発表内容

1. W3C紹介
2. Visual WebからMultimodal Webへ
3. Semantic Web技術応用の可能性
4. W3Cに期待されるものは何か

我々はどこから来たのか 我々は何者か
 我々はどこへ行くのか

(ボストン美術館藏)

W3C紹介
 - 5分でわかるWorld Wide Web Consortium

• Web考案者 Tim Berners-Lee により創設された，Web技術標準化のための国際的産業コンソーシアム


 

• Webの相互運用性確保のために，各種標準仕様および指針を策定
  • Web標準仕様策定
  • 正しいWebの普及・啓蒙
  • Webの発展と将来創造

Web技術国際標準化の重要性

• Open = 特許に制限されない
• Global = 世界中の誰にも使いやすい
• De facto = 机上の理論でなく，実装ベースの技術

W3Cホスト

W3Cを共同運営する，3つの研究機関

- アメリカ: マサチューセッツ工科大学(MIT)

- フランス: 欧州情報処理数学研究コンソーシアム(ERCIM)

- 日本: 慶應義塾大学

日本もWeb標準の策定/普及に貢献してます!

W3C/慶應ホスト: 慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス (大学院棟 4階 τ45号室)

• お気楽にご訪問ください．お待ちしております
• ご連絡先: keio-contact@w3.org

Visual Web: 今までのWebは主にGUIベース

HTML5

- 10年振りにメジャー・バージョンアップする背景:

ウェブの役割の拡大:

動画等を含む，よりリッチなアプリケーションのためのプラットフォーム

ウェブ利用環境の多様化:

PC用のみならず，モバイルデバイスでの活用

オープンソース化:

低価格(もしくは無料で)利用可能な共通プラットフォーム

HTML5の位置づけ

- Webベースアプリケーションのためのプラットフォーム:

• 単なるテキストやグラフィック描画のためのフォーマットを超越
• リッチWebアプリケーションのためのAPIと機能を提供

- マルチメディア対応:

• ビデオやオーディオ再生に必要な処理を組み込み
• 具体的なデータフォーマット (Ogg Theora, H.264等) は要検討

HTML5新機能の例

- Canvas:

• スクリプトにより2Dグラフィックを描き込むことができる枠
• canvas自体は描画されたグラフィック情報を保持しないが，SVGのインライン記述に対応

- Web Storage (永続的ストレージ):

• Storage型: ユーザ設定情報など，文字列テーブル
• ObjectStore型: B-Treeデータ構造によるIndexed Database API

HTML5新機能の例 (つづき)

- Web Socket (短い文字列データに適する伝送プロトコル):

• リアルタイムメッセージングアプリに適す
• HTTPプロトコル接続から，Webサーバとのネゴシエーション

- Web Workers (スレッド):

• マルチスレッドで，スクリプトをバックグラウンド実行
• JavaScriptでWorkerオブジェクト作成しスレッド生成

SVG: より美しい画像情報のために

SVG地図応用の例

- 電子国土データ

• 国土地理院により，2万5千分の1地形図50面分のSVG地図が公開

SVG地図応用の例 (つづき)

- 携帯電話上の地図サービス

• SVGビューワが携帯電話上に標準実装
• GPSと連携して位置特定

Visual Webの課題

- HTML5

• 拡張性: 名前空間以外の方法論が必要
• より多様なインタフェース: GUIベースを越えて，音声，ジェスチャ等もっと便利に
• 印刷応用等も踏まえた，より柔軟かつきめ細かい表示形式指定
• 携帯デバイスや家電機器等での利用を想定した，機能の絞り込み

- SVG

• 類似の機能がHTML5にもある: HTML5との統合
• 使い勝手がよく安定したフリーの実装が少ない: 標準準拠実装の充実

Visual WebからMultimodal Webへ

- マルチモーダルWeb

• GUIに加え音声やジェスチャ等，様々な入出力方法 (モーダル) を利用

例: AT&Tのspeak4it (デモ)

Mashupによりリモートサーバ上の音声認識や地図検索を利用

マルチモーダル・マッシュアップ

Multimodal Web実現のための技術

1. MMIアーキテクチャ
   • Web上で利用する様々な入出力デバイスを，透過的かつ統一的に扱うためのフレームワーク
     • 各クライアント機器上で入出力機能を制御する「モダリティ・コンポーネント」
     • プリケーション全体の処理を制御する「インタラクション・マネージャ」
2. ライフサイクル・イベント
   • モダリティ・コンポーネントとインタラクション・マネージャ間でやりとりされる，データ通信のためのユニバーサルな API (Prepare, Start, Done等)
3. EMMA
   • Multimoda Webにおける標準的データ交換フォーマット
   • 音声認識によるデータ入力を主な対象としていたが，現在，データ出力および各種機器連携への拡張について検討中

Multimodal Webへの期待

- WHAT WGメーリングリストでの議論

• WebアプリケーションのためのAPIとして，音声処理や文法処理を利用
  1. 音声関係のJavaScript API (Google)
  2. 音声合成 API
  3. X+V再び
  4. 音声合成と認識のための JavaScript API
  5. MMI WGの回答

- HTML5 IG JPメーリングリストでの議論

• 言語依存性，多様な入出力，入力情報の妥当性検証
  1. 入力モードとその妥当性検証

Multimodal Webの課題

- マルチモーダル時代のアクセシビリティ:

• 様々な機器ごとに異なる入出力/処理能力
• 言語ごとに異なる自然言語処理
• 様々なモーダルを組み合わせる際の操作感統一
• 利用者ごとに異なるニーズの違いへの対応

  → 6月18-19日，米国ニュージャージーにて，
      Workshop on Conversational Applications を開催!

  → 対話的Webアプリケーションのための言語モデルについて議論

Semantic Web技術応用の可能性

- 機器，利用者，自然言語ごとに異なるニーズへの対応

• Device Ontology: 機器ごとに，可能な処理内容に関する語彙を定義
• User Ontology: 利用者や言語ごとに異なるニーズを共通語彙化

MultimodalへのOntology応用
 - Ontologyによる語彙検索サービス

MultimodalへのOntology応用
 - あるいは，各デバイスが自発的に情報提供

是非，W3Cの国際標準化へご参加ください!

Web標準，そしてW3Cの活動にご注目ください

世界へ情報発信し，ご一緒にWebの可能性を拡大させていきましょう

WGへの参加:

国際標準仕様作成に直接参加し，アイデアを盛り込める!

詳細情報の入手:

一般には公開されない実装に必要な詳細情報を，会議やメーリスから取得できる!

専門家との議論:

長年標準仕様策定に関わってきた各国の専門家と議論して，問題点を解決できる!

W3Cへのご参加方法

1. まず，W3Cの会員になってください
2. そして，各種仕様を策定するワーキンググループへご参加登録ください

会員種別に応じた 年会費

Full Member (フル会員)

総収入が年間 57.5億円以上の営利組織

会費年額: 740万円

Affiliate Member (アフィリエイト会員)

上記以外の組織 (非営利組織を含む)

会費年額: 85万円

特許方針

• W3C勧告に含まれる全ての本質的技術 (Normative Technology) は W3C Royalty Free License にもとづいて提供されなければならない
• ワーキンググループ参加時にRoyalty Free Licenseへの同意が必要

もう一つのご参加方法: まずは日本IGへ!

• 会員にならなくても参加できる日本IGがある!
  • 日本IGのページ: HTML5 IG JP / SVG IG JP
  • 日本語ML: HTML5 IG JPリスト / SVG IG JPリスト
  • MMI IG JPはこれから...

ありがとうございました

お問合せ先:

慶應義塾大学 SFC 研究所 W3C

〒252-8520 神奈川県藤沢市遠藤 5322

電話: 0466-49-1170

Fax: 0466-49-1171

email: keio-contact@w3.org

担当: 一色, 石倉, 芦村

Q&A: W3Cに期待されるものは?

- Webを良くするために何が必要でしょうか?

- 例えば，以下のようなご要望を伺うことが多いですが，その他に何か?

全般的に:

• 日本語による情報提供の充実 (日本語コミュニティ・サイト)
• 標準準拠実装の充実
• 別々の仕様に含まれる類似機能の統合化

Q&A: W3Cに期待されるものは? (続き)

Visual Webに対して:

• HTML5の拡張性: 名前空間以外の方法論?
• より多様なインタフェースの利用 (音声，ジェスチャ等)
• 印刷応用等も踏まえた，より柔軟かつきめ細かい表示形式指定
• 携帯デバイスや家電機器等での利用を想定した，機能の絞り込み
• Microformatsとの連携・統合
• Nativeアプリ同等の使い勝手
• 処理能力の低い既存デバイスでの利用 (legacy class?)

Q&A: W3Cに期待されるものは? (続き)

Multimodal Webに対して:

• 様々な機器ごとに異なる入出力/処理能力
• 言語ごとに異なる自然言語処理
• 様々なモーダルを組み合わせる際の操作感統一
• 利用者ごとに異なるニーズの違いへの対応

Semantic Webに対しては?

付録A: W3Cご案内情報

現在，正式版は英語ですが，どうぞご活用ください

説明ページ:

http://www.w3.org/Consortium/join

W3C全般:

http://www.w3.org/Consortium/about-w3c

日本語版W3C活動概要:

http://www.w3.org/2009/04/w3c-keio-chronology/leaflet-200811.pdf

付録B: 入会手続きご案内

入会手続きは3ステップになっております．

1. まず，お申し込みページからステップ1を送ってください．すると米国MITの本部からメールが参ります．
2. その後、ステップ2へ進み，契約書をやり取りして手続き完了．

※ご注意:

• お申し込みページから，具体的な契約書(Membership Agreement)へのリンクがあります．
• 日本会員様の契約は，慶応義塾大学SFC研究所と締結されます．
• 会費は，年間売り上げ57.5億円以上の企業は740万円/年．その他は85万円．

付録C: その他関連情報

- W3C全般について:

• W3Cトップページ / W3Cについて / 初めて訪れる方向けの説明

- 標準仕様策定活動について:

• W3C Process Document / Publication Policy

- 特許方針について:

• W3C Patent Policy / Patent Policy FAQ