市民への権限委譲を促進する W3C 電子政府活動

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Web を介した模範的な行政と市民参加のあるべき姿を検討する公開討論の場

 

http://www.w3.org/ — 2008年6月3日 — World Wide Web Consortium (W3C) は本日、行政組織、市民、研究者、その他の利害関係者らを対象に、模範的な行政と市民参加のあるべき姿に求められる Web 技術の最適な活用方法について検討する公開討論の場を新たに設置いたします。

W3C 技術統括責任者を務める Tim Berners-Lee は、「行政組織関係者の皆様におかれましては、Web を通じた行政サービスの向上のために、是非この W3C の公開討論の場にご参加頂きたいと思います。オープンな標準、特にセマンティック Web 標準を用いることで、行政コストの削減に加え、行政組織間の相互連携を容易にし、組織や人事、行政改革といった改変へも柔軟に対応できるようになります。相互リンク可能な行政情報を Web 上に公開することで、創造的な情報の再利用、つまり、様々な情報を連携させた思いも寄らない行政情報の 『民間マッシュアップ』 や 『商用マッシュアップ』 が実現します。是非、本公開討論にご参加頂き、模範的な電子行政や、既存の情報ツールやサービス上へのオープンな標準基盤の構築方法について、理解を深めて頂きたいと思います。」 と述べています。

本公開討論へはどなたでもご参加頂けます。W3C では、電子政府に関心を寄せるあらゆる個人または組織から、新たに設置される電子政府検討部会 eGovernment IG へのご参加を歓迎いたします。本検討部会は、2007年中に開催された、欧州における電子政府に関する公開討論会や、より透明性の確保された行政の実現に向けた電子政府と Web に関する合同研究会を始めとした、数年にわたる本分野における W3C での取組みが結実したものです。

これまでの電子政府への取組みから見えてきた課題

電子政府 (eGovernment) とは、市民との行政手続の履行の他、部局や省庁、あるいは行政府など、行政組織間での業務連携において、それら組織が Web を始めとする情報技術を利用することを総称しています。一般的な情報提供事業者が顧客に対して行うのと同様、行政組織においても、言わば 「顧客」 にあたる市民に対し、還付金の電子申告、自動車免許の講習、査証の申請、選挙での投票などの行政手続をインターネットを通じて行えるようにすれば、便利なだけでなく効率的でもあることに気がつきました。情報利用や効率的で秘匿性の確保された行政手続の実現は、公正公平な行政を保障する上でも重要です。

これらの成果により、行政組織は Web を通じて情報やサービスを提供する重要性を認識しましたが、まだまだ改善の余地が残されています。一般の Web 上でのサービスや機能の急速な革新を目の当たりにし、市民らは、官民連携の他、基本的な情報公開から、より先進的な行政サービスに至るまでの様々な改善を期待、要求するようになっています。

公共サービス向上の鍵となるオープンな Web 標準

XML、セマンティック Web、アクセシビリティ、国際化、携帯機器の利用といった分野における W3C 標準を始めとする相互運用可能なオープンな Web 標準を通じ、これまでの数年間、世界中の行政組織がその恩恵に与ってきました。これら標準により、多様な市民からの様々な機器を通じた情報利用が実現します。また、オープン標準を用いることで、情報の生成と収集に対する投資の重要性はますます高まり、未来永劫、利用可能な情報の実現も夢ではないかもしれません。

特にセマンティック Web 標準はマッシュアップのような情報集約や、それに伴う行政組織間や他の電子政府事業者との計画的あるいは偶発的な連携協調に活用できます。セマンティック Web 技術はまた、過失や誤りを低減し、信頼の構築に寄与する説明責任の管理にも有効です。

アメリカ建築家協会 (AIA) の Kevin Novak 氏とスペイン () 情報通信技術センター (Fundación CTIC) からの W3C 訪問研究員である José M. Alonso とが共同議長を務める本検討部会では、行政分野でのオープンな Web 標準の利活用のための指針と実践例を取りまとめるとともに、既存の技術において利害関係者らの要求に十分に応えられていない点を把握、文書化します。本検討部会ではまた、W3C 内の様々な標準化部会の他、設置趣意書にも明記された通り、欧州委員会 (EC)、経済協力開発機構 (OECD)、OASIS、米州機構 (OAS)、行政における情報技術の利用に関する国際会議 (ICA)、世界銀行 発展のための情報通信技術の利用に関する主題別部会 (e-Development TG) といった国際機関との密接な連携も模索します。

World Wide Web Consortium [W3C] について

World Wide Web Consortium (W3C) は、会員組織、専任スタッフ、そして一般の皆様が一丸となって Web 標準の策定に取組む国際的なコンソーシアムです。W3C は、Web の長期的な発展を保証すべく設計された Web 標準や指針の策定を通じ、その使命の遂行に努めます。現在までに 400 を超える組織がコンソーシアムの会員となっています。W3C は、日本の慶應義塾大学、フランスに本部を置く欧州情報処理数学研究コンソーシアム (ERCIM)、及び米国 マサチューセッツ工科大学計算機科学人工知能研究所 (MIT CSAIL) の各運営組織により共同運営されています。加えて各国地域における普及推進拠点となる W3C 事務局を世界各地に設置しています。詳しくは W3C の Web サイト http://www.w3.org/ をご覧下さい。

本件お問合せ先:
日本、アジア (慶應義塾大学 SFC 研究所) — 平川 泰之, <chibao@w3.org>, +81-466-49-1170
ヨーロッパ、アフリカ、中東 (ERCIM) — Marie-Claire Forgue, <mcf@w3.org>, +33 492 38 75 94 または +33 676 86 33 41
アメリカ、オーストラリア、その他 (MIT CSAIL) — Ian Jacobs, <ij@w3.org>, +1.718.260.9447

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