Web Ontology Language 勧告候補の公開について

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先進のオントロジ標準として Semantic Web の基盤を固める OWL

Frequently Asked Questions

 

http://www.w3.org/ -- 2003年8月19日 -- World Wide Web Consortium (W3C) は本日、Web Ontology Language (OWL) を勧告候補として公開いたしました。勧告候補は明示的な実装呼び掛けであり、W3C 内の他の全てのワーキンググループによるレビューを経て、本仕様が安定し、実装に適していることを示しています。

OWL は、アプリケーション間でのより高度なデータ統合と相互運用を実現する、Web に基づく構造的なオントロジを定義する言語です。生命情報学や医療分野、企業法人や政府機関などは、これらの標準を早い段階から採用しています。OWL により、Web ポータルサイト運営、コンテンツ収集管理、コンテンツ内容に基づく検索、知的エージェント、Web サービス、ユビキタスコンピューティング、といった情報記述に基づく様々なアプリケーションが可能となります。

W3C 技術統括責任者の Tim Berners-Lee は次のように述べています。「OWL は、Web 上のデータに対するコンピュータによる自動処理とアプリケーションを超えた再利用を可能にする重要な一歩です。OWL は Web 上での大規模なオントロジの実現に向けたオープンな標準として既に利用されているのです。」

OWL は、OWL OverviewOWL Semantics and Abstract SyntaxOWL Use Cases and RequirementsOWL Test CasesOWL GuideOWL Reference の6つの仕様書から構成されます。

OWL のより詳しい情報については FAQ をご覧下さい。

Web 上で利用可能なオントロジを実現する OWL

OWL は外でもなく、Web オントロジ言語です。以前から科学技術計算や企業固有の電子商取引システムといった特定のユーザコミュニティ向けのオントロジやツールの開発に利用されていた初期の言語は、一般の Web アーキテクチャ、特に Semantic Web との互換性は考慮されていませんでした。

OWL は次に挙げる機能をオントロジに追加すべく、RDF を用いた関連付けと、URIs を用いた名前付けとを利用することで、この問題を解決しました。

  • 多数のシステムを跨ぐ分散可能性
  • Web の要求に応えるスケーラビリティ
  • アクセシビリティや国際化を実現する Web 標準との互換性
  • オープン性と拡張可能性

OWL を用いることで、情報記述を必要とするコミュニティ間でのより高度なデータ統合と相互運用を実現する、Web に基づく構造的なオントロジが定義できます。

OWLRDF Model and Schema の上に構築され、非重複性といったクラス間の関係性、唯一といった要素数、等価性、プロパティの型の追加、対称性といったプロパティの特性、列挙クラスなど、クラスやプロパティを記述するための語彙を追加しています。

OWL複数の実装とデモ が既に公開され、一般からも利用可能です。

W3C にて策定中の OWL 仕様書

現在、W3C の Web Ontology ワーキンググループでは、6つの OWL 仕様書の策定を進めています。各仕様書は、OWL 言語の習得、利用、実装、理解をそれぞれ目的としています。これらの仕様書には、OWL 策定の根拠となる利用例と要件の提示、OWL の各機能とその利用方法を簡潔に解説した概要書、数多くの利用例を用いて OWL の機能を一通り解説した包括的な手引書OWL のあらゆる機能の詳細をまとめた参考書OWL の実装が言語仕様に一致しているかを検証する100を超える試験データを提供する試験例試験データ集OWL のセマンティクスと OWL から RDF へのマッピングの詳細についての言及が含まれています。OWL 仕様書に対する勧告候補期間は、ワーキンググループにおいて本草案に対するコメントや新たな実装を評価する間、少なくとも4週間は確保されます。

Semantic Web アーキテクチャにおいて XMLRDF の上に階層化されるオントロジを実現する OWL

Semantic Web については、あたかも現在私達が利用している Web を置き換える技術であるかのように書かれていることも多いのですが、実際には、既に Web 上に存在するデータや文書に機械判読可能な説明を付与し、少しずつ更新していくことによって、Semantic Web は実現されます。付与された説明と、その説明同士を組み合わせたり、比較したり、対比したりする方法とを用いることで、 Web ページの見た目は一切変更せずに、アプリケーションやツール、検索エンジンやエージェントの構築が可能となります。

W3CSemantic Web アクティビティは、XML アクティビティといった W3C 内の他のアクティビティの成果に基づいており、Semantic Web の発展を支える XML に基づく標準技術の開発を目的としています。

基盤となる XML は、Web 上の文書とデータの双方の構造化を実現する語彙を定義する一連のルールを規定します。XML が明快な構文ルールを提供し、XML Schemas が XML 語彙の組み合わせ手段を提供します。XML は強力かつ柔軟な表記構文を構造化文書にもたらしますが、文書内容に対し、意味的な制約を課すことはありません。

Resource Description Framework (RDF) は標準的で簡潔な記述手段を提供します。XML により構文が提供され、簡潔な情報記述方法を提供する明快な一連のルールという形で、RDF によりセマンティクスが提供されます。そして RDF Schema により、これらの情報記述を単一の語彙に落とし込む手段が提供されます。これらに加え、個別の対象や分野特有の語彙を開発する手段が必要となります。これこそがオントロジの役割です。

オントロジは知識空間を記述、表現する際に用いられる用語を定義します。これらは医療、工作機械製造、不動産、自動車修理、財務管理といった、対象ないし分野特有の情報を共有する必要がある関係者、データベース、アプリケーションによって用いられます。オントロジを用いることで、それらの分野における基本概念を機械処理可能な状態で定義するとともに、それら概念間の関係も定義することができます。つまり、個別の分野の知識だけでなく、分野を跨ぐ知識も符号化できます。これにより、それら知識を再利用可能にします。

産業界や学界のリーダーらによって策定が進められる OWL

W3C の Web Ontology ワーキンググループは、堅牢なオントロジ言語システムの構築に必要な奥行きのある研究や製品実装実績を通じ、産業界、学界に様々な専門知識を提供しています。本ワーキンググループは、Agfa-Gevaert N. V.、Daimler Chrysler Research and Technology、DARPA、Defense Information Systems Agency (DISA)、EDS、富士通、Forschungszentrum Informatik (FZI)、Hewlett Packard Company、Ibrow、IBMINRIA、Ivis Group、Lucent、メリーランド大学、Mondeca、Motorola、National Institute of Standards and Technology (NIST)、Network Inference、Nokia、Philips、サウサンプトン大学、スタンフォード大学、Sun Microsystems、German Research Center for Artificial Intelligence (DFKI) Gmbh からの招聘専門家と協力した Unicorn Solutions、情報処理相互運用技術協会 (INTAP)、西フロリダ大学からの各代表者によって構成されています。

Web 上でオントロジ表現を実現する言語の開発を行った数多くの研究グループの成果が OWL に結集されました。OWL は2つの主要な研究成果である、DARPA Agent Markup Language Ontology notations (DAML-ONT) として知られる言語草案と、欧州委員会の支援の下、欧州の研究者らによって開発された Ontology Interface Layer (OIL) に端を発しています。その後、研究者らにより Agent Markup Languages に関する合衆国・欧州連合合同委員会が特別に組織され、DAMLOIL を統合した言語が開発されました。本日公開された仕様書群には、W3C とともに策定作業を進める産業界からの参加者らも加わった研究者らによる国際的な協調作業が反映されています。

World Wide Web Consortium [W3C] について

W3C は、Web の発展と相互運用性を確保するための共通のプロトコルを開発することにより、Web の可能性を最大限に引き出すべく設立されました。W3C は、アメリカ合衆国マサチューセッツ工科大学計算機科学研究所 (MIT/LCS)、フランスに本部を置く欧州情報処理数学研究コンソーシアム (ERCIM)、及び日本の慶應義塾大学がホスト機関として共同運営にあたっている国際産業コンソーシアムです。コンソーシアムにより提供されるサービスには、開発者及び利用者のための World Wide Web に関する豊富な情報、新技術を応用した様々なプロトタイプやサンプルアプリケーションの開発などが挙げられます。現在までに、400近い組織がコンソーシアムの会員となっています。詳しくは http://www.w3.org/ をご参照下さい。

 

お問い合わせ先 (アメリカ、オーストラリア) --
Janet Daly, <janet@w3.org>, +1.617.253.5884 または +1.617.253.2613
お問い合わせ先 (ヨーロッパ) --
Marie-Claire Forgue, <mcf@w3.org>, +33.492.38.75.94
お問い合わせ先 (アジア) --
竹内 佐衣子, <saeko@w3.org>, +81.466.49.1170

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