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W3C

日本語組版処理の要件(日本語版)

W3C 草案 2008年10月15日

このバージョン:
http://www.w3.org/TR/2008/WD-jlreq-20081015/
http://www.w3.org/TR/2008/WD-jlreq-20081015/ja/ (日本語版)
最新バージョン:
http://www.w3.org/TR/jlreq/
旧バージョン:
http://www.w3.org/TR/2008/WD-jlreq-20080411/
編者:
阿南 康宏, Microsoft
千葉 弘幸, Invited Expert
枝本 順三郎, Invited Expert
Richard 石田,W3C
石野 恵一郎, Antenna House
小林 龍生, JustSystems
小林 敏, Invited Expert
小野澤 賢三, Invited Expert
Felix 佐々木, W3C

この文書の英語版は承認文書です。


要約

この資料は、CSS、SVGおよびXSL-FOなどの技術で実現が求められる一般的な日本 語組版の要件を記述したものである。この資料は、主としてJIS X 4051(日本語 組版規則)に基づいている。しかし、一部、JIS X 4051に記載されていない事項 にも言及している。現状のこの資料は、素案段階にある。

この資料の状態(Status of this Document)

この資料の状態については、英語版を参照します。


目次

はじめに
   1.1 このドキュメントの目的
   1.2 このドキュメントの作成方法
   1.3 このドキュメントの執筆方針
   1.4 このドキュメントの構成
   1.5 用語の参照その他
1 日本語組版の基本
   2.1 日本語文書の基本となる組体裁
      2.1.1 組体裁の設計
      2.1.2 基本となる組体裁
      2.1.3 基本となる組体裁の主な設計要素
      2.1.4 基本版面の設計要素
      2.1.5 基本版面と実際のページの設計例
   2.2 和文文字―漢字と仮名のサイズ
      2.2.1 日本語組版に使用する文字
      2.2.2 漢字等,平仮名,片仮名
      2.2.3 漢字及び仮名の配置の原則
   2.3 組方向(縦組と横組)
      2.3.1 日本語の組版における組方向
      2.3.2 縦組と横組の主な相違点
   2.4 基本版面の設計
      2.4.1 基本版面の設計手順
      2.4.2 基本版面の設計の注意点
   2.5 基本版面の設計要素の各ページに対する適用
      2.5.1 基本版面のサイズからはみ出す例
      2.5.2 基本版面で設定した行の位置の適用
      2.5.3 基本版面で設定した文字位置の適用
   2.6 柱とノンブル
      2.6.1 柱及びノンブルの位置
      2.6.2 柱及びノンブルの配置の原則
      2.6.3 柱及びノンブルの配置方式
行の組版処理
   3.1 約物などの組版処理
      3.1.1 縦組と横組で異なる約物など
      3.1.2 句読点や括弧類などの基本的な配置方法
      3.1.3 読点[、] (IDEOGRAPHIC COMMA)及び中点[・] (KATAKANA MIDDLE DOT)の例外的な配置方法
      3.1.4 始め括弧類(cl-01)、終わり括弧類(cl-02)、読点類(cl-07)、句点類(cl-06)が連続する場合の配置方法
      3.1.5 行頭の始め括弧類(cl-01)の配置方法
      3.1.6 区切り約物(cl-04)とハイフン類(cl-03)の配置方法
      3.1.7 行頭禁則
      3.1.8 行末禁則
      3.1.9 行末に配置する終わり括弧類(cl-02),句点類(cl-06),読点類(cl-07),<a class="characterClass" href="#cl-05-ja">中点類(cl-05)</a>の配置方法
      3.1.10 分割禁止
      3.1.11 1 行の調整処理で字間を空ける処理に使用しない箇所
      3.1.12 行の調整処理例
   3.2 和欧文混植処理(縦中横処理を含む)
      3.2.1 和文と欧文との混植
      3.2.2 横組の和欧文混植に用いる文字
      3.2.3 縦組の和欧文混植に用いる文字
      3.2.4 全角のモノスペースの欧字及び全角のモノスペースのアラビア数字の配置法
      3.2.5 縦中横の処理
      3.2.6 プロポーショナルな欧字を用いた和欧文混植処理
   3.3 ルビと圏点処理
      3.3.1 ルビの使用
      3.3.2 ルビの付け方
      3.3.3 ルビの文字サイズ
      3.3.4 親文字のどちら側にルビを付けるか
      3.3.5 モノルビの親文字に対する配置位置
      3.3.6 グループルビの親文字に対する配置位置
      3.3.7 熟語ルビの親文字に対する配置位置
      3.3.8 ルビが親文字よりはみ出した場合の処理
      3.3.9 圏点の処理
   3.4 割注処理
      3.4.1 割注の利用
      3.4.2 割注の文字サイズと行間など
      3.4.3 割注を本文の2行以上にわたって配置する処理
   3.5 段落整形,そろえ及び段落末尾処理
      3.5.1 段落先頭行の字下げ
      3.5.2 字下げと字上げ
      3.5.3 そろえの処理
      3.5.4 段落末尾処理
   3.6 タブ処理
      3.6.1 タブ処理の利用
      3.6.2 タブ処理で指定する配置位置に揃える形式
      3.6.3 タブ処理を行う対象の文字列の配置法
   3.7 その他の行組版処理
      3.7.1 添え字処理
      3.7.2 振分け処理
      3.7.3 字取り処理
      3.7.4 等号類と演算記号の処理
   3.8 行の調整処理
      3.8.1 行の調整処理の必要性
      3.8.2 詰める処理と空ける処理
      3.8.3 詰める処理の優先順位
      3.8.4 空ける処理の優先順位
   3.9 文字クラスについて
      3.9.1 文字・記号により振る舞い方は異なる
      3.9.2 文字・記号を振る舞い方により分ける
      3.9.3 各文字クラスの配置方法

付録
1 文字クラス一覧
2 文字間の空き量
3 文字間での分割の可否
4 行の調整処理で詰める処理が可能な箇所
5 行の調整処理で空ける処理が可能な箇所
6 熟語ルビの配置方法
7 用語集
8 参考文献(参考)
9 変更記録(参考)
10 謝辞(参考)


1 はじめに

1.1  このドキュメントの目的

書記システムは,言語,文字と並び,文化を構成する重要な要素である.それぞれの文化集団には独自の言語,文字,書記システムがある.個々の書記システムをサイバースペースに移転することは,文化的資産の継承という意味で,情報通信技術にとって非常に重要な責務といえよう.

この責務を実現するための基礎的な作業として,このドキュメントでは,日本語という書記システムにおける組版上の問題点をまとめた.具体的な解決策を提示することではなく要望事項の説明をすることにした.それは,実装レベルの問題を考える前提条件をまず明確にすることが重要であると考えたからある.

1.2  このドキュメントの作成方法

このドキュメントの作成は,W3C Japanese Layout Task Forceが行った.このタスクフォースは,次のようなメンバーで構成され,ユーザーコミュニティーからの要望と専門家による解決策を調和させるために様々な議論を行ってきた.

  1. 日本語組版の専門家(“JIS X 4051:日本語文書の組版方法”のエディターたち)

  2. 日本における国際化,標準化活動の専門家(マイクロソフト,アンテナハウス,ジャストシステムの社員)

  3. W3CのXSL,CSS,SVG,国際化コアなどのワーキンググループメンバー

また,このタスクフォースは,バイリンガルによるものとしても,画期的なものといえよう.ディスカッションは,日本語の組版を問題とすることから,主として日本語で行った.しかし,議事録とメーリングリストは英語のものを用意した.W3CのXSL,CSS,SVG,国際化コアなどのワーキンググループメンバーとの英語及び日本語によるフェイス・ツウ・フェイスの会議を開催した.

ドキュメントも日本語で準備し,これを英訳し,2つのドキュメントを公開することにした.用語についても,特殊な用語は極力避けるように努めた.英語の用語との対応についても,用語の定義内容を検討し,概念に対応できない部分を持つ場合は,日本語の用語はローマ字で表現し,今後の課題として残した.さらに,日本語組版を見慣れていない読者のために,要望事項の説明をわかりやすい英語と図表で行うように努力した.

1.3  このドキュメントの執筆方針

日本語組版は,欧文組版と異なる事項がある.主に次の点で異なる.

  1. 日本語組版には,横組だけでなく,縦組がある.

  2. 日本語組版で使用する漢字等(cl-19)平仮名(cl-15)片仮名(cl-16)字幅は,原則として全角モノスペースであり,これを原則としてベタ組にする.

このドキュメントでは,このことを前提にして,主に日本語組版の特徴を次の方針で解説する.

  1. 日本語組版のあらゆる事項を対象とするのではなく,欧文組版と異なる事項を主に取り上げた.

  2. 日本語組版の表現された結果又は表現されるべき結果だけを問題とする.あくまで日本語組版として要求される事項を取り上げ,具体的にどのように処理するかは別の次元の問題と考えるからである.

  3. 日本語組版の日本工業規格(JIS)に“JIS X 4051(日本語文書の組版方法)”がある.これとの参照関係をできるだけ示すことを心掛けた.また,JIS X 4051に記述していない事項を除き,基本的な事項にできるだけ限定した.したがって,詳細な処理内容はJIS X 4051にゆずり,参照だけで示した箇所がある.日本語組版に本格的に対応するためにはJIS X 4051を参照する必要があるが,それ以前の基本的な理解を深めることがまずは重要と考えたからである.JIS X 4051で規定されている内容だけではなく,それ以外で重要と思われる事項については解説する.

    したがって,このドキュメントとJIS X 4051との関係でいえば,JIS X 4051の要点の解説あるいは要約,補足説明,それに関わる周辺情報の追加,JIS X 4051で規定していない事項の解説ということになる.したがって,基本的な事項を理解するためであれば,このドキュメントで十分であるが,詳細な内容を知るためにはJIS X 4051を参照する必要がある.

  4. ある組版処理がどのような局面で使用されるかをできるだけ示すように心掛けた.

  5. 日本語組版に日常的に接していない読者のために,説明している事項の使用頻度について簡単に解説した.これは実際に調査した結果ではなく,執筆者の読書経験による判断である.これは日常的に日本語組版に接している読者にはある程度判断できることであるが,そうでない読者のために,ある程度の使用頻度情報を伝えるためである.したがって,組版処理事項の重要さをある程度判断するができるようにすることを主な目的とするので,情報の正確性を求めないでほしい.

    例えば,“割注の使用頻度は多くないが,その該当用語が出てきた箇所に直接補足説明できることから,古典や翻訳書において人物・用語等の簡単な紹介に重要な役割を果たしている”のように説明し.これに対し,“ルビは,最近では新聞でも採用しており,多くのドキュメントで利用されている.”のように示すことにする.

  6. 日本語組版に接していない読者を考慮し,できるだけ図解して示すようにした.また,例示も多くするように心掛けた.

  7. 組版処理と読みやすい組版設計の関係は別問題である.しかし,両者は不可分の関係があり,解説でも両者を同時に説明する事項もでてくる.しかし,できるだけ両者を区別して記述することを心掛けた.具体的な方法としては,読みやすい組版設計の解説は,できるだけ注記で述べるようにした.

  8. このドキュメントの解説では,組版処理の対象を主に書籍とする.筆者の経験がその点に最も深いこともあるが,日本語組版処理において質の面から書籍の組版が重要と考えるからである.量が多いというだけでなく,質の面から見ると,書籍組版は多くの問題点をもっている.書籍組版は,その処理内容が多様であり,これらについて最も古くから多くの人により問題点が考えられ,かつ指摘されてきた経緯がある.処理そのものについては,書籍の組版処理はむつかしく,また要求のレベルが高かったという点もある.また,書籍で考えられてきた事項の多くが,その他のドキュメントでも応用できる点が多いといえよう.

    しかし,使用頻度という点でいえば,雑誌,マニュアル,Web上のドキュメント等の重要性は,書籍と変わらない.また,これらのドキュメントの組版処理では,書籍とは異なる事項も含んでいる.これらにおける問題点は,次の課題としたい.

1.4  このドキュメントの構成

このドキュメントは,次の3つの部分で構成されている.

1 日本語組版の基本

2 行の組版処理

3 版面の構成方法

第1章では,日本語組版で使用される文字の特徴,縦組横組の相違点,基本版面の設計方法及びその適用方法などについて解説した.

第2章では,漢字等(cl-19)平仮名(cl-15)片仮名(cl-16)約物だけでなく文字に添えて行間に配置されるルビ処理や欧文を含む行の組版処理及び行内での文字配置方法を解説した.

第3章では,見出し,注,図版などの構成方法及び配置方法を解説した.

なお,日本語組版は,原則として全角モノスペースの文字・記号を字間を空けずに(ベタ組にして)配置する.このことを前提にして本の基本となる版面(基本版面)を設計する.そのうえで実際のページでは,基本版面の設計に従い図版や文字・記号などを配置する.この基本版面の設計と,それに従いどのように図版や文字・記号などを配置するかを理解することは,日本語組版を理解する重要なポイントである.そこで,第1章では,基本版面の設計とその適用方法について,詳細に解説した.特に,“1.5 基本版面の設計要素の各ページに対する適用”では,次の3点について,基本版面で設計した事項のどこを厳守し,どのような例外がでるかについて,典型的な例を解説した.ここでの説明の目的は,日本語組版を理解してもらうためのものであり,各要素の詳細な解説は,第2章と第3章で行うので,説明が一部では重なる部分もでてくる.

  1. 基本版面で決定した版面の全体のサイズ又は段組などその構造をできるだけ維持する.ただし,例外がある.

  2. 基本版面で決定した行の位置をできるだけ維持する.ただし,例外がある.

  3. 基本版面で決定した文字位置をできるだけ維持する.ただし,例外がある.

1.5  用語の参照その他

このドキュメントで使用している用語の定義は,別ドキュメントで行った.用語の表記及び参照等は,次のように行った.

後送

2 1 日本語組版の基本

2.1  日本語文書の基本となる組体裁

2.1.1  組体裁の設計

日本語文書の組体裁は,以下の順序で設計する。

  • まず、基本となる組体裁を設計する。

  • 次に、それを基準として文書の実際のpage設計を行う。

2.1.2  基本となる組体裁

基本となる組体裁は,書籍では,1パターンであることが多いが,雑誌では一般に数パターンを作成する.

書籍では,1パターンといっても,前述したように目次などは,基本となる組体裁を元に設計をしなおす.また,索引は,基本となる組体裁とは異なる組方になる例が多く,縦組の書籍でも,索引横組とし,段組とする例が多い.この場合でも,基本となる組体裁で設計した版面サイズと索引の版面サイズが近似するように設計する.

雑誌は,性格の異なる記事の集合である.そこで記事内容により,ある部分は9ポイントの3段組,ある部分は8ポイントの4段組と,記事内容により組方を変えている例が多い.

2.1.3  基本となる組体裁の主な設計要素

基本となる組体裁の設計要素(縦組の例)

図1]: 基本となる組体裁の設計要素(縦組の例)

基本となる組体裁の主な設計要素としては,次がある(縦組の例を[図1]に示す).

  1. 仕上りサイズと綴じる側([図2]参照,日本語文書では一般に縦組では右綴じ,横組では左綴じ

  2. 基本となる組方向(縦組又は横組

  3. 基本版面の体裁及びその仕上りサイズに対する位置

  4. ノンブルの体裁

綴じる方向(右綴じと左綴じ)

図2]: 綴じる方向(右綴じと左綴じ)

2.1.4  基本版面の設計要素

本の基本として設計される版面体裁が基本版面である.基本版面の設計要素としては,次がある([図3]参照).

注1)

基本版面で設計した各要素が,実際のページでどのように適用されるかは日本語組版の特徴を理解するための重要なポイントである.そこで,その詳細は後述する.

注2)

基本版面の指定等については,JIS X 4051の7.5に規定されている.

注3)

仕上り用紙サイズ別の基本版面の設計例(及びノンブルの設計例も含く)及び組版例が,JIS X 4051の附属書3及び附属書4に掲げられているので参考になる.

基本版面の設計要素(縦組の例)

図3]: 基本版面の設計要素(縦組の例)

  1. 使用する文字サイズ及びフォント名

  2. 組方向(縦組又は横組

  3. 段組の場合は,段数及び段間

  4. 1行の字詰

  5. 1ページに配置する行数(段組の場合は1段に配置する行数)

  6. 行間(又は行送り

2.1.5  基本版面と実際のページの設計例

基本となる組体裁を設計し,それを基準に文書の実際のページにおける各要素の配置設計を行う例をいくつか示しておく(なお,この点を含め,基本版面の設計要素が各ページでどのように適用されるかについては“1.5 基本版面の設計要素の各ページに対する適用”で解説する).

  1. 見出しを配置するスペースと位置

    見出し行送り方向のスペースは,基本版面で設定した行の位置を元に,それの何行分を用いるかという方法で設計する(この処理方法については,JIS X 4051の8.3.3のd)に規定されている).見出し字詰め方向の字下げは,基本版面で設定した文字位置を基準に,その何字分を下げるかという方法で一般に設計する.[図4]の例は,見出し基本版面で設定した行の位置の3行の中央に配置し,基本版面で設定した文字サイズの4字下がった位置に配置している.

    追1-1 基本版面で設計した行の位置を基準とした見出しの設計例

    図4]: 基本版面で設計した行の位置を基準とした見出しの設計例

    注1)

    見出しの種類や構成,その配置方法等についての詳細は,“3.1 見出し処理”で解説する.

  2. 配置する図版のサイズ

    横組の2段組図版を配置する場合,図版の左右サイズは,できるだけ基本版面で設計した1段の左右サイズ又は基本版面の左右サイズを基準に設計し,そのいずれかのサイズで配置できるときは,そのように決める([図5]参照).また,位置は,多くは版面の又はなどに揃えて配置する([図5]参照).

    追1-2 横組の2段組における版の設計例

    図5]: 横組の2段組における図版の設計例

    注1)

    図版の配置方法についての詳細は,“3.3 図・写真等の配置処理”で解説する.

  3. 目次の版面サイズ

    書籍の目次の版面サイズは,基本版面のサイズを基準に設計する.例えば,縦組目次では,左右の行送り方向のサイズは基本版面のサイズと同じにし,字詰め方向のサイズは,やや小さくする例が多い([図6]参照).

    追1-3 縦組の目次版面の設計例

    図6]: 縦組の目次版面の設計例

    注1)

    基本版面と異なる版面にした場合の及びノンブルに位置については,“1.6.2 及びノンブルの配置の原則”で解説する([図49]参照).

2.2  和文文字―漢字と仮名のサイズ

2.2.1  日本語組版に使用する文字

日本語組版に使用する和文文字では,主に漢字等(cl-19)平仮名(cl-15)片仮名(cl-16)を使用する([図7]参照).

漢字・平仮名・片仮名

図7]: 漢字・平仮名・片仮名

注1)

日本語組版には,漢字と仮名以外に,多くの約物類([図8]参照)のほかに,アラビア数字ラテン文字ギリシャ文字などを混用する場合がある.

日本語組版に使用する約物類の例

図8]: 日本語組版に使用する約物類の例

注2)

このドキュメントにでてくる文字及び文字クラスの詳細は,“2.9 文字クラスについて”,及び別ドキュメントの“用語集”で解説する.また,Appendix 〓に各文字クラスに含まれる文字・記号とUnicodeとの対応を示す.

2.2.2  漢字等,平仮名,片仮名

漢字等(cl-19)平仮名(cl-15)片仮名(cl-16)は,正方形の仮想ボディ(又は文字の外枠ともいう)をもっており,その仮想ボディ左右中央に,仮想ボディよりやや小さくした字面をもっている.文字サイズは,この仮想ボディのサイズで示す([図9]参照).なお,字幅は,文字を配列する方向(字詰め方向)の仮想ボディの大きさをいい,横組では文字の幅となるが,縦組では文字の高さとなる.([図9]参照)

漢字と仮名のサイズの示し方

図9]: 漢字と仮名のサイズの示し方

注1)

小書きの仮名(cl-11-ja)(っ,ょ,ュ,ァ,ィ,ゥなど)は,縦組では仮想ボディ中央で右寄り,横組では仮想ボディの左右中央で下寄りに字面を配置する([図10]参照).また,約物などでは,仮想ボディ左右中央に配置しない例がある.

小書きの仮名と仮想ボディの関係

図10]: 小書きの仮名と仮想ボディの関係

2.2.3  漢字及び仮名の配置の原則

漢字等(cl-19)平仮名(cl-15)片仮名(cl-16)は,行に文字を配置していく際には,原則として,仮想ボディを密着させて配置するベタ組にする(図1-8参照).

ベタ組の例(横組の場合)

図11]: ベタ組の例(横組の場合)

注1)

活字組版の時代から漢字等(cl-19)平仮名(cl-15)片仮名(cl-16)の設計は,縦組又は横組にした場合でも読みやすく,また,ベタ組とした場合に読みやすいように設計されていた.ただし,活字組版では,文字サイズ別に何段階かに分けて原図母型の元になるもの)を作成していたが,今日では,同一の原図から単純に拡大・縮小して使用するので,大きな文字サイズにした際には,字間の調整が必要になる場合もでてきた.

注2)

次のようにベタ組にしない方法も,印刷物の内容によっては採用されている.

  1. アキ組 字間に一定のアキを入れて文字を配置する方法([図12]参照).

    アキ組の例(横組の場合)

    図12]: アキ組の例(横組の場合)

    書籍におけるアキ組は,次のような場合に利用されている.

    1. 字数の少ないと字数の多いとのバランスをとるために,字数の少ないアキ組にする.アキ組の例は,JIS X 4051の附属書5に例がある.

    2. 字数の少ない見出しと字数の多い見出しとのバランスをとるために,字数の少ない見出しアキ組にする.見出しアキ組の例は,JIS X 4051の附属書6に例がある.

    3. 図版キャプションの字数が少ない場合に,図版のサイズとバランスをとるためにアキ組にする.

    4. 1行の字数が少ない漢詩や日本語の詩歌でアキ組にする場合がある.

    注1)

    アキ組については,均等詰めを含めてJIS X 4051の4.18.1のb)に規定されている.

  2. 均等割り 字間を均等に空け,文字列の両端を行頭及び行末にそろえる方法([図13]参照).

    均等割りの例(横組の場合)

    図13]: 均等割りの例(横組の場合)

    書籍における均等割りは,の和文の項目見出しの長さを揃える場合に利用されている(図追加1-4参照).また,名簿などで人名の部分で均等割りにする例がある.

    追1-4 表の均等割りの例

    図14]: 表の均等割りの例

    注1)

    均等割りについては,字取り処理を含めてJIS X 4051の4.18.1に規定されている.

  3. 詰め組ベタ組より字間を詰めて,仮想ボディの一部が重なるように文字を配置する方法.この場合,重なる量を同一にする方法(均等詰め[図15]参照)と,仮名や約物等の字面に応じて,字面が重ならない程度まで詰めて文字を配置する方法(字面詰め[図16]参照)がある.

    均等詰めの例(横組の場合)

    図15]: 均等詰めの例(横組の場合,上側はベタ組,下側が均等詰めの例)

    字面詰めの例(横組の場合)

    図16]: 字面詰めの例(横組の場合,上側はベタ組,下側が字面詰めの例)

    詰め組字面詰めは,書籍では大きな文字サイズ見出し等で採用されている例がある.字と字との間隔について,本文ではベタ組が最も読みやすい.しかし,そのまま拡大した場合には,大きな文字サイズになった場合,字と字との間隔の見え方について,ややバランスを欠く例もあり,採用されている.また,読みやすさを重視する書籍の本文で採用している例は少ないが,雑誌の本文や広告のコピー等では,詰め組字面詰めを採用している例がある.誌面構成のデザインを重視,文字部分をまとまったものとして演出したいということであろう.

2.3  組方向(縦組と横組)

2.3.1  日本語の組版における組方向

日本語の組版における組方向は,縦組(縦書き)と横組(横書き)がある.原稿の内容に応じて,いずれかの組方向を選択する.

注1)

日本語組版に使用する漢字等(cl-19)平仮名(cl-15)片仮名(cl-16)は,原則として正方形の文字なので,活字組版の時代から,縦組横組共用の印刷用文字の配置方向を変えるだけで,縦組横組組版が可能であった([図17]参照).なお,横組専用の活字の設計も一部で行われた例があるが,あまり普及しなかった.

縦組と横組

図17]: 縦組と横組(矢印は文字を読んでいく順序を示す)

注2)

縦組横組組版されたページ数を調査したデータはほとんどないが,日本における縦組横組の本の刊行点数は,ほぼ同じくらいと予想される.

注3)

公用文は横組が推奨され,教科書等では特別な科目を除き,多くが横組であり,また,携帯小説の読者も増えており,今後は横組が増えていくと予想される.しかし,大部数の新聞のすべては縦組であり,一般の読者を対象とする発行部数の多い雑誌もほとんど縦組である.また,書籍でも読者の多い小説などでは,ほとんどが縦組である(小説は縦組でないと読めないという読者もいる).したがって,日本語組版において,縦組が重要であるということは,当分は変わらないと予想される.

注4)

1つの印刷物の中では,縦組横組のどちらか一方の組方向で組版するが,縦組の場合は,横組にしてを配置するなどして,部分的に横組が混用される場合も多い([図18]参照).例 ページ内に配置する及びキャプション図版キャプションノンブルなど.

縦組の本における横組の混用例

図18]: 縦組の本における横組の混用例

2.3.2  縦組と横組の主な相違点

縦組横組の主な相違点としては,次がある.

  1. 文字,行,段及びページの配置,並びに綴じの方向は,次のようになる.

    注1)

    縦組横組における文字,行,及び段の配置方向は,JIS X 4051の7.4.4に規定されている.

    1. 縦組の場合(2段組の例である[図19]参照)

      縦組における文字などの配置方向

      図19]: 縦組における文字などの配置方向

      1. 文字は上から下に,行は右から左に配置する.

      2. 段は上から下に,ページは表面から開始,右から左に配置する(左方向から右方向に本は開いていく,[図20]参照).

        縦組における本の開いていく方向

        図20]: 縦組における本の開いていく方向

    2. 横組の場合(2段組の例である[図21]参照)

      横組における文字などの配置方向

      図21]: 横組における文字などの配置方向

      1. 文字は左から右に,行は上から下に配置する.

      2. 段は左から右に,ページは表面から開始,左から右に配置する(右方向から左方向に本は開いていく,[図22]参照).

        横組における本の開いていく方向

        図22]: 横組における本の開いていく方向

    3. 文中に挿入される英数字の向きは,次のようになる.

      1. 縦組の場合は,次の3つの配置方法がある.

        1. 和文文字と同じように正常な向きで,1字1字配置する.主に1文字の英数字,大文字の頭字語([図23]参照)など.

          縦組における英数字の配置例1

          図23]: 縦組における英数字の配置例1

          注1)

          和文文字と同じように正常な向きで,1字1字配置する場合に使用する英数字は,活字組版時代から固有の字幅を持つ欧文組版用の文字(プロポーショナルな文字)ではなく,全角でデザインされたモノスペースの欧字や数字を用いていた.

        2. 文字を時計回りに90度回転し,配置する.主に英字の単語,文など([図24]参照).

          縦組における英数字の配置例2

          図24]: 縦組における英数字の配置例2

          注1)

          [図24]において“editor”の仮想ボディの前後に隙間がある.この隙間は,和文と欧文を混ぜて配置する場合の必要な処理であり,詳細は後述する.

        3. 正常な向きのまま,横組にする(縦中横[図25]参照).主に2桁の数字の場合などで利用されている(縦中横の処理は,JIS X 4051の4.8に規定されている).

          縦組における英数字の配置例3(縦中横)

          図25]: 縦組における英数字の配置例3(縦中横)

      2. 横組の場合は,正常な向きで配置する.

    4. 図版などを,サイズの関係から時計回り又は反時計回りに90度回転して配置する場合,次のようにする(この処理は,JIS X 4051の7.3に規定されている).

      1. 縦組の場合は,図版などの上側を右側にする([図26]参照).

        縦組において表を時計回りに90度回転して配置した例

        図26]: 縦組において表を時計回りに90度回転して配置した例

      2. 横組の場合は,図版などの上側を左側にする([図27]参照).

        横組において表を反時計回りに90度回転して配置した例

        図27]: 横組において表を反時計回りに90度回転して配置した例

        注1)

        これは,本を読んでいく流れに従うためである.

  2. 改丁改ページなどの直前ページにおいて,段組の行がページの途中で終わる場合は,次のようにする(改丁改ページの処理は,JIS X 4051の8.1.1に規定されている).

    1. 縦組の場合は,“なりゆき”とし,各段の左右行数は不揃いになる([図28]参照).

      縦組の段組における改丁・改ページの直前ページの処理例

      図28]: 縦組の段組における改丁・改ページの直前ページの処理例

    2. 横組の場合は,各段の行数を平均にする.ただし,行数が段数で割り切れない場合,その不足する行数は,最終段の末尾を空けるようにする([図29]参照).

      横組の段組における改丁・改ページの直前ページの処理例

      図29]: 横組の段組における改丁・改ページの直前ページの処理例

      注1)

      縦組の場合,左右又は上下のバランスは,それほど問題とならない.これに対し,横組では,左右のバランスをできるだけ考慮した方が配置位置として安定するからである.

2.4  基本版面の設計

2.4.1  基本版面の設計手順

日本語組版では,正方形の仮想ボディベタ組にすることから,まず基本版面のサイズを設計し,そのうえで,仕上りサイズに対する基本版面の位置を決めている.そこで,基本版面は,次の手順で設定する(図1-26参照).

  1. 基本版面のサイズを決める.

    1. 1段組の場合は,文字サイズ,1行の字数,1ページの行数及び行間を決める.

    2. 段組の場合は,文字サイズ,1行の字数,1段の行数,行間段数及び段間を決める.

      基本版面の設定手順の1

      図30]: 基本版面の設定手順の1

  2. 仕上りサイズに対する基本版面の配置位置を決める.

    基本版面の配置位置の指定方法には,次がある.

    1. 位置:中央,左右位置:中央

    2. 位置:アキ横組の場合)またはアキ縦組の 場合)を指定,左右位置:中央

    3. 位置:中央,左右位置:のどアキを指定

    4. 位置:アキ横組の場合)またはアキ縦組の 場合)を指定,左右位置:のどアキを指定([図31]参照)

    基本版面の設定手順の2

    図31]: 基本版面の設定手順の2

    注1)

    一般には,基本版面仕上りサイズ左右中央に配置する例が多い.つまり,デフォルトは仕上りサイズ左右中央であり,基本版面のサイズによっては,中央よりやや上げる・下げる,または左右に移動させるなどの操作を行う.

    注2)

    仕上りサイズと四方のマージンを設定することにより基本版面のサイズを決める方法は,和文の組版では,一般に行わない.この方法でしか設定できない場合は,あらかじめ基本版面のサイズと刷り位置から四方のマージンを計算し,設定することになる.

2.4.2  基本版面の設計の注意点

基本版面は,次のような事項を考慮し設計する(この項のa項及びb項は処理内容というよりは,どのように設計するかという問題についての解説である.なお,基本版面の指定については,JIS X 4051の7.4.1に規定がある).

  1. 仕上りサイズ及び余白を考慮して決定する.一般には,仕上りサイズ基本版面のサイズがほぼ相似形になるように決める.

  2. 大人を読者対象とした本の場合の文字サイズは,一般に9ポイント(≒3.2mm)が多い.辞書など特別の本を除き,最低でも8ポイント(≒2.8mm)である.

    注1)

    欧文の場合,10ポイント(≒3.5mm)又は12ポイント(≒4.2mm)がよく使用されている.これは和文文字と欧文文字との文字設計の違いによる.

  3. 1行の行長は,文字サイズの整数倍に設定する([図32]参照).

    1行の行長は文字サイズの整数倍

    図32]: 1行の行長は文字サイズの整数倍

    注1)

    これは,2つの理由による.この2つを満足させるために,行長は,文字サイズの整数倍に設定する必要がある.

    1. 和文の組版は,段落の最終行を除き,行長を揃えるのが原則である.なお,段落の先頭行も,原則としてインデントを行うので,その部分だけ行長は短くなる.

    2. 漢字等(cl-19)平仮名(cl-15)片仮名(cl-16)などの印刷用の文字は,原則として正方形である.また,各文字間ベタ組とするのが原則である.

    注2)

    1行の行長字詰め数,1行に配置する字数)は,縦組の場合,最大で52字くらい,横組では40字くらいにする.仕上りサイズの関係で,1行の字詰め数がこれ以上になる場合は,段組にして,1行の字詰め数を少なくすることが望ましい.

  4. 行と行の間の空き(行間)は,特別な場合を除き,一定の値を確保する.また,各行の行の位置は,できるだけ揃えるようにする.そこで,一般に基本版面行送り方向のサイズは,行数と行間(又は行送り)で設定する.

    注1)

    日本語組版では,行間ルビ圏点・傍線・下線などを配置する例がある.このようなものを配置した場合でも,行間は一定にし,変更しない([図33]参照).本文中に注と参照するための合印行間に配置する方法があるが,この場合も同様に扱う.なお,ルビなどの配置法そのものについては,第2章で解説する.

    行間にルビなどを配置した例

    図33]: 行間にルビなどを配置した例

    注2)

    割注は,基本版面で設定した行送り方向の行の幅(基本版面で設定した文字サイズ)よりはみ出して配置する.この場合でも,割注の入らない部分の行間を一定にし,割注のある箇所は狭くなるようにする([図34]参照).したがって,割注が入る場合は,行間をある程度大きくしておく必要がある.この他に,縦中横,上付き・下付きの添え字などについても,行送り方向の行の幅よりはみ出して配置する場合は,同様に扱う.なお,割注などの配置法そのものについては,第2章で解説する.

    割注が入った場合の行間の処理例

    図34]: 割注が入った場合の行間の処理例

    注3)

    基本版面行間は,基本版面文字サイズの二分アキ以上で全角アキ以下の範囲とすることが多い.字詰め数が少ない場合は,二分アキでもよい.35字を超えるような字詰め数では,全角アキか,それよりやや詰めた行間にするのがよい.

    注4)

    古典の注釈本などで,行間ルビやその他の要素を数多く配置する場合などを除き,行間全角アキ以上にすることはない.全角アキ以上にしたからといって,読みやすくなるわけではない.

    注5)

    欧文の組版行間は,文字サイズの三分アキまたはそれ以下とする場合も多い.これと比較すると和文の組版行間は大きくなる.これも,和文文字と欧文文字との文字設計の違いによる.

2.5  基本版面の設計要素の各ページに対する適用

2.5.1  基本版面のサイズからはみ出す例

それぞれのページに配置する各要素は,できるだけ基本版面で設定した版面サイズの内側になるように配置する.しかし,次のような例外がある.

  1. 版面又は段の先頭に配置する行の右側(縦組)又は上側(横組)にルビや傍線,圏点などが付く場合は,版面又は段の領域の外側に接して配置する([図35]参照).ルビや下線などを左側(縦組)又は下側(横組)に付けた場合は,版面又は段の末尾に配置する行で版面又は段の領域の外側に接して配置する.次項を含め,このことは基本版面で設定した行の位置を確保するためである.本文中に注と参照するための合印行間に配置する方法があるが,この場合も同様に扱う.

    版面の外側に配置したルビの例

    図35]: 版面の外側に配置したルビの例

  2. 版面又は段の先頭又は末尾に配置する行に基本版面で設定した行送り方向の行の幅(基本版面で設定した文字サイズ)よりはみ出して配置する要素がある場合は,基本版面で設定した行送り方向の行の幅よりはみ出して配置する部分を,版面又は段の領域の外側にはみ出して配置する(前項とこの項の処理は,JIS X 4051の12.1.1に規定されている).例えば,縦中横の設定を行った文字列の横幅が基本版面で設定した文字サイズより大きくなる場合などである.この他に,割注,上付き・下付きの添え字なども同様な扱いとする.

  3. ぶら下げ組とよばれる処理をした場合は,行頭禁則の処理を必要とする句点(。)と読点(、)に限り,行末の版面又は段の領域の外側に接して配置する([図36]参照).なお,ぶら下げ組についてはJIS X 4051に規定されていないが,同規格の解説8.1)c)に説明がある.

    ぶら下げ組により版面の外側に配置した句点と読点の例

    図36]: ぶら下げ組により版面の外側に配置した句点と読点の例

    注1)

    ぶら下げ組は,字間による行の調整処理を少なくする方法である.

    注2)

    ぶら下げ組を採用している書籍は多い.

  4. 図版を各ページに配置する場合,一般に基本版面で設定した範囲内に配置する.しかし,配置する図版によっては,基本版面で設定した範囲をはみ出して配置する場合もある.

    1. 配置する図版のサイズが基本版面より大きくせざるを得ない場合

    2. 視覚的効果を出すために基本版面で設定した範囲をはみ出して配置する.特に紙面一杯に配置する“裁ち落し”とよばれる方法は,書籍では多くないが,雑誌などではよく行われている([図37]参照).

      裁ち落しの例

      図37]: 裁ち落しの例

  5. その他,図版キャプションを段の領域の外側,段間に配置する方法も雑誌などでは行われている(この配置方法は体裁がよくないという意見もある).

2.5.2  基本版面で設定した行の位置の適用

ページにおける行の位置は,基本版面で設定した行の位置に従うのが原則である.前掲した図([図33])のようにルビ圏点が付いた場合だけでなく,例えば,次の[図38]に示したように,行中の一部として基本版面で設定した文字サイズより小さな文字が入る場合でも,基本版面で設定した行の位置を基準に配置し,それに後続する行も基本版面で設定した行の位置にくるようにする.

行中に小さい文字が入った場合の行の位置

図38]: 行中に小さい文字が入った場合の行の位置

注1)

括弧書きの文字を小さくするのは,その部分は補足的な説明ということからである.ただし,その扱い方としては,次の3つの方式がある.限定した箇所のみの文字を小さくする方法が最もよく利用されている.

  1. 括弧内の文字をすべて小さくする([図38]に示した方法である).

  2. 括弧内の文字はすべて,基本版面で設定した文字サイズと同じにする.

  3. 参照ページなど,限定した箇所のみを小さくする.

ただし,次のような例外がある.

  1. 横組などで,図版の左右にテキストを配置しない方法とした場合,1ページに2つ以上の図版が挿入されたときは,基本版面で設定した行の位置からずれることがある([図39]参照).ただし,基本版面で設定した行の位置に配置する方法もある([図40]参照).前者の方法は,図版の前後の空きをできるだけ均一にするという考え方による(この方法を採用している書籍が多い).この処理方法については,JIS X 4051の10.3.2のd)に規定がある.

    版等を複数配置した場合の行の配置例1

    図39]: 図版等を複数配置した場合の行の配置例1

    版等を複数配置した場合の行の配置例2

    図40]: 図版等を複数配置した場合の行の配置例2

  2. 段落間や横組ページの下端に挿入される脚注などは,基本版面で設定した文字サイズよりは小さくする.これに伴い行間も狭くするので,基本版面で設定した行の位置とは揃わない.例えば,縦組において,段落の間に入る後の配置位置の例を[図41]に示す.後組版処理については,JIS X 4051の9.3,脚は9.4に規定されている.

    縦組の後注の配置例

    図41]: 縦組の後注の配置例

  3. 見出しは,前述したように必ずしも基本版面で設定した行の位置とは揃わないことがある.しかし,その行送り方向にしめる領域は,基本版面で設定した行を基準に設計する([図4]参照).

2.5.3  基本版面で設定した文字位置の適用

各行に配置する文字の位置は,基本版面で設定したベタ組とした文字の配置位置に従うのが原則である.しかし,前掲したいくつかの図でも基本版面で設定した文字の位置に従っていない例がある.こうした事例は多いが,以下では,典型的な例をいくつか示す(詳細は第2章で解説する).

注1)

基本版面で設定した文字サイズベタ組にしない箇所がある場合,行長が揃わない場合が発生する.段落の最終行を除き,行長を揃える処理が必要になる.この処理方法については,“2.8 行の調整処理”で解説する.

  1. 行中の一部として基本版面で設定した9ポより小さい文字が挿入される[図38]の場合である.この場合は,基本版面で設定した9ポの部分は9ポの仮想ボディに従いベタ組にするとともに,小さくした8ポの部分は,小さくした8ポの仮想ボディに従いベタ組にする.

  2. 行中にプロポーショナルの欧字を図1-20のように,文字を時計回りに90度回転して配置する場合は,プロポーショナルの欧字は,その字幅に応じて配置するので,基本版面で設定した文字位置とは揃わなくなる([図42]参照).英字の後ろに連続する和文の配置位置もずれてくる.

    行中に欧字を配置した例

    図42]: 行中に欧字を配置した例

  3. 改行した行の先頭(改行行頭)や段落の2行目以下の行頭(折り返し行頭)に配置する始め括弧類(cl-01)の配置方法には,いくつかある(詳細は“2.1.5 行頭の括弧類の配置方法”で解説する).改行行頭字下げ全角とする場合,又は折り返し行頭行頭アキをとらない配置法である天付きとする場合は,[図43]のように2字目以下の文字は,基本版面で設定した文字位置とは揃わなくなる.しかし,行長を揃える調整処理を行っているので,行末の文字は,基本版面で設定した文字位置に揃っている.

    行頭の括弧類の配置方法により文字位置がずれた例

    図43]: 行頭の括弧類の配置方法により文字位置がずれた例

  4. [sec. 3]で解説するように句点類(cl-06)読点類(cl-07)始め括弧類(cl-01)終わり括弧類(cl-02)字幅は,半角であるが,これらの約物漢字等(cl-19)片仮名(cl-16)平仮名(cl-15)と連続する場合は,原則として,それぞれの約物の前及び/又は後ろに二分アキをとることで,結果として全角というサイズにする.しかし,句読点や括弧類が連続する場合は,二分アキをとらない箇所があり,このケースでは基本版面で設定した文字位置に揃わないことになる([図44]参照).これは,見た目の体裁をよくするためである.

    追1-15 句読点や括弧類が連続する例

    図44]: 句読点や括弧類が連続する例

  5. [sec. 3]で解説するように終わり括弧類(cl-02)句点類(cl-06)読点類(cl-07)行頭に配置してはならないという規則(行頭禁則という)がある.これらが行頭にくる場合は,なんらかの調整が必要になる.その調整処理のために基本版面で設定した文字位置に揃わない場合がでてくる.

    行頭にきてはならない終わり括弧類を避ける調整をした例

    図45]: 行頭にきてはならない終わり括弧類を避ける調整をした例

2.6  柱とノンブル

2.6.1  柱及びノンブルの位置

及びノンブル縦組における代表的な配置位置例を[図46]に示す.

縦組における柱及びノンブルの代表的な配置位置例

図46]: 縦組における柱及びノンブルの代表的な配置位置例

及びノンブル横組における代表的な配置位置例を[図47]に示す.

横組における柱及びノンブルの代表的な配置位置例

図47]: 横組における柱及びノンブルの代表的な配置位置例

及びノンブルの位置は,仕上りサイズに対する絶対的な位置関係ではなく,基本版面との相対的な位置関係で一般に設定する(の配置については,JIS X 4051の7.6.4に,ノンブルの配置については,JIS X 4051の7.5.4に規定がある).

例)小口寄りに縦組を配置した場合の例([図48]参照)

基本版面との上下方向の空きは9ポイント(9ポ)

基本版面との左右方向の空き(入りともいう)は9ポイント(9ポ)

柱の配置指定例(縦組)

図48]: 柱の配置指定例(縦組)

及びノンブル基本版面との位置関係では,次のような点に注意する.

  1. 縦組においてノンブル及び横組にして配置する場合は,基本版面との上下方向の最低の空き量は,基本版面文字サイズ全角アキとする。横組の場合は,同じ組方向となるので,基本版面文字サイズよりやや大きくする.

  2. 縦組及び横組において,ノンブル及び横組にして配置する場合は,左ページでは,基本版面の左端の延長線にノンブル又はの先頭をそろえて配置するか,基本版面の左端の延長線から基本版面文字サイズ全角アキだけ右に寄せた位置に配置する.右ページでは,基本版面の右端の延長線にノンブル又はの末尾をそろえて配置するか,基本版面の右端の延長線から基本版面文字サイズ全角アキだけ左に寄せた位置にノンブル又はの末尾をそろえて配置する.

  3. 横組にしてノンブル及びを同一位置に並べて配置する場合は,ノンブルとの空き量をに使用する文字サイズの2倍アキ又は1.5倍アキとする.

  4. 縦組において,ノンブル及び小口側に縦組にして配置する場合([図46]の3段目左端の例参照)は,基本版面との左右方向の最低の空き量は,基本版面行間とする.から基本版面文字サイズで4倍くらい下げた位置にを配置し,から基本版面文字サイズで5倍くらい上げた位置にノンブルを配置する.

    注1)

    ノンブル縦組で掲げる場合は,一般に漢数字を用い,横組で掲げる場合は,一般にアラビア数字を用いる.また,前付の部分を別ノンブルにした場合は,横組で掲げるノンブルは,一般にローマ数字の小文字を用いる.

2.6.2  柱及びノンブルの配置の原則

及びノンブルは,1冊の本の中では,同じ位置に配置する.

注1)

目次索引などの文字を配置する領域が,基本版面のサイズより小さくなる場合,仕上りサイズに対する及びノンブルの位置は同じである.したがって,目次索引などの文字を配置する領域が基本版面のサイズより小さくなった分だけ,目次索引などの文字を配置する領域と及びノンブルとの空き量は変化する.次に示す[図49]は,[図6]で示した基本版面より小さくした目次の版面と及びノンブルの位置関係を示したものであり,[図50]は,基本版面より左右方向で各4ポイント小さくしただけでなく,上下方向でも各5ポイント小さくした索引の版面との位置関係を示したものである.

追1-17 基本版面より小さくなった目次の版面と柱及びノンブルとの位置関係

図49]: 基本版面より小さくなった目次の版面と柱及びノンブルとの位置関係

基本版面より小さくなった索引の版面と柱との位置関係

図50]: 基本版面より小さくなった索引の版面と柱との位置関係

ノンブルは,紙葉の表面を“1”として開始するので,縦組見開きにおいては,右ページは偶数ページ,左ページは奇数ページとなり([図51]参照),横組見開きにおいては,左ページは偶数ページ,右ページは奇数ページとなる([図52]参照).

縦組見開きのノンブル

図51]: 縦組見開きのノンブル

横組見開きのノンブル

図52]: 横組見開きのノンブル

2.6.3  柱及びノンブルの配置方式

には,両柱方式([図53]参照)と片柱方式([図54]参照)とがある(の掲げ方についてはJIS X 4051の7.6.2に,ノンブルの掲げ方については,7.5.2に規定がある).

  • 両柱方式:柱を偶数ページおよび奇数ページの両方に配置する方式(図1-34参照)。

  • 片柱方式:柱を奇数ページのみに配置する方式(図1-35参照)。

両柱方式の例

図53]: 両柱方式の例

片柱方式の例

図54]: 片柱方式の例

注1)

は,原則としてページに1つだけ配置するが,辞典などでは,1ページに内容を示すを複数配置する場合もある.

注2)

ノンブルも原則としてページに1つだけ配置するが,次のようなケースでは複数を配置する場合もある.

  1. 縦組の巻末に横組にした索引参考文献などを配置する場合,逆ノンブル通しノンブルを表示する.

  2. 多巻物で,1冊のページ数の他に,全巻を通した通しノンブルを表示する.

  1. 両柱方式では,偶数ページにレベルの高い見出し又は書名を掲げ,奇数ページには,偶数ページに掲げた書名又は見出しより1ランク下の見出しを掲げる.ただし,目次など下位レベルの見出しのない部分では,偶数ページと奇数ページに同じを掲げる.

    注1)

    に何を掲げるかは,その本の内容による.読者が各ページに何が書かれているかを検索する,または現在説明されている内容を確認することが主な目的である.その点では書名を掲げるのはあまり意味があることではない.3つのランクの見出しがあった場合は,最も大きな見出しと,その次にランクする見出しを掲げるというのが,最も普通な方法であろう.

  2. 片柱方式では,いずれかのレベルの見出しを掲げる.

  3. は,原則として見出しと同じ内容を掲げるが,次のような例外がある.

    1. 縦組見出し横組にして掲げる場合,数字表記などを横組の表記法に変更する.

    2. 見出しの字数が多い場合,文章を修正し,字数を少なくする.あまり字数の多いを掲げるのは体裁がよくないからである.

    3. 論文集などでは,著者名を見出しの後ろに括弧類などで括って示す.

  4. 及びノンブルの組方向は,原則として基本版面の組方向と同じにするが,縦組におけるノンブルの組方向は,横組とする場合が多い.

  5. は,原則として片柱方式の場合は全ての奇数ページ両柱方式の場合は全ページに掲げるが,次のようなページでは表示しない.これは体裁の問題からである.

    1. を表示しないページ

      1. 中扉及び半扉

      2. の配置領域が,図版などと重なったページ

      3. ページ

    2. を表示しなくてもよいページ

      1. の配置領域に隣接して図版などが配置されているページ

      2. 改丁改ページ等で始まる見出しが掲げられているページ

  6. ノンブルは,原則として全ページに掲げるが,次のようなページでは表示しない.これは体裁の問題からである.

    1. ノンブルを表示しないページ

      1. ノンブルの配置領域が,図版などと重なったページ

      2. ページ

    2. ノンブルを表示しなくてもよいページ

      1. 中扉及び半扉

      2. 横書きにおいてノンブル側の余白に配置した場合で,改丁改ページ等で見出しが始まるページ(この場合,ノンブルの中央に移動して表示する方法もある)

    注1)

    ページはあるが,そのページを数えない場合には,次のような例がある.

    1. 本扉を別紙とした場合

    2. 巻頭に別紙で口絵を挿入した場合

    3. 別紙の挿絵や中扉本文中に挿入した場合

  7. ノンブルは,1冊の本を通して数字を連続させる方法(通しノンブルという)と,前付や後付部分を別に1から数字を開始してノンブルを付ける方法がある(別ノンブルという).また,マニュアル等では,章別に1から数字を開始する方法もある(この場合は,1から開始した数字の前に章名を示す接頭辞を付けることが多い).

    注1)

    前付本文別ノンブルとする場合は,それぞれを1から数字を開始してノンブルを付ける.この場合,前付部分は,本文と区別するためにローマ数字の小文字を使用する例が多い.

    注2)

    縦組の書籍で横組索引を付けた場合は,次のような方法がある.

    1. 本の終りから開始する横組索引に,本の流れからいえば逆方向から1から数字を開始してノンブルを付ける(逆ノンブルという).

    2. 本の終りから開始する横組索引に,本の流れ方向に従い1から数字を開始してノンブルを付ける(索引の流れからは逆になる,通しノンブルという).

    3. 逆ノンブル通しノンブルの両方を付ける.この場合は,通しノンブルの配置位置は本文と同じにし,逆ノンブルの位置は別の箇所にし(例えば,通しノンブルのときは逆ノンブル),本文と同じアラビア数字を用いるが,その前後に括弧を付けるなどして区別を付ける方法がよく利用されている.

3  行の組版処理

3.1  約物などの組版処理

3.1.1  縦組と横組で異なる約物など

縦組横組で異なる約物などを使用する例がある.主な例を次に示す. (なお,以下のドキュメントでは,約物を含む文字・記号について,その組み版上のふるまいで分類し,文字クラスとしてグループに分けて扱う.用語の後ろの括弧内に“(cl-01)”などと示すものは,その文字クラスの番号である.文字クラスの詳細は“2.9 文字クラスについて”で解説する.)

  1. 句点類(cl-06)読点類(cl-07)

    1. 縦組句点類(cl-06)には,[。] (IDEOGRAPHIC FULL STOP)を,読点類(cl-07)には[、] (IDEOGRAPHIC COMMA)を使用する.

    2. 横組句点類(cl-06)読点類(cl-07)には,次の3つの方式がある.

      1. コンマ(,)とピリオド(.)[,] (COMMA)と[[.] (FULL STOP)を使用する(図2-1参照).

        コンマとピリオドを使用した例

        図55]: コンマ[,] (COMMA)とピリオド[.] (FULL STOP)を使用した例

      2. コンマ[,] (COMMA)(,)と句点[。] (IDEOGRAPHIC FULL STOP)を使用する(図2-2参照).

        コンマと句点を使用した例

        図56]: コンマ[,] (COMMA)と句点[。] (IDEOGRAPHIC FULL STOP)を使用した例

      3. [、] (IDEOGRAPHIC COMMA)読点と句点[。] (IDEOGRAPHIC FULL STOP)を使用する(図2-3参照).

        読点と句点を使用した例

        図57]: 読点[、] (IDEOGRAPHIC COMMA)と句点[。] (IDEOGRAPHIC FULL STOP)を使用した例

      注1)

      横組の場合,欧文が混用される場合も多い.そこで,欧文の句読点であるコンマ[,] (COMMA)とピリオド[.] (FULL STOP)と揃えるとしたのが1の方式である.理工学書でよく利用されている方式である.2は,1のピリオド[.] (FULL STOP)が和文とのバランスが悪く,小さいということから句点[。] (IDEOGRAPHIC FULL STOP)に変えた方法であり,日本の公用文で採用されている方式である(かつては公用文でもコンマ[,] (COMMA)とピリオド[.] (FULL STOP)を使用したこともある).

  2. かぎ括弧[「] (LEFT CORNER BRACKET)[」] (RIGHT CORNER BRACKET)とコーテーションマーク[“] (LEFT DOUBLE QUOTATION MARK)[”] (RIGHT DOUBLE QUOTATION MARK)

    1. 縦組では,かぎ括弧[「] (LEFT CORNER BRACKET)[」] (RIGHT CORNER BRACKET)を用いる(図2-4参照).

      かぎ括弧を使用した例

      図58]: かぎ括弧[「] (LEFT CORNER BRACKET)[」] (RIGHT CORNER BRACKET)を使用した例

    2. 横組では,かぎ括弧[「] (LEFT CORNER BRACKET)[」] (RIGHT CORNER BRACKET)に替えてコーテーションマーク[“] (LEFT DOUBLE QUOTATION MARK)[”] (RIGHT DOUBLE QUOTATION MARK)[‘] (LEFT SINGLE QUOTATION MARK)[’] (RIGHT SINGLE QUOTATION MARK)を用いる方法がある(図2-5参照).

      ダブルコーテーションマークを使用した例

      図59]: ダブルコーテーションマーク[“] (LEFT DOUBLE QUOTATION MARK)[”] (RIGHT DOUBLE QUOTATION MARK)を使用した例

      注1)

      かぎ括弧[「] (LEFT CORNER BRACKET)[」] (RIGHT CORNER BRACKET)横組で用いると,特に終わりかぎ括弧[」] (RIGHT CORNER BRACKET)の体裁がよくないからであるが,最近は,かぎ括弧の使用が増えているようである.

      注2)

      ダブルコーテーションマークに似た括弧類にダブルミニュート[〟] (LOW DOUBLE PRIME QUOTATION MARK)[〝] (REVERSED DOUBLE PRIME QUOTATION MARK)がある(図2-6参照).これは,縦組専用の括弧類であり,横組では使用しない.

      ダブルミニュートを使用した例

      図60]: ダブルミニュート[〟] (LOW DOUBLE PRIME QUOTATION MARK),[〝] (REVERSED DOUBLE PRIME QUOTATION MARK)を使用した例

      注3)

      [“] (LEFT DOUBLE QUOTATION MARK)及び[”] (RIGHT DOUBLE QUOTATION MARK)は,横組専用の括弧類であり,縦組では使用しない.また,[‘] (LEFT SINGLE QUOTATION MARK)及び[’] (RIGHT SINGLE QUOTATION MARK)横組専用の括弧類であり,縦組では使用しない.ただし,縦組において欧文用文字(cl-27)などを時計回りに90度回転させて配置する場合に使用する例がある.

  3. ブラケット[[] (LEFT SQUARE BRACKET)[]] (RIGHT SQUARE BRACKET)とキッコウ[〔] (LEFT TORTOISE SHELL BRACKET)[〕] (RIGHT TORTOISE SHELL BRACKET)

    ブラケット([ ])を縦組用に変形したものがキッコウ(〔 〕)である.したがって,特別な場合を除き,横組ではブラケットを使用する.

注1)

句点類(cl-06)及び読点類(cl-07)は,縦組用と横組用では,仮想ボディに対する字面の配置位置が異なる.始め括弧類(cl-01)終わり括弧類(cl-02)ハイフン類(cl-03)は,縦組用と横組用で字面の向きを変更する.その他,小書きの仮名(cl-11)は,前述したように仮想ボディに対する字面の位置が縦組用と横組用では異なる.また,[ー] (KATAKANA-HIRAGANA PROLONGED SOUND MARK)長音記号は,字形の向きを変更するだけではなく,字形そのものも変更している.横組用の長音記号は,縦組用の長音記号を単純に反時計回りに90度回転したものではない(図2-7参照).

横組用の長音記号と縦組用の長音記号

図61]: 横組用の長音記号[ー] (KATAKANA-HIRAGANA PROLONGED SOUND MARK)と縦組用の長音記号

3.1.2  句読点や括弧類などの基本的な配置方法

約物などを行に配置する場合の基本的な配置は,次のようにする.

注1)

約物を含め,その他の文字・記号を行頭及び行末に配置する方法,並びに隣接する文字の間隔の処理方法についての詳細は,“2.9 文字クラスについて”で説明する文字クラスに従い,表の形式にしてAppendix〓に示す.

読点類(cl-07)句点類(cl-06)始め括弧類(cl-01)終わり括弧類(cl-02)及び中点類(cl-05)字幅は,半角であるが,これらの約物漢字等(cl-19)平仮名(cl-15)又は片仮名(cl-16)と連続する場合は,原則として,それぞれの約物の前/又は後ろ(中点類(cl-05)は,その前及び後ろ)に一定のアキをとることで,結果として全角というサイズになる(図2-8参照).漢字及び仮名の全角というサイズと揃えるとともに,これらの約物の前及び/又は後ろにアキをとることにより,文章の区切りを示すためである.この原則としたアキは,句点類の後ろは除外して行の調整処理の対象とし,結果的に0となることもある.

  1. 読点類(cl-07)では,原則として後ろを二分アキにする.

  2. 句点類(cl-06)では,後ろを二分アキにする.

  3. 始め括弧類(cl-01)では,前を二分アキにする.

  4. 終わり括弧類(cl-02)では,後ろを二分アキにする.

  5. 中点類(cl-05)では,前及び後ろを四分アキにする.

句読点などの字幅と前後のアキ1句読点などの字幅と前後のアキ2

図62]: 句読点などの字幅と前後のアキ

注1)

各フォントがもっている約物がどのような字幅を持っているかは問題としない.結果として,ここで説明した配置方法になればよい.活字組版においても,二分のアキを調整するために,半角のボディ+二分のスペースという方法が一般的であった.そのために原稿に従って活字を集める作業である文選では句読点や括弧類は拾わず,ページの体裁にする植字の際に約物を拾っていた.その後,モノタイプの利用が進み,全角サイズのボディの約物も利用されるようになり,全角半角約物が混用されてきた.

注2)

始め括弧類(cl-01)終わり括弧類(cl-02)のうち,パーレン[(] (LEFT PARENTHESIS)[)] (RIGHT PARENTHESIS)及び山括弧[〈] (LEFT ANGLE BRACKET)[〉] (LEFT ANGLE BRACKET)は,補足説明等に利用され,他の始め括弧類(cl-01)終わり括弧類(cl-02)と扱いがやや異なる.このようなことから,パーレン及び山括弧については,その前後の二分アキを確保しないで,ベタ組とする方針で処理する方法もある(図2-9参照).

パーレンと山括弧の配置例

図63]: パーレン[(] (LEFT PARENTHESIS), [)] (RIGHT PARENTHESIS)と山括弧[〈] (LEFT ANGLE BRACKET), [〉] (RIGHT ANGLE BRACKET)の配置例(左がベタ組とした例)

3.1.3  読点[、] (IDEOGRAPHIC COMMA)及び中点[・] (KATAKANA MIDDLE DOT)の例外的な配置方法

次のような場合は,読点[、] (IDEOGRAPHIC COMMA)の後ろ及び中点[・] (KATAKANA MIDDLE DOT)の前後のアキをとらないことを原則とする.これは体裁上からの処理である.

  1. 縦組において漢数字の位取りを示す読点[、] (IDEOGRAPHIC COMMA)の後ろはベタ組にする(図2-10の右側).

    読点の例外の配置例

    図64]: 読点の例外の配置例

    注1)

    縦組において漢数字で概略の数を示す場合も,体裁の面から読点[、] (IDEOGRAPHIC COMMA)の後ろはベタ組にすることが望ましい(図2-10の右側).

    漢数字で概略の数を示す読点の配置例

    図65]: 漢数字で概略の数を示す読点[、] (IDEOGRAPHIC COMMA)の配置例

  2. 漢数字の小数点を示す中点[・] (KATAKANA MIDDLE DOT)の前後はベタ組にする(図2-11の右側).

    中点の例外の配置例

    図66]: 中点[・] (KATAKANA MIDDLE DOT)の例外の配置例

3.1.4 始め括弧類(cl-01)、終わり括弧類(cl-02)、読点類(cl-07)、句点類(cl-06)が連続する場合の配置方法

始め括弧類(cl-01)終わり括弧類(cl-02)読点類(cl-07)句点類(cl-06)中点類(cl-05)が連続する場合は,次のようにする(図2-13参照).これは体裁上からの処理である.なお,原則として二分アキ又は四分アキとする箇所は,句点類(cl-06)の後ろの二分アキを除外して,行の調整処理の詰める場合の対象にしてよい.

  1. 読点類(cl-07)又は句点類(cl-06)の後ろに終わり括弧類(cl-02)が連続する場合は,読点類(cl-07)又は句点類(cl-06)と終わり括弧類の字間ベタ組とし,終わり括弧類の後ろを原則として二分アキとする(図2-13の①参照).

  2. 終わり括弧類(cl-02)の後ろに読点類(cl-07)が連続する場合は,終わり括弧類と読点類の字間ベタ組とし,読点類の後ろを原則として二分アキとする.また,終わり括弧類(cl-02)の後ろに句点類(cl-06)が連続する場合は,終わり括弧類と句点類の字間はベタ組みとし,句点類の後ろを二分アキとする(図2-13の②参照).

  3. 読点類(cl-07)の後ろに始め括弧類(cl-01)が連続する場合は,読点類と始め括弧類の字間は,原則として二分アキとする(図2-13の③参照).また,句点類(cl-06)の後ろに始め括弧類(cl-01)が連続する場合は,句点類と初め括弧類の字間は,二分アキとする.

  4. 終わり括弧類(cl-02)の後ろに始め括弧類(cl-01)が連続する場合は,終わり括弧類と始め括弧類の字間は,原則として二分アキとする(図2-13の④参照).

  5. 始め括弧類(cl-01)の後ろに始め括弧類(cl-01)が連続する場合は,その字間ベタ組とし,前にくる始め括弧類の前を原則として二分アキとする(図2-13の⑤参照).

  6. 終わり括弧類(cl-02)の後ろに終わり括弧類(cl-02)が連続する場合は,その字間ベタ組とし,後ろにくる終わり括弧類の後ろを原則として二分アキとする(図2-13の⑥参照).

  7. 終わり括弧類(cl-02)の後ろに中点類(cl-05)が連続する場合は,後ろの中点類の前を原則として四分アキとする(図2-13の⑦参照).

  8. 中点類(cl-05)の後ろに始め括弧類(cl-01)が連続する場合は,前の中点類の後ろを原則として四分アキとする(図2-13の⑦参照).

括弧類や句読点などが連続する場合の配置例

図67]: 始め括弧類(cl-01),終わり括弧類(cl-02),読点類(cl-07),句点類(cl-06),中点類(cl-05)が連続する場合の配置例

それぞれの後ろ又は前を二分アキ,又は前後を四分アキにし,全角の幅にするとアキが目立ち,体裁がよくないからである(図2-14参照).

括弧類や句読点などが連続する場合の不適切な配置例

図68]: 始め括弧類(cl-01),終わり括弧類(cl-02),読点類(cl-07),句点類(cl-06),中点類(cl-05)が連続する場合の不適切な配置例

注1)

日本語組版では,全角を基本とするが,その原則通りにすると体裁がよくない場合がでてくる.このような例外的な場合は,原則である全角にするのではなく,体裁を優先し,全角としない例外処理を行う.この例外処理をどのような箇所で,どのように行うかが組版の品質にからんでくる.いかに矛盾を解決するか,という問題でもある.

3.1.5  行頭の始め括弧類(cl-01)の配置方法

行頭に配置する始め括弧類(cl-01)の配置方法には,図2-15のような方式がある.なお,改行行頭段落における第1行目の行頭)の字下げ全角とする場合である.

  1. 改行行頭字下げ全角,折り返し行頭行頭アキをとらない配置法であるツキとする(図2-15の①参照).

  2. 改行行頭字下げ全角半(全角の1.5倍),折り返し行頭字下げは二分とする(図2-15の②参照).

  3. 改行行頭字下げは二分,折り返し行頭ツキとする(図2-15の③参照).

行頭に配置する括弧類の配置例

図69]: 行頭に配置する始め括弧類(cl-01)の配置例

注1)

元々括弧類の字幅半角であったのであるから,何もスペースを入れなければ図2-15の①の方法となる.これに対し,②の方法は,行頭の括弧類の字幅についてアキを含めて全角とする処理方法である.JIS X 4051では,①の方法を採用している(ただし,オプションで①又は③の方法も選択できる).③の方法は,小説などで会話が多い場合,改行行頭の括弧の字下げ全角又は全角半(全角の1.5倍)とすると下がりすぎになることから考えられた方法である(これが一般書にも採用されるようになっている).講談社,新潮社,文藝春秋,中央公論新社,筑摩書房など文芸関係の出版社では,③の方法が採用されている.岩波書店やその他の出版社では①の方法を採用している.以前の岩波書店の縦組では②の方法であり,この方法を採用している例はかなりあった.しかし,今日では②の方法を採用している例は少なくなった.

注2)

段落の最初の行頭字下げは,全角とするのが原則である.ただし,次のような問題点がある.

  1. 全ての段落の最初の行頭字下げ全角とする.これが一般的な方式である.なお,段落の最初の行頭字下げ全角とする場合でも,図2-16に示すように,文節が連続しているときは,ツキとする(小説などでは字下げ全角とする方式も採用されている).横組で別行とする数式を“であるから”などで受ける段落ツキとする.

    別行の括弧書き(会話など)の次にくる行頭の配置例

    図70]: 別行の括弧書き(会話など)の次にくる行頭の配置例

  2. 見出しの字下げを“0”とした場合,体裁を考慮して,その直後の段落における最初の行頭に限り天ツキとする方法もある.なお,全ての段落における最初の行頭を天ツキとすると,段落の区切りがあいまいになり望ましくない.

3.1.6  区切り約物(cl-04)とハイフン類(cl-03)の配置方法

区切り約物(cl-04)[?] (QUESTION MARK)[!] (EXCLAMATION MARK))の字幅は,全角とし,次のように配置する.

  1. 文末にくる区切り約物(cl-04)の前はベタ組とし,その後ろは全角アキとする(図2-17参照).ただし,区切り約物の後ろに終わり括弧類(cl-02)がくる場合は,この字間ベタ組とし,終わり括弧類の後ろを二分アキにする(図2-17参照).

    区切り約物の配置例(縦組の場合)

    図71]: 区切り約物(cl-04)の配置例(縦組の場合)

    注1)

    区切り約物(cl-04)の後ろの全角アキは,通常,全角和字間隔(cl-14)を用いて空けている.

    注2)

    文末に区切り約物(cl-04)が付いた場合は,句点類(cl-06)は付けない.

    注3)

    文末ではなく,文中で区切り約物(cl-04)がつく場合がある.この場合は,区切り約物の前後をベタ組にするか,その前後を四分アキにする(図2-18参照).

    文中の区切り約物の配置例(縦組の場合)

    図72]: 文中の区切り約物(cl-04)の配置例(縦組の場合)

    注4)

    区切り約物(cl-04)ハイフン類(cl-03)の配置方法についての詳細は,“2.9 文字クラスについて”で説明する文字クラスに従い,表の形式にしてAppendix〓で示す.

  2. 文末に付く区切り約物(cl-04)行末にくる場合は,次のようにする(図2-20参照).

    行末の区切り約物の配置例(縦組の場合)

    図73]: 行末の区切り約物(cl-04)の配置例(縦組の場合)

    1. 行長がそこに使用されている文字サイズの13倍とする.この場合,12倍の位置にきたときは区切り約物(cl-04)の後ろを全角アキとする.

    2. 行長がそこに使用されている文字サイズの13倍とする.この場合,13倍の位置にくるときは区切り約物(cl-04)の後ろをベタ組とする.さらに,次の行頭の下がりは全角アキとしないで,ツキとする.

ハイフン類(cl-03)[‐] (HYPHEN)字幅四分角[–] (EN DASH)及び[゠] (KATAKANA-HIRAGANA DOUBLE HYPHEN)字幅半角[〜] (WAVE DASH)字幅全角とし,ハイフン類(cl-03)の前後はベタ組とする.ただし,ハイフン類(cl-03)の後ろに始め括弧類(cl-01)がくる場合は原則として二分アキ中点類(cl-05)がくる場合は原則として四分アキとする.

3.1.7  行頭禁則

終わり括弧類(cl-02)ハイフン類(cl-03)区切り約物(cl-04)中点類(cl-05)句点類(cl-06)読点類(cl-07)繰り返し記号(cl-09)長音記号(cl-10)小書きの仮名(cl-11)及び割注終わり括弧類(cl-29)行頭に配置してはならない.これは体裁がよくないからである.

注1)

繰り返し記号(cl-09)[々] (IDEOGRAPHIC ITERATION MARK)長音記号(cl-10)小書きの仮名(cl-11)行頭禁則としない方法もあり,この方法を採用している書籍も多い.また,繰り返し記号[々] (IDEOGRAPHIC ITERATION MARK)が行頭に配置された場合,元の漢字に置き換える方法もある.たとえば,“家(行末)+々(行頭)”となった場合,“家(行末)+家(行頭)”とする方法である.

注2)

[・] (KATAKANA MIDDLE DOT)行頭に配置することを許容とする考え方もある.

注3)

新聞では,区切り約物(cl-04)[?] (QUESTION MARK)[!] (EXCLAMATION MARK))を行頭に配置することを許容している.これは1行の字詰め数が少ないことによる.字詰め数が少ないと,詰めて調整する場合も,空けて調整する場合も,少ない箇所で調整を行い,字間の調整が極端になる.これを避けるために行頭禁則の条件をゆるやかにしたものと思われる.

注4)

行頭禁則及び次項で解説する行末禁則の詳細は,“2.9 文字クラスについて”で説明する文字クラスに従い,表の形式にしてAppendix〓で示す.

3.1.8  行末禁則

始め括弧類(cl-01)及び割注始め括弧類(cl-28)行末に配置してはならない(行末禁則).これは体裁がよくないからである.

注1)

行頭禁則,行末禁則,分離(分割)禁止などの禁則を避けるために行われる処理のことを禁則処理という.

3.1.9  行末に配置する終わり括弧類(cl-02),句点類(cl-06),読点類(cl-07),<a class="characterClass" href="#cl-05-ja">中点類(cl-05)</a>の配置方法

行末に配置する終わり括弧類(cl-02)句点類(cl-06)又は読点類(cl-07)は,原則としてその後ろに二分アキを確保する(図2-21参照).また,中点[・] (KATAKANA MIDDLE DOT)も原則として,その前を四分アキ,後ろを四分アキとし,全角の扱いとする(図2-21参照).原則として二分アキ又は四分アキとする箇所は,行の調整処理の詰める場合の対象にしてよい.

行末に配置する括弧類や句読点を全角扱いとする配置例

図74]: 行末に配置する終わり括弧類(cl-02),句点類(cl-06),読点類(cl-07),中点[・] (KATAKANA MIDDLE DOT)を全角扱いとする配置例

注1)

JIS X 4051では,次のように扱っている.

句点類(cl-06)

句点類(cl-06)の後ろは,必ず二分アキを確保する.

読点類(cl-07)

読点類(cl-07)の後ろは,ベタ組にする(図2-23参照).

終わり括弧類(cl-02)

終わり括弧類(cl-02)の後ろは,ベタ組にする(図2-23参照).

注2)

活字組版時代は,次の考え方が主流であった(図2-22参照).

  1. 句点類(cl-06)読点類(cl-07)及び終わり括弧類(cl-02)では,二分アキが確保できれば,確保する.つまり,二分アキが原則である.

  2. 行長に過不足が発生し,調整の必要がある場合(後述),優先的にこれらの後ろの二分アキベタ組にする.これは,行末でもあり,これらの後ろのアキベタ組になってもほとんど問題にならないからである.なお,この二分アキを中間的な四分アキにするという方法は採用されていなかった.二分アキ又はベタ組のいずれかを選択する,ということである.

行末に配置する括弧類や句読点を二分アキ又はベタ組とした配置例

図75]: 行末に配置する終わり括弧類(cl-02)や読点類(cl-07),句点類(cl-06)の後ろを二分アキ又はベタ組とした配置例

注3)

DTPなどでは,行末に配置する句点類(cl-06)読点類(cl-07)及び終わり括弧類(cl-02)のすべての後ろをベタ組とする処理法も行われている(図2-23参照).

行末に配置する括弧類や句読点の後ろをすべてベタ組とした配置例

図76]: 行末に配置する終わり括弧類(cl-02),句点類(cl-06),読点類(cl-07) の後ろを全てベタ組とした配置例

3.1.10 分割禁止

次のような文字・記号が連続する場合は,その字間で2行に分割しない(分割禁止).これは,それらの文字・記号を一体として扱いたいためである.

注1)

行頭禁則又は行末禁則も,前の文字・記号と行頭禁則文字との字間で2行に分割しない(分割禁止),行末禁則文字と次にくる文字・記号との字間で2行に分割しない(分割禁止),と考えることができる.

注2)

2行に分割してはいけない箇所の詳細は,“2.9 文字クラスについて”で説明する文字クラスに従い,表の形式にしてAppendix〓で示す.

  1. 連続する全角ダッシュ[—] (EM DASH)全角ダッシュ[—] (EM DASH)との間(具体的には2倍ダッシュ,――)(図2-24参照).

    全角ダッシュと全角ダッシュとの間は分割禁止

    図77]: 全角ダッシュ[—] (EM DASH)と全角ダッシュ[—] (EM DASH)との間は分割禁止

    注1)

    全角ダッシュ[—] (EM DASH)の前後にくる他の文字との字間ベタ組にする.ただし,全角ダッシュ<span class="character">[—] (EM DASH)</span>の前後に次の文字が配置される場合は,アキを確保する.後述する<span class="character">[…] (HORIZONTAL ELLIPSIS)</span>,<span class="character">[‥] (TWO DOT LEADER)</span>,<a class="characterClass" href="#cl-12-ja">前置省略記号(cl-12)</a>,又は<a class="characterClass" href="#cl-13-ja">後置省略記号(cl-13)</a>と,その前後に位置した文字との字間も,全角ダッシュ<span class="character">[—] (EM DASH)</span>の場合と同様である.

    1. 全角ダッシュ[—] (EM DASH)の前に終わり括弧類(cl-02)又は読点類(cl-07)がくる場合は,それらの字間は原則として二分アキとし,句点類(cl-06)がくる場合は,その字間は二分アキとする.

    2. 全角ダッシュ[—] (EM DASH)の後ろに始め括弧類(cl-01)がくる場合は,その字間は原則として二分アキとする.

    3. 全角ダッシュ[—] (EM DASH)の前又は後ろに中点類(cl-05)がくる場合は,その字間は原則として四分アキとする.

    注2)

    2倍ダッシュは,それを一体にして扱うということから分割禁止としていた.また,活字組版において2倍ダッシュは,2倍角のボディで作成されており,分割できないということから,その禁止の度合いが高かった.しかし,どうしても止むを得ないという場合は,全角ダッシュにして,2行に分割することも許容されていた.

  2. 連続する3点リーダ[…] (HORIZONTAL ELLIPSIS)又は2点リーダ[‥] (TWO DOT LEADER)字間(具体的には2倍3点リーダ[……] 又は2倍2点リーダ[‥‥]).

    全角ダッシュと全角ダッシュとの間は分割禁止

    図78]: 3点リーダ[…] (HORIZONTAL ELLIPSIS)と3点リーダ[…] (HORIZONTAL ELLIPSIS)との間は分割禁止

    注1)

    活字組版において2倍3点リーダなどは,全角の3点リーダを並べていたので,その禁止の度合いは,2倍ダッシュより幾分かは低かった.

  3. 前置省略記号(cl-12)[¥] (YEN SIGN)[$] (DOLLAR SIGN)[¢] (CENT SIGN)¢など)とその後ろにくるアラビア数字漢数字との間(図2-26参照).それらの文字列を一体として扱いたいためである.

    前置省略記号とアラビア数字の間は分割禁止

    図79]: 前置省略記号(cl-12)とアラビア数字の間は分割禁止

  4. 後置省略記号(cl-13)[%] (PERCENT SIGN)[‰] (PER MILLE SIGN)など)とその前にくるアラビア数字漢数字との間(図2-27参照).それらの文字列を一体として扱いたいためである.

    アラビア数字と後置省略記号の間は分割禁止

    図80]: アラビア数字と後置省略記号(cl-13)の間は分割禁止

    注1)

    パーセント記号[%] (PERCENT SIGN)については,その前にくるアラビア数字漢数字との間で分割を認める考え方もある.パーセント記号[%] (PERCENT SIGN)が記号として独立性が高いということからであろう.なお,“50パーセント”とした場合は,“0”と“パ”の間では,分割可である.

  5. 連続するアラビア数字字間図2-26,図2-27,図2-28参照).アラビア数字は,位置で桁を示すことによる.

    注1)

    連続する漢数字字間では分割可である(位取りを示す読点,概数を示す読点,小数点を示す中点の後ろでも分割は可である).漢数字は,“二百三十五”のように単位語を入れて表記するのが本来的な使い方であり,その位置で位を示す必要がないからである.これに対し,アラビア数字は,その数字の位置で位を示す必要があるので,原則として分割は不可である.なお,縦組アラビア数字を正しい向きで1字1字並べた場合は,アラビア数字漢数字的な使い方ということで,このアラビア数字字間でも分割可である.

    注2)

    アラビア数字の表記では,小数点に[.] (FULL STOP),位取りに[,] (COMMA)又は空白を使用する.これらも含めて分割禁止である,(図2-28参照,図2-28の“4”の前の空白は,位取りを示す空白である).

  6. 欧文用文字(cl-27)の単語のハイフネーション可能な箇所以外の字間及び単位記号(km, kg, mmなど)の字間図2-28参照).

    欧字の単位記号の字間は分割禁止

    図81]: 欧字の単位記号(単位記号中の文字(cl-25))の字間は分割禁止

    注1)

    欧文用文字(cl-27)の単語は,文節に従い,行末にハイフン[‐] (HYPHEN)を付けることで,分割が可能になる.

    注2)

    このドキュメントでは,プロポーショナルな欧字を用いたkm,kgなどの単位記号の文字クラスは,単位記号中の文字(cl-25)として扱う.

    注3)

    図2-28の“4“と”k”の字間が四分アキとなっているのは,単位記号中の文字(cl-25)とその前に配置するアラビア数字又は量を示す欧文用文字(cl-27)との字間を四分アキとすることが慣習になっていることによる.なお,この“4”と“k”との字間で2行に分割することは可能である.その場合の四分アキは,行頭及び行末にはとらない.

  7. モノルビで配置したルビ文字列の字間(図2-29参照).一体として扱うためである.なお,モノルビが付いた親文字とモノルビが付いた親文字との字間は,分割可能である.

  8. グループルビで配置した親文字列及びルビ文字列の字間(図2-29).一体として扱うためである.

    モノルビとグループルビは分割禁止

    図82]: ルビ文字列の分割禁止の例

    注1)

    複数の親文字で構成される熟語ルビは,親文字の1字ごとに対応したルビ文字とのグループの間では,分割してよい(図2-30参照). ただし,親文字の1字ごとに対応したルビ文字(図2-30を例にすると“哺”とルビ文字の“ほ”,“乳”とルビ文字の“乳”,“類”とルビ文字の“るい”)は一体として扱い,それぞれのルビ文字列の字間及び親文字は分割してはならない.

    熟語ルビを分割した例

    図83]: 熟語ルビを分割した例

  9. 親文字とその前又は後ろに付く添え字との字間.添え字が付く親文字の文字列,及び添え字の文字列の字間(図2-31参照).それらの文字列を一体として扱いたいためである.

    添え字及び親文字の字間は分割禁止

    図84]: 添え字及び親文字の字間は分割禁止

  10. 注と本文との対応をつけるために合印が付くことが多い.この合印の前及び合い印の文字列の字間(図2-32参照).これは体裁上の問題による.

    注の合印の前では分割禁止

    図85]: 注の合印の前では分割禁止

    注1)

    このドキュメントでは,合印の文字列の文字クラスは,合印中の文字(cl-20)として扱う.

    注2)

    合印の後ろには句点類(cl-06)がくる場合は多い.この場合は,合印と句点類の間でも,句点類は行頭禁止であるから分割禁止となる(図2-32参照).

  11. 割注行を囲む割注始め括弧類(cl-28)の後ろ,割注行を囲む割注終わり括弧類(cl-29)の前.

  12. 同一の振り分け.同一の振り分けは,一体として扱う.

    注1)

    2行に分割してはならない箇所(及び分割してよい箇所)の詳細は,“2.9 文字クラスについて”で説明する文字クラスに従い,表の形式にしてAppendix 〓で示す.

3.1.11 1 行の調整処理で字間を空ける処理に使用しない箇所

行の調整処理の際に,字間を空けて処理する場合,次の字間にはアキを入れることは避ける(分離禁止ともいう).これは,それらの文字・記号を一体として扱いたいためである.

注1)

行の調整処理の際に,ベタ組字間を空けて処理できる主な箇所は,平仮名(cl-15)片仮名(cl-16)漢字等(cl-19)相互の字間ということができる.なお,空けて調整する場合は,欧文単語間の空き量なども対象になる.

  1. 2.1.10 分割禁止”で掲げた字間は,すべて行の調整処理字間を空ける箇所としては避ける.

    注1)

    規定された調整処理では処理できない場合に限り,欧字の単語の字間を空けることを許容する考え方もある.

  2. 上記以外では,次も行の調整処理字間を空ける箇所としては避ける.

    1. 始め括弧類(cl-01)及び終わり括弧類(cl-02)の前及び後ろ.

      注1)

      始め括弧類(cl-01)の後ろ及び終わり括弧類(cl-02)の前は,分割禁止であり,かつ行の調整処理字間を空ける処理を避ける箇所である.これに対し,始め括弧類の前及び終わり括弧類の後ろは,分割禁止ではないが,行の調整処理字間を空ける処理を避ける箇所である.句点類(cl-06)読点類(cl-07)についても,終わり括弧類と同じように考えることができる.

    2. 句点類(cl-06)読点類(cl-07)の前及び後ろ.

    3. 中点類(cl-05)の前及び後ろ.

    4. 区切り約物(cl-04)の前及び後ろ.

    5. ハイフン類(cl-03)の前及び後ろ.

    6. 全角アキ,二分アキ四分アキなどの和字間隔の前及び後ろ.

    7. 熟語ルビが付いた親文字列の字間

      注1)

      行の調整処理の際に字間を空ける処理が可能な箇所の詳細は,“2.9 文字クラスについて”で説明する文字クラスに従い,表の形式にしてAppendix 〓で示す.

3.1.12 行の調整処理例

行の調整処理の処理方法については,別項で解説するが,行の調整処理が必要になる要因の1つに約物組版処理が関係することから,ここでは行の調整処理が必要となる主な2つの例とその調整例について解説する(図2-33参照).

  1. 日本語組版では,段落の最終行を除き,行長を揃えるのが原則である.行長は,前述したように文字サイズの整数倍に設定するので,全角文字を並べていく限りでは,行長は揃うことになる(図2-33の①参照).

  2. 図2-33の②では,読点[、] (IDEOGRAPHIC COMMA)とかぎ括弧[「] (LEFT CORNER BRACKET)が連続し,この2つの約物全体の字幅及び空きの合計は1.5倍となり,行長で二分の過不足が発生する.そこで,図2-33の③のようにかぎ括弧の前の二分アキ及び後ろの二分アキ四分アキに詰める処理(追込み処理という)が可能なので,ここで二分の過不足の調整を行い,行長を揃える.

  3. 図2-33の④では,15字目に始め括弧類(cl-01)がくるので,この配置を回避する調整が必要になる.その行で全角の詰める処理が可能であれば,その処理を行い,2行目の“前”の文字を1行目の15字目に配置し,問題を回避できる.しかし,この例では全角の詰める処理が不可能なので,図2-33の⑤のように始め括弧類を2行目に移動し,1行目の字間を空ける調整が可能な箇所で空ける処理(追出し処理という)を行い,1行目の行長を揃える処理を行う.

    行の調整を行った例

    図86]: 行の調整を行った例

3.2  和欧文混植処理(縦中横処理を含む)

3.2.1  和文と欧文との混植

和文の中にラテン文字ギリシャ文字などの欧字・欧文を混植(和欧文混植)する例は多い.次のような例がある.

  1. AとBといったように欧字1字を記号として使用する.

  2. editorのように欧字の単語をそのまま使用する.

  3. GDPやDTPなどの組織名や事項に関する頭字語として使用する.

  4. 欧文の文献表示などで著者名や書名などを原本通り表記する.

箇条書きや見出しの頭に付く番号,さらに,単位記号・元素記号・数学記号等でも欧字は使用されており,日本語組版にとっては,和欧文混植は,ごく一般的な事例になっている.

注1)

和文中に欧文の1つ又は複数の段落をそのまま引用する例はあるが,一般の本では,そのような例は少ない.しかし,外国語の学習書では,1つ又は複数の段落を表示し,それに対する解説を和文で行うという例は多い.その他,専門書,専門雑誌などでも欧文の1つ又は複数の段落をそのまま掲げる例がある.

注2)

縦組の単位記号は,例えばセンチメートル(又はセンチ)のように片仮名を用いてす方法が一般に採用されているが,横組では,国際単位系(SI)の表記に従い,cmのような表記を採用している例が多い.

注3)

和欧文混植処理については,JIS X 4051では“4.7 和欧文混植処理”に規定されている.

3.2.2  横組の和欧文混植に用いる文字

横組では,原則としてプロポーショナルな欧字を用いる([図87]参照).また,アラビア数字は,半角アラビア数字又はプロポーショナルなアラビア数字を用いる.

横組にプロポーショナルな欧字を用いた例

図87]: 横組にプロポーショナルな欧字を用いた例

全角のモノスペースの欧字を用いた例(横組ではこのような文字は使用しない)

図88]: 全角のモノスペースの欧字を用いた例(横組ではこのような文字は使用しない)

注1)

[図88]のように,全角モノスペースの欧字を用いた印刷物も目にするが,体裁がよくないので,このような文字は使用しない.

注2)

横組の混植で使用するアラビア数字は,和文書体と調和のとれたアラビア数字を用いるが,行長の調整を考慮すると半角字幅としたアラビア数字を用いるのが望ましい.和文書体に付属しているアラビア数字では,半角字幅にしている例がある.