W3C、特許方針に関する新たなドラフトを公開

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コミュニティと会員からのフィードバックによりまとめられた新たなロイヤリティフリーのドラフト

 

http://www.w3.org/ -- 2002年2月26日 -- World Wide Web Consortium (W3C) は本日、 ロイヤリティフリー (RF) な仕様を実現する、 という強固かつ明確な公約に基づき、特許方針 (Patent Policy) ワーキングドラフトの改訂版を公開いたしました。 ロイヤリティフリーな仕様の実現に向け、 本ワーキングドラフトでは W3C 勧告の策定に携わる全関係者に対し、 彼らが保持するいかなる基本特許も自由に入手可能とするよう要求しています。

W3C 会員が、W3C 勧告内において用いられる特許技術に対し「妥当かつ非差別的に」特許料を課すことを可能としていた RAND (reasonable and non-discriminatory terms) と呼ばれる選択肢は削除されました。 RAND 技術が Web 標準においてどのような役割を担うべきか、 という問いに対する最終的な回答は引き続き検討中です。

一般及び会員からのフィードバックを取り入れた W3C 特許方針ドラフト

昨年8月に W3C の特許方針に関する最初のワーキングドラフトを公開して以来、 パテントポリシーワーキンググループW3C 会員及び一般の人々の双方から、 この文書に関する質問や懸念を表明した数千通にのぼる電子メールを受け取りました。 多くの建設的な提案により、ワーキンググループの方向性と論点が定まりました。 パテントポリシーワーキンググループはオープンソースコミュニティのメンバーを参加者として招き、 各ミーティングの議事録を一般公開しています。

W3C のロイヤリティフリーな仕様に対する確約

新しい特許方針ワーキングドラフトは以前のドラフトと3つの点で大きく異なっています。

  • W3C のワーキンググループにとって RAND という選択肢はなくなりました。 新しい方針では、RAND 仕様を策定するプロセスは存在しません。ただし、 例外的な状況において RAND 技術を取り入れる選択肢についてはなお検討中です。
  • ワーキンググループの参加者は、 今後ロイヤリティフリーでライセンスを提供する旨を明らかにしなければなりません。
  • 基本特許の保有者が、 W3C 勧告を実装したことで特許侵害により訴えられた場合にのみ、 特許の防衛的な使用が許されます。

最終的な W3C の特許方針は現在もなお策定中ですが (この最新のドラフトが最終的な方針となるバージョンとなるだろうと考えていますが)、 既に W3C の現在の特許に関する運用規約は、 ロイヤリティフリーの標準を策定するという確約に基づいています。

継続的作業と2002年中の追加ドラフト公開

パテントポリシーワーキンググループでは、 この新しいワーキングドラフトに対する一般からのコメントを募集すると共に、 より広く Web コミュニティに対し、 コンソーシアム内での議論の進行状況に関心を持っていただくよう呼びかけています。 以前のドラフトと同様に、一般からのコメントは有用なものとして、 今後の改訂版において考慮される予定です。 本方針の骨子は既に安定したものになってはいますが、 未解決のまま残されているいくつかの重要な問題解決に向けて作業は継続して行われています。

特に、RAND 技術が最終的な方針において果たす役割が何かあるとすれば、 それがどのような形になるかについての最終的な決定は、 パテントポリシーワーキンググループとしても、 W3C 会員の総意としても未だなされていません。 一般からのコメントと会員からのコメントの双方は、 この方針について、 RF での仕様開発を優先するという方向性に重要な影響を与えました。 しかし、多くの W3C 会員は、 RAND の条件下でしか利用できない技術を取り扱う方法を、 少なくとも例外という形で W3C プロセス内に用意すべきあるという意見を持っており、 この点が今後の議論の焦点として残っています。

もう一つ残っている論点として、 この方針内に定義されているロイヤリティフリーのライセンス条件は、 他の多様なオープンソースライセンスとどのように関係してくるのかという問題があります。 パテントポリシーワーキンググループでは、 提案中の RF ライセンスはほとんどの著名なオープンソースライセンス形態と互換性を持つものであると考えていますが、 GPL (GNU 一般公有使用許諾) との関係についてはいくつかの問題が残っています。 パテントポリシーワーキンググループでは、 GPL 関連の問題を解決するため作業中です。

特許方針が最終的な形となる前に、少なくとももう一回、 年内に公開ドラフトがレビューのため発行されます。 その後、技術的な勧告を認める際の通常の W3C プロセスに従って、 最終ワーキングドラフトの発行とそのレビューの後、 ワーキンググループは最終的なドラフト (勧告案) を準備し、 W3C Advisory Committee によるレビューを経て、 Director が最終的にこの方針の可否について決定を行います。

World Wide Web Consortium [W3C] について

W3C は、Web の発展と相互運用性を確保するための共通のプロトコルを開発することにより、 Web の可能性を最大限に引き出すべく設立されました。W3C は、 アメリカ合衆国マサチューセッツ工科大学計算機科学研究所 (MIT/LCS)、 フランス国立情報処理自動化研究所 (INRIA)、及び日本の慶應義塾大学がホスト機関として共同運営にあたっている国際産業コンソーシアムです。 コンソーシアムにより提供されるサービスには、 開発者及び利用者のための World Wide Web に関する豊富な情報、 新技術を応用した様々なプロトタイプやサンプルアプリケーションの開発などが挙げられます。 現在までに、500を超える組織がコンソーシアムの会員となっています。 詳しくは http://www.w3.org/ をご参照下さい。

 

問い合わせ先 (アメリカ) --
Janet Daly, <janet@w3.org>, +1.617.253.5884 または +1.617.253.2613
問い合わせ先 (ヨーロッパ) --
Marie-Claire Forgue, <mcf@w3.org>, +33.492.38.75.94
問い合わせ先 (アジア) --
竹内 佐衣子, <saeko@w3.org>, +81.466.49.1170

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