W3C

Authoring Tool Accessibility Guidelines 1.0に関するよくある質問

(also available in English.)


このFAQ (Frequently Asked Questions, よくある質問) ページでは、World Wide Web Consortium (W3C) が 2000年2月3日に勧告として公開したAuthoring Tool Accessibility Guidelines 1.0 に関する 情報を提供しています。

目次

  1. 一般的な質問
  2. 背景
  3. 実装の状況
  4. 開発者向けの支援と情報
  5. 仕様への準拠について
  6. ガイドラインに準拠したツールが現れた場 合

1. 一般的な質問

オーサリングツールとはなんですか?

オーサリングツールとは、 Webページや Webサイトの作成に用いられるソフトウェアのことで す。オーサリングツールには、テキストエディタ、 WYSIWYG 方式のエディタ (編集画面の内容と見た目が同じページを作成する方式のもの) 、 HTMLとしてファイルを保存する機能を持つワードプロセッサ・ 表計算やプレゼンテーション用のソフトウェアなどに組み込まれている HTMLへの変換機能、データベースの内容に基づいて Webコンテンツを生成するツール、マルチメディアエディタ、 文書整形ツール、サイト管理用ツールなどが含まれます。

このガイドラインはどのような内容のものですか?

Authoring Tool Accessibility Guidelines 1.0 (ATAG 1.0) には、 7項目の基本的指針 (ガイドライン) が含まれています。各ガイ ドラインは、複数の項目 (チェックポイント) を含んでおり、合計で 28のチェッ クポイントがあります。各チェックポイントには 3段階の重要度のうちのいず れかが付与されています。また、チェックポイントを重要度別にまとめた チェックリストもガイドラインとともに公開しています。この中には、 Web Content Accessibility Guidelines 1.0 のチェッ クポイントを満たすコンテンツをオーサリングツールで作成する上で必要とな る総体的重要度も含まれています。また、この仕様には本使用の概要、準拠の 度合いを示す方法に関する情報および参考文献に関する情報も含まれています。

アクセシビリティの高い Webコンテンツの作成において、 オーサリングツールがどのような役割を果たすのですか?

オーサリングツールは以下の方法でアクセシビリティの高い Webコンテンツ作成の支援を行うことができます。

このガイドラインがなぜ必要なのですか?

既存のオーサリングツールの多くは、障害を持つ人が利用しにくい形 のマークアップを用いたコンテンツを生成します。情報源としての Webの果たす役割が非常に大きくなった今日、障害を持つ人々 も Webを利用できるようにすることは重要なことで す。 Authoring Tool Accessibility Guidelines 1.0 により、Web サイトの製作者は W3C Web Content Accessibility Guidelines 1.0 に準拠したアクセシビリティの高い Webコンテンツの作成を容易に行うことができるようになり、より多くの障害 者にとって Webコンテンツを作成することが可能に なります。

このガイドラインで挙げられている項目を実装しているオーサリングツールに対する需要があるのですか?

公共機関や民間組織の中で、各組織が運営する Webサイトのアクセシビリティを保証して行く動きが大きく なってきています。また、政府の方針でアクセシビリティの高い Webサイトを提供することが義務づけられているような種類 の組織もあります。このような組織からは、アクセシビリティの高い Webコンテンツを作成することのできるオーサリングツール に対する需要があり、またこの需要は今後拡大していくものと思われます。

2. 背景

このガイドラインと、 Webの アクセシビリティに関する他のガイドラインとはどのように違いますか?

Web Content Accessibility Guidelines は、アクセシビリティの高い Webページの作成方法を解説しています。 User Agent Accessibility Guidelines は、障害の有無に関係なく利用しやす いブラウザやマルチメディアプレイアーの開発に必要な事項を解説しています。 Authoring Tool Accessibility Guidelines は、 Web Content Accessibility Guidelines に準拠したアクセシビリティの高い Webページを容易に作成することができるオーサリングツー ルの開発に必要な事項について解説しています。

このガイドラインはどのような人々によって策定されましたか?

このガイドラインを策定した Authoring Tool Accessibility Guidelinesワーキンググループ (AUWG)は、複数の業界団体、障害者団体および研究組織を代 表する人々によって構成されています。ガイドラインの策定の作業に積極的に 参加したメンバーとしては、 IBM, Lotus Corporation, Microsoft Corporation, HTML Writers Guild, カナダの Adaptive Technology Resource Centre, TRACE Research and Development Center, Texas School for the Blind and Visually Impaired, Smith-Kettlewell Eye Research Institute, Visually Impaired Computers Users' Group of New York などが挙げられます。さらに、策定期間中 には、 Web Accessibility Initiative (WAI) Interest Group のメンバー、 W3Cの会員組織の代表者、 その他のソフトウェア開発者によってその内容が検討されました。その際に出 された全ての意見を検討し、必要に応じてその内容はガイドラインに反映され ています。

Web Accessibility Initiative (WAI) に関する詳しい情報はどこから入手できます か?

Web Accessibility Initiative のホームページWAIに関する多様な情報を提供しています。参考情報、イベ ントのご案内、ワーキンググループの活動に関する情報、活動への参加の方法、 支援の方法などの情報をご覧いただけます。

Webのアクセシビリティの実現の 上での W3Cの役割はどのようなものですか?

Web Accessibility InitiativeW3Cによって運営されており、アクセシビリティの分野での専門 性を W3Cの会員組織および Webの世界 に導入することに貢献しています。新しい仕様はアクセシビリティの観点から 見た問題がなく、また可能であれば Webのアクセシ ビリティを向上させることができるよう、WAIによって検討され ています。そして、結果として Webがその全ての利 用者にとって最大限の効果をもたらすように保証することを目指しています。

3. 実装の状況

このガイドラインに挙げられている項目を実装したツー ルが現れるまでにどのくらいの時間がかかるでしょうか?

ATAG 1.0の公開の時点では、ガイドライン中の全ての項 目は一つまたは複数の既存のツールで実装されていますが、全ての項目を実装 しているツールは存在しません。また、推薦状にあるように、多くのオーサリングツールの開発者 がATAG 1.0 の項目を今後の製品で実装することを表明していま す。

現在利用できるツールで、アクセシビリティの高い Webコンテンツの作成に最も適したものはなんで しょうか?

ATAG 1.0 公開時点では、 ATAG 1.0が定 める準拠のレベルに達しているオーサリングツールはありません。したがって、 適切なオーサリングツールは Webページの製作者の ニーズや技術によって異なったものとなります。オーサリングツールが正しい マークアップを用いたページを生成することができるかどうかは、出力された ページのチェックをW3C が提供する検証ツールを用いて行うことで確認することができます。また、 オーサリングツールによってアクセシビリティを保証する上で必要な情報を Webページに付加することが容易なものとそうでない ものがあります。 作成しているページがアクセシビリティの高いものである かどうかの確認を半自動的に行うことができない場合には、 既存のチェック用の ツールをオーサリングツールと組み合わせて使うことでチェックすること ができます。 WAI のホームページでは、複数のオーサリングツール について、 ATAG 1.0の実装の状況に関する情報へのリンクを提 供しています。

Webサイトの製作者が、使ってい るオーサリングツールについての評価を行う場合、何から始めればいいで しょうか?

Authoring Tool Accessibility Guidelines 1.0 のチェックポイントをまとめた チェックリストおよび、ガイドラインとともに提供されている Techniques for Authoring Tool Accessibility の内 容と、使用しているオーサリングツールを比較してみるとよいでしょう。これ を行うためには、ATAG 1.0および Web Content Accessibility Guidelines に関する知識が多少必要となりま す。これとは別に、利用しているオーサリングツールの開発者に対して、その オーサリングツールが ATAG 1.0に対応する予定について問い合 わせてみるのもよいでしょう。

W3C自身が作成しているツールはこのガ イドラインに準拠したものになるのでしょうか?

W3Cでは、 Amaya というブラウザとオーサリング ツールの機能を持つソフトウェアの実装試験を行っています。 Amaya の開発 チームは、 ATAG 1.0に基づいた実装を行うことを開発計画の中 に盛り込み、既に実装に向けた開発を開始しています。

4. 開発者向けの支援と情報

どの機能が最も重要であるか開発者が判断できるように、 仕様中のチェックポイントには重要度が付与されていますか?

ATAG 1.0の中のチェックポイントには、この仕様の目的 の達成の上での必要性に応じた 3段階 の重要度が付与されています。重要度 1 の項目は、目的達成に当たって 必須の項目です。重要度 2の項目は、目的達成に当たって重要な項目です。重 要度 3の項目は、目的達成の上で有用な項目です。この仕様の目的は、オーサ リングツールが利用しやすいものとなること、デフォルトでアクセシビリティ の高いコンテンツが生成されるようにすること、アクセシビリティの高いコン テンツの作成を推進するようになることです。これに加えて、一部のチェック ポイントには総体的な重要度が付与されています。この場合、これらのチェッ クポイントは、オーサリングツールでの実装のために必要な情報を提供してい る Web Content Accessibility Guidelines 1.0 の中の チェックポイントの重要度を参照しています。

このガイドラインに準拠したツールの開発を行いたい開 発者が参考にできる情報にはどのようなものがありますか?

Authoring Tool Accessibility Guidelines 1.0 の チェックポイントを重要度別にまとめたチェックリストを用いることで、 既存のオーサリングツールに関する評価を行うことができます。また、 W3C Noteとして提供されているTechniques for Authroing Tool Accessibility Guidelines 1.0 には、チェックポイントを実装するための方法が解説されて おり、またたとえばマルチメディアコンテンツのアクセシビリティといったよ うな関連する具体的な問題についての情報も記載されています。

オープンソースとなっている資料や参照実装はありますか?

Techniques for Authoring Tool Accessibility Guidelines 1.0 には、オープンソースのものも含め、チェックポイントを実 装した複数のツールに関する情報が含まれています。また、 W3Cが実装試験を行い、オープンソースで開発を続けているブラ ウザおよびオーサリングツールの機能を持つソフトウェア、 Amaya も、 ATAG 1.0を 実装すべく開発が続けられています。

Webのアクセシビリティの向 上のために利用可能な情報などには他にどのようなものがありますか?

Web Accessibility Initiative では、 Web のアクセシビリティを推進するために多様な情報の提供を行っています。これ らの情報のうちの多くは、 WAI ホームページの ``Resources'' のセクションからリンクされています。 他のガイドラインやそのテクニック集 Web のアクセシビリティに関する導入 (QuickTips, Curricula, WAI Overviewなど) 、HTML, CSS, SMIL やその他のW3C の仕様に関する技術解 説関連した情報へのリンク集 (政策に関連する情報、異なるブラウザに関する情報、評価のためのツー ルに関する情報 など) といった情報を提供しています。

5. 仕様への準拠について

仕様への準拠には異なった段階がありますか?

ATAG 1.0 には、 3段階の重要度 に対応した 3段階の準拠の度合いが設けられています。全ての重要度 1の項目 を満たすオーサリングツールのこの仕様への準拠の度合いは、 `Level-A' 、重要度 1および 2を満たすものの準拠の度合 いは `Double-A' 、 3段階全ての重要度を満たすも のは `Triple-A'です。この際、総体的な重要度を付 与されたチェックポイントについても、それぞれ満たされている必要がありま す。

ツールの購入に際して、そのツールがこのガイドライン に準拠しているかどうかはどのようにすれば分かりますか?

このガイドラインに準拠したオーサリングツールは、今後このガイドラインへの準拠の度合いを提示するようにな ると考えられます。 また、 ATAG 1.0 に準拠 していることを提示するためのより詳しい情報Web上で公開しています。Authoring Tool Guidelinesワーキンググループでは、引き続き ATAG 1.0 の実装に関する情報を集めて公開していきます。この FAQ 作成の段階では、暫定版を公開して います。また、 Web Accessibility Initiative が 把握し次第、新たに ATAG 1.0に準拠したオーサリングツールに 関する情報も提供します。

Webコンテンツの製作者はこ のガイドラインに準拠したツールを用いなければアクセシビリティの高い Webを作ることができないのですか?

Web Content Accessibility Guidelines 1.0 に 挙げられている項目を直接適用しながら、テキストエディタ・ WYSIWYG方式やその他のエディタを用いてWebページの作成を行えば、 ATAG 1.0に準拠 しているオーサリングツールを用いなくてもアクセシビリティの高い Webコンテンツを作成することは可能です。しかし、この方 法の場合にはソースコードを直接確認して、利用されているマークアップが適 切であるかを確認したり、手動でアクセシビリティのチェックを行うなど、 ATAG 1.0に準拠したオーサリングツールを用いる場合と比較し て必要な作業が多くなることが考えられます。 Web Content Accessibility Guidelines 1.0 に関する 詳細を知らない場合には、 ATAG 1.0に準拠したオーサリングツー ルを用いることによって、アクセシビリティの高い Webサイトの構築に当たっての生産性を劇的に向上させるこ とができるでしょう。

6. ガイドラインに準拠したツールが現れた場合

これらのツールは使用しやすいものですか?

オーサリングツールの利用方法が容易であるかどうかという点は、想 定されているユーザの経験がどのようなものかによって異なってきます。 ATAG 1.0に準拠したオーサリングツールであるかどうかという ことは、そのオーサリングツールが使いやすいかどうかということに直接的な 影響を与えるものではありません。ただし、アクセシビリティの高い Webページの作成に当たっては、ATAG 1.0に 準拠したオーサリングツールの方が ATAG 1.0に準拠していない ものに比べて利用が容易です。これは、前者は Web ページのアクセシビリティを確保するための作業のいくつかを自動化している ためです。

これらのツールは障害者にも利用できるものですか?

このガイドラインではオーサリングツールそのもののアクセシビリティ に関しても規定していますので、 ATAG 1.0に準拠したものは障 害者にも利用できるものでなければなりません。

これらのツールを用いることで興味深いページの 作成ができますか?

ATAG 1.0に準拠したオーサリングツールを用いることで、 興味深い Webページを作成することが可能です。 Webページが興味深いものであるかどうかは、作成者 のデザインの能力、ページの内容、オーサリングツールで利用可能なマークアッ プ言語 (HTML, SMIL, SVGなど) とプレゼンテーション制御のた めの言語 (CSS1, CSS2など) といった要素に左右されます。利用可能な言語 の種別にかかわらず、 ATAG 1.0ではアクセシビリティの高い Webページ作成のために必要な機能に関する情報を提 供しています。

これらのツールはアクセシビリティの高いページの作 成を完全に自動化するものですか?

ATAG 1.0に準拠したオーサリングツールは、アクセシビ リティを実現するために必要な作業を部分的に自動化することは可能ですが、 完全に自動的にこれらの作業を行うことはできません。たとえば、正しいマー クアップを用いた文書の生成を自動的に行うことは可能ですが、特定の文脈で 用いられている複雑な画像に添付する代替テキストを正確に自動的に生成する ことは不可能です。ただし、同じ画像に対する代替テキストを再利用する形で 自動的に付加するような機能の実現は可能です。

これらのツールを用いて作成されたページは異なるブ ラウザで利用可能なものですか?

W3Cの主要な目的の一つは、 Web の相互運用性を促進することにあります。 ATAG 1.0では、確立された Webの標準 に従ったコンテンツの作成の重要性を協調していますので、このガイドライン に準拠したオーサリングツールによって作成されたコンテンツが既存のブラウ ザやこれから開発されるブラウザで利用可能なコンテンツとなることが期待で きます。

これらのツールは、音声情報に字幕を付加したり、画 像情報に解説を付加する方法についての説明をしてくれますか?

ATAG 1.0に準拠したオーサリングツールには、ヘルプファ イルが含まれています。オーサリングツールで取り扱うことのできるメディア の種類に応じて、このヘルプファイルの中で画像の音声解説や音声への字幕の 付加などといったあまり一般的ではない作業の方法についての解説が提供され ます。また、ヘルプファイルとともに提供されるチュートリアルやサンプルの 中で、このようなアクセシビリティを実現するための情報の付加方法の例が紹 介されます。

これらのツールで Webページ のアクセシビリティの確認を行うことができますか?

ATAG に準拠したオーサリングツールは、生成するペー ジのアクセシビリティを確認するための機能を提供することが必須事項となっ ています。

これらのツールの利用者がプロンプト・警告・確認な どの機能を、必要がないと感じた場合、利用しないように設定できますか?

オーサリングツールの形式によって、設定可能な項目は異なります。 多くのオーサリングツールにおいて、プロンプトや警告の表示、コンテンツの 確認の機能の利用方法を調整したり利用しないようにすることが可能になると 予想されますが、アクセシビリティに関連する機能は常に使用するようになっ ているオーサリングツールも現れると考えられます。

これらのツールを利用した場合でも、アクセシビリティ の高いページの作成に当たって HTMLに関する多くの知識が 必要となりますか?

これは利用しているオーサリングツールの形式によって異なります。 HTMLやその他のマークアップ言語に関する知識を一切必要とし ないオーサリングツールもあるでしょうし、多少の知識を必要としたり、ある いは必要に応じてソースを直接編集することが可能なオーサリングツールもあ るでしょう。ATAGに準拠していないオーサリングツールの場合 は、アクセシビリティの高い Webページの作成のた めの変更を行うために、ユーザがある程度の HTMLに関する知識 を必要とする場合が多いようです。

これらのツールを利用すると、既存のページを変換す る必要が生じますか?

既存のページの作成に用いたオーサリングツールの形式によって異な ります。既に正しいマークアップによって記述されているページに関しては、 たとえば表に概要を説明するテキストを付加するなど、新たに情報を追加する 必要はあるかもしれませんが、アクセシビリティの向上のために変換の作業を 行う必要はありません。以前利用していたオーサリングツールが生成したマー クアップが、アクセシビリティの上で多くの問題を含んでいる場合には、変換 または修復の必要があります。 ATAGに準拠したオーサリングツー ルの中には、自動的に必要な変換を行うものと、不正なコードを含むページを 拒否するものとがあるでしょう。