ある言語から別の言語に文字が翻訳されると、原文と訳文の文字の長さは変化しがちです。こうした長さの違いが規則的に生じるパターンはいくつか存在します。
この記事では、こうした規則的に生じるいくつかの違いについて参考事例を紹介します。他の記事では、Web ページのデザインに関する特定の影響について取り上げ、その解決方法を提案しています。
一般に、レイアウトのデザインに、より柔軟性を持たせることが大切といえます。文字が再度流し込まれるようにし、できるだけ小さな固定幅のコンテナの使用や詰め込みすぎの状態を避けるようにします。特に、グラフィックデザイン内に文字をぴったりと余裕なく合わせることには注意が必要です。プレゼンテーション部分とコンテンツ部分を分離して、文字サイズや行間などが訳文内の文章で適用しやすいようにします。また、データベースのフィールド幅を文字長に合わせて設定する際にも、こうした考え方に留意する必要があります。
英語と中国語の文章は一般にとても短く、これらの言語から翻訳された文章は一般にオリジナルよりも長くなる傾向があります。場合によっては、深刻なレベルに達することもあります。
例えば、Flickr のユーザーインターフェイスは最近、いくつかの言語に翻訳されました。投稿した写真を見ている時に表示されるもっとも一般的なメッセージの 1 つは、例えば「392 views」というように、その写真のページが何回表示されたかを知らせるものです。次の表は、Flickr が「views」という意味で使っているという文字の長さを、オリジナルの英語と比較した比率*で表したものです。
言語 | 訳文 | 比率 |
---|---|---|
韓国語 | 조회 | 0.8 |
英語 | views | 1 |
中国語 | 次檢視 | 1.2 |
ポルトガル語 | visualizações | 2.6 |
フランス語 | consultations | 2.6 |
ドイツ語 | -mal angesehen | 2.8 |
イタリア語 | visualizzazioni | 3 |
グリフの幅が影響するため、中国語と韓国語の各文字の幅は英語の 2 文字分として計算されます。
英語からイタリア語への 300% の拡張は、このような短い文字列では驚くほどのことではありません。次に示すのは、英語からヨーロッパ言語への翻訳における平均的な予想拡張率です。これは IBM が発行した『National Language Design Guide Volume 1, in 1994』に記載されているものです。
英語原文内 の文字数 |
平均膨張率 |
---|---|
10 文字以内 | 200–300% |
11–20 | 180–200% |
21–30 | 160–180% |
31–50 | 140–160% |
51–70 | 130–140% |
70 文字超 | 150% |
総じて言えることは、文字は通常拡張するということです。ただし注意したいことは、原文の長さが短いほど、訳文は長くなる傾向があるということです。
言うまでもなく、これはすべての文字列やメッセージについて正しいわけではありませんが、拡張が起きる場合には対処法を知っている必要があります。例えば、Flickr ではドイツ語とフランス語において「FAQ」を「FAQ」と訳していますが、ポルトガル語では「Perguntas freqüentes」、そしてスペイン語では「Preguntas frecuentes」と訳しています。
問題は、短めの英語文字列で起こりがちです。入力フィールドと同じ長さにしたり、グラフィックの内部であったり、タブで幅を設定してしまうなど、より小さなスペースに文字を詰め込めば詰め込むほど、問題になりがちです。
また、文字の拡張は英語と中国語を原文として記述されたユーザーインターフェイスだけの問題ではないことを心に留めておいてください。原文がスペイン語で書かれている場合、「Idioma de la interfaz」という言葉は英語の (「Interface language」) では短くなりますが、マレー語の (「Bahasar pegantar untuk penelusuran」) ではかなり長くなります。さらに、短めの訳文の場合、もしページ上にあまりに多数の空白ができてしまう場合は、大きな問題に発展する可能性もでてきます。
文章の段落を扱う場合、相対的な拡張は小さくなる傾向にありますが、考慮すべき点はまだいくつか残ります。例えば、見せたいものすべてを「ファーストビュー」の範囲に収めることができるでしょうか?アイテムが異なる比率で下方に伸びる場合でも、思い通りに整列させることができるでしょうか?
翻訳による予測不可能な文字数の変化に加えて、文字レイアウトの管理を複雑にする別の要因があります。
フィンランド語やドイツ語、オランダ語などいくつかの言語では、他の言語では一連の短い単語で構成されていた言葉が巨大な単一の「言葉」に置き換えられます。
例えば、英語の「Input processing features」は、ドイツ語で「Eingabeverarbeitungsfunktionen」のようになります。フォーム入力フィールドの大きさに合わせたり、タブやボタンが多数存在したり、コラム幅が狭いなどの制限がある場合、英語の文字列は折り返すことで簡単に 2 行に分けられますが、ドイツ語では自動的に折り返しすることができず、レイアウトの作成には困難が伴うでしょう。
中国語、日本語、韓国語、そしては他のいくつかの言語における書体は、一般にラテン語の書体と比べて複雑です。これは、仮に訳文での文字数が同じか若干少なかったとしても、より長いスペースが水平方向で必要になることを意味します。
例えば英語の「desktop」は日本語で「デスクトップ」になります。日本語での文字数は 1 つ少なくなっていますが、水平方向の必要スペースは長くなります。
非ラテン語の文字は一般に、ラテン語の文字よりも高さがかなり大きくなります。それだけでなく、これらの書体はラテン語の文字よりも大抵、より大きな行間を必要とします。
例えば次のグラフィックは、英語とタイ語で同じ内容の文字を示したものです。いずれの言語でも同様に 2 行で表示されていますが、タイ語の場合は垂直方向にかなり大きなスペースがとられています。これは、(グリフが高くなり、そのために行間も大きくなる原因の) 文字の複雑さに一部起因しますが、タイ語ではラテン語の文字よりも大きな行間を持つということも原因の 1 つです。ラテン語の書体よりも高さが必要とされる書体はたくさんあります。例としては、アラビア語書体 (特にナスタアリーク書体)、中国語書体、(ヒンディー語で使われる) デバナーガリ書体、日本語書体、韓国語書体、チベット語書体などがあります。
限られたスペースに収まるように略語を使用する場合は、それが本当に適切なことかどうかを慎重に考える必要があります。他の言語では、そうした略語を再現できない可能性もあり、そのために訳文が長くなるかも知れません。
略語は多くの言語であまり一般的ではありません。これはその言語のスタイルにも影響が及びます。他にも、より実践的な面での問題に依存するかも知れません。例えば、アラビア語の「単語」は、パターン化された非常に小さな語幹に接頭辞と接尾辞が付き、さらに正確な意味を表現するための小さな内部変更が付加された構造になる傾向があります。これを、意味を失わないように省略化することは困難です。
(さらに、略語を使用する場合はそのリストを翻訳者に提供する必要があることも注意してください。)
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