W3C

W3C-Keio Activities


W3Cとは

 W3Cは、Web技術の標準化と推進を目的とした会員制の国際的な産学官共同コン ソー シアムです。アメリカ合衆国マサチューセッツ工科大学計算機科学人工知能研究所(MIT CSAIL)、欧州19カ国の各代表研究機関で構成されるフランスに本部を置く欧州情報処理数学研究コンソーシアム(ERCIM)、日本の慶應義塾大学、北京航空航天大学 (Beihang University)がホスト機関として共同運営しています。コンソーシアムにより提供されるサービスには、開発者及び利用者の為のWorld Wide Webに関する豊富な情報、新技術を応用した様々なプロトタイプやサンプルアプリケーションの開発などが挙げられます。現在までに400を超える組織がコンソーシアムの会 員として参加しており、日本からはこのうち40以上の組織が参加しています。

W3Cの設立と役割

 1994年10月、Webの発明者であるTim Berners-Leeは、Web発祥の地である欧州共同原子核研究機関(CERN)の協力と、アメリカ合衆国国防総省高等研究計画局(DARPA)、欧州委員会(EC) の援助を得て、MIT CSAILの前進であるマサチューセッツ工科大学計算機科学研究所(MIT/LCS)にW3Cを設立しました。当時、Webアーキテクチャは分裂する危険性を孕んでおり、 競争関係にある関係者同士による議論や研究開発を促し、Webの発展と相互運用制を確保する共通のプロトコルの開発によって、Webの可 能性を最大限に導きだす事が求められました。翌年の1995年3月にはERCIMの設立期間でもあるフランス国立情報処理自動化研究所 (INRIA)が、1996年9月には慶應義塾大学がそれぞれW3Cを運営するホストとして参加しました。  
 2003年1月にはINRIAからERCIMへ、同年7月にはMITにおけるLCSと人工知能研究所の統合に伴い、MIT/LCSから MIT CSAILへとそれぞれ運営ホストが引き継がれています。2004年10月には設立10周年を迎え、同年12月にはアメリカ合衆国ボストンにて設立10周年記念祝賀式典 W3C10が、2005年6月にはフランスSophia-AntipolisにてW3C10 Europeが、2006年11月には東京においてW3C10 Asiaがそれぞれ挙行されました。また2014年にはアメリカ・サンタクララで、2015年にはフランス・パリで、2016年には日本・千葉でW3C20記念式典が各地 で開催されました。
 W3Cは、技術仕様や指針を勧告(Recommendation)として策定、標準化する事を主な活動としています。業界標準として幅 広く普及するXMLやXML Schema、Webページ技術言語HTML / XHTML、CSSスタイルシート、2次元ベクトル画像形式SVG、同期マルチメディア記述言語SMILなど、Webの核となる多くの技術はW3Cによって策定、標準化さ れました。
 W3Cが標準化する技術は産業界でも絶対的な信頼性を持ちますが、2016年には国際テレビ芸術科学アカデミー (NATAS)のテクノロジー&エンジニアリング・エミー賞を受賞しています。
 W3Cとリエゾン関係にある組織は106です。ICANN、GIPO、IGF、I*にも参加しており、グローバルなウェブとインター ネットの標準が、技術と政策で互換性のある技術を形成します。またW3Cは、ISOのAPO/PASサブミッターとしても承認されてお り、世界の組織と信頼関係とともに日々の議論を進めています。

W3Cは、

-One Web-
-Leading the Web to its Full Potential-
~Webは、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク、言語、文化、場所等の違いや、身体的、精神的能力にかかわらず、すべての人 に提供されるべきものである~


という命題を掲げ、ユニバーサルアクセスの実現に努めています。様々な言語でのWebアクセスを実現するWebの国際化(I18N)、 ハードウェアに依存しないWebアクセスを実現するDevice Independence (DI)、音声を含む様々な入出力聞きに対応、更には障害を持つ人を含むすべての人が使いやすいWebを実現するSemantic Webの基盤技術や、SOAPやWSDLといったWeb Servicesの基盤技術、或いは複数のマークアップ言語の混在を可能にするCompound Document Formatsといった先端技術仕様の策定だけでなく、テレビ、車、デジタルサイネージや電子書籍など各産業と連携したWeb技術標準の開発に加え、Web上での個人情報 の取り扱い、更には技術仕様策定に絡む特許問題を取り扱う特許方針(Patent Policy)など、Webを取り巻く多岐にわたる活動に積極的に取り組んでいます。またIoT (Internet of Things)の動向と登用が叫ばれる昨今では、サイロ型に陥るビジネスモデルを横串にし、効率化のみならずコスト削減が図れるWoT (Web of Things)を導入したい組織からの強い要望に応えたグループが設立されるなど、その活動領域はWebとW3C会員だけでなく全世界に広がっています。

W3Cの組織構成

 W3Cは、その運営を担うMIT CSAIL、ERCIM、慶應義塾大学、北京航空航天大学のいずれかのホストに所属するW3Cスタッフと、組織単位での参加となるW3C会員から構成されます。
 W3Cスタッフは、W3Cで行われている技術的な作業を主導、監督する多くの専門家と、運営に携わるロジスティクスやシステムを管理す るスタッフで構成されます。現在世界中で約70名がW3Cスタッフとして勤務しており、多くの技術スタッフが所属しているという点で、 W3Cは標準化団体の中でも稀な存在です。
 W3C会員はW3Cに参加している組織を指し、Webに関する技術開発や普及活動などを行っています。W3C会員には、コンピュータ産 業やインターネット産業、電気通信事業者、電気メーカ、自動車メーカやサプライヤ、セキュリティ業界、放送事業者など、情報産業のみなら ず各産業をリードする主要な企業が多数含まれるだけでなく、世界有数の研究機関や大学、先進各国の政府関係機関、NPOやユーザ団体な ど、多様な組織が世界各国から参加しています。
 W3C会員には次のような特典があります。

・    技術仕様の策定や新たな技術提案が行える作業部会や研究会などへの参加
・    保有する技術仕様を全世界で標準化するための議論の場に参加
・    会員専用のWebページやメーリングリストを通じた仕様案などの最新情報の入手
・    研究員の派遣を含む人的、技術的な交流(W3C訪問研究員プログラム)
・    W3Cの活動に対する戦略的な方向付け
・    W3Cを通じた広報活動や、W3C会員同士の連携を活用した、様々なビジネス上の相乗効果

 さらにW3Cでは、Webに関する技術開発とW3Cへの国際的な参画を促進する為に、多くの国や地域にW3Cオフィスを開設していま す。W3C事務局は、各国各地域における連絡先としての機能を果たすだけでなく、それぞれの国や地域のWebコミュニティと強調し、現地 語によるW3C技術の普及活動を積極的に展開しています。
 W3Cオフィスは欧州を中心に、イギリス&アイルランド、イスラエル、イタリア、インド、オーストラリア、韓国、ギリシャ、スウェーデ ン、スペイン、中国、ドイツ、オーストリア、南部アフリカ、ハンガリー、フィンランド、ブラジル、ベネルクス(ベルギー、オランダ、ルク センブルグ)、モロッコ、セネガル、ロシアの計20の国と地域に開設されています。

W3Cの運営体制

 W3Cでは技術と運営の双方にそれぞれ責任者を置き、均衡のとれた運営体制を確保し ています。
W3Cの技術全体を統括する技術統括責任者(Director)には、Webの発明者であるTim Berners-Leeが就任しています。運営全体は議長(Chair)の役割も担う最高執行責任者(Chief Executive Officer (CEO)によって統括されます。これらの役職はすべてW3Cスタッフが務めます。
 W3Cでは会員も運営に参加します。W3Cの運営顧問の役割を果たすAdvisory Board (AB)と呼ばれる運営理事会と、Web技術全体に関わる技術仕様に関与する技術顧問の役割を果たすTechnical Architecture Group (TAG)と呼ばれる技術諮問委員会がこれにあたります。これらの委員は、原則的にABについては9名、TAGについては8名がそれぞれW3C委員から選出され、ベンダ中 立な参加が求められます。任期はどちらも2年間です。また、各会員組織の代表であるAdvisory Committee Representative (AC Rep)が参加するW3C会員総会(AC Meeting)は年に2回行われ、W3C全体の運営について議論されます。この内の1回は、各会員組織の技術者や専門家らが参加し、W3C技術全般について議論する W3C年次技術者総会(Technical Plenary)とともに開催されます。