CSS 生誕 10 周年

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Web デザインを一新したカスケーディングスタイルシート

 

http://www.w3.org/ — 2006年12月19日 — World Wide Web Consortium (W3C) は本年、魅力的かつ経済的で柔軟な Web サイトの構築に Web デザイナーらに広く用いられている Cascading Style Sheets (CSS) の生誕 10 周年をお祝いいたします。

W3C の Style 活動責任者を務め、1996年12月17日に勧告、公開された CSS level 1 仕様初版の共著者で、CSS の発明者の一人でもある Bert Bos は次のように述べています。「CSS を用いることによって、Web サイトを容易かつ安価に構築できるだけでなく、魅力的なデザインを訴求できることを Web デザイナーらも認めています。」

W3C ではこの度、CSS10 と銘打ち、CSS 生誕 10 周年を記念して、Web 開発者らによる CSS デザインをオンライン展示する CSS10 美術館を Web 上に開館いたします。CSS 初版の原共著者である Håkon Lie 氏と Bert Bos を選考委員に迎え、独創性、実用性、芸術性を考慮し、展示作品の選考を行います。展示作品は毎月追加され、2007年12月までご応募いただけます。<css10@w3.org> 宛まで奮ってご応募下さい。皆様からのご応募を心よりお待ちしております。

W3C ではまた、この記念すべき CSS10 にあわせ、W3C CSS 検証サービスを刷新いたしました。利用者、開発者、翻訳者の皆様からのご支援、ご協力に対し、心より感謝いたします。

文書構造と表現形式を分離し、Web デザイナーだけでなく利用者にも恩恵をもたらした CSS

CSS が普及した要因のひとつに Web デザイナー向けに様々な恩恵を提供できたことが挙げられます。その最たるものが豊富な機能群です。Web デザイナーらは、簡潔な宣言形式で、位置、余白や整列方向、階層化、色、テキスト装飾、付番方法など、様々な指定を行うことができます。さらには、記述言語ごとに異なる書字方向、書体形式の他、様々な組版規定を踏まえ、CSS では、増加の一途をたどる多種多様な組版規定に対応するとともに、多言語文書を表示できるよう、多様な進化を遂げています。

次に挙げられる普及要因は再利用性です。CSS では複数の Web ページ間でスタイルシートを共有できるため、CSS を書き換えるだけで Web サイト全体の更新も容易に行えます。また、スタイルシート自体を Web ブラウザ側でキャッシュできるため、処理効率の向上も期待できます。

CSS はまた、デザイン上の妥協を許すことなく、様々な方法でアクセシビリティの向上にも努めています。文書構造と表現形式を分離することにより、障害を持つ利用者でも障害者支援ツールを用いて任意に情報を取得できます。CSS を用いてデザインすることで、利用者はより多くの Web ページを利用できるようになり、デザイナーと利用者双方の要望をバランス良く実現しています。スタイルシートはまた、画面読み上げソフトウェアといった障害者支援技術を利用している障害者らにとって利用の妨げとなる、HTML における table 要素に依存した組版の減少にも貢献しています。

CSS の普及に伴い、クロスメディア出版に対する敷居が下がった点も見逃せません。同一文書に対し、適切なスタイルシートを適用するだけで、大型カラーディスプレイから携帯電話やプリンタに至るまで、多様な機器上で表示、印刷できます。スタイルシート設計者側の意図に基づき、ソフトウェア側で最も適切なスタイルシートを自動的に選択できるだけでなく、利用可能なスタイルシート群から個々の要件に適うスタイルシートを利用者側で選択することもできます。

CSS は一般的に HTML 文書の組版に用いられることが多いですが、W3CXSL に加え、補完的に XML 文書に対しても利用できます。

マルチメディア、マルチモーダルの実現に向けた CSS3

CSS には複数のレベルとプロファイルが存在します。デスクトップ向け Web ブラウザは通常、CSS level 1、2、3 の全てのレベルを実装します。携帯電話、PDA、テレビ、プリンタ、音声合成システムなど、その他の機器については、それぞれの基盤環境毎に適切なプロファイルを実装することになります。

CSS level 1 では、ほとんどの CSS プロファイルに共通する、書体、余白、色、その他のスタイル機能に対する属性値が定義されています。Microsoft の Internet Explorer 3 に CSS が実装された際に用意された初の CSS 美術館に、初期の CSS 利用例を見出すことができます。W3C ではこの CSS10 にあわせ、CSS の知られざる歴史についても編纂を進めています。

CSS level 2 revision 1 (CSS 2.1) では、CSS level 1 の全ての機能に加え、絶対位置指定、自動付番、ページ分割、右横書きテキスト、他の機能が利用できます。

現在、鋭意策定中である CSS level 3 (CSS3) では、CSS をより容易に実装、利用できるだけでなく、より強力な機能も提供されます。 CSS3 では、CSS level 2 の全ての機能に加え、新規セレクタ、ハイパーテキストの機能強化、縁と背景処理の強化、縦書き、XForms への対応、音声処理、マルチメディア機器上での表示の他、様々な機能強化が盛り込まれます。技術的な詳細につきましては、CSS 作業部会設置趣意書をご参照下さい。

World Wide Web Consortium [W3C] について

World Wide Web Consortium (W3C) は、会員組織、専任スタッフ、そして一般の皆様が一丸となって Web 標準の策定に取組む国際的なコンソーシアムです。W3C は、Web の長期的な発展を保証すべく設計された Web 標準や指針の策定を通じ、その使命の遂行に努めます。現在までに 400 を超える組織がコンソーシアムの会員となっています。W3C は、日本の慶應義塾大学、フランスに本部を置く欧州情報処理数学研究コンソーシアム (ERCIM)、及びアメリカ合衆国マサチューセッツ工科大学計算機科学人工知能研究所 (MIT CSAIL) の各ホスト機関により共同運営されています。加えて各国地域における普及推進拠点となる W3C オフィスを世界各地に設置しています。詳しくは W3C の Web サイト http://www.w3.org/ をご参照下さい。

 

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