計された Web 標準や指針の策定を通じ、その使命の遂行に努めます。現在までに 400 を超える組織がコンソーシアムの会員となっています。W3C は、日本の慶應義塾大学、フランスに本部を置く欧州情報処理数学研究コンソーシアム (ERCIM)、及び米国 マサチューセッツ工科大学計算機科学人工知能研究所 (MIT CSAIL) の各運営組織により共同運営されています。加えて各国地域における普及推進拠点となる W3C 事務局を世界各地に設置しています。詳しくは W3C の Web サイト http://www.w3.org/ をご覧下さい。

本件お問合せ先:
日本、アジア (慶應義塾大学 SFC 研究所) — 岩佐 佳菜子, <keio-contact@w3.org>, +81-466-49-1170
ヨーロッパ、アフリカ、中東 (ERCIM) — Marie-Claire Forgue, <mcf@w3.org>, +33 492 38 75 94 または +33 676 86 33 41
アメリカ、オーストラリア、その他 (MIT CSAIL) — Ian Jacobs, <ij@w3.org>, +1.718.260.9447

 

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